経済対策26兆円の新潮流、「建設・IT融合」で“怒涛の株高”5銘柄 <株探トップ特集>
― 国土強靱化と並ぶもう一つの刮目テーマ、建設ICT化で浮上する新主役株を追う ―
日経平均株価は12月15日に期限を迎える米国の対中制裁関税引き上げ「第4弾」の発動を前に上値の重い展開を強いられている。とはいえ、個人投資家の物色意欲は旺盛であり、引き続き中小型株の上値指向が強い。特に、海外動向に左右されにくい内需株に株価を上昇させる銘柄が多くなっている。
●事業規模26兆円で動兆する銘柄相次ぐ
そうしたなか、政府は5日に約3年半ぶりとなる事業規模26兆円の経済対策を閣議決定、このうち財政支出は13兆2000億円で公共投資は6兆円程度。安倍政権は「国土強靱化」政策を推進しているが、甚大な台風被害に直面したことを背景に、その緊急性も高まっている。防災や復旧、電線地中化などを中心に建設セクターはその国策の担い手として株式市場でも熱視線を浴びることになりそうだ。
6日の東京株式市場では、経済対策の決定を号砲に建設関連株への買いが顕著となった。大成建設 <1801> 、鹿島建設 <1812> などの大手ゼネコンのほか、不動テトラ <1813> 、五洋建設 <1893> などの海洋土木、PC橋梁トップのピーエス三菱 <1871> 、重機土工事を手掛ける日本国土開発 <1887> 、道路舗装大手のNIPPO <1881> 、特殊土木の日特建設 <1929> 、ライト工業 <1926> といった銘柄が軒並み株価を上昇させた。市場では「目先的には米中摩擦問題の行方などが不透明で、為替動向なども横目に主力輸出株よりは内需株という選択肢が有効。経済対策の恩恵を直接的に享受する建設株及びその周辺株に目が向くのは自然な流れ」(準大手証券ストラテジスト)という声が聞かれる。
ただ、相場全般を俯瞰すると建設セクターを総花的に買い進むというよりは、ピンポイントで値動きの良いものについて行く動きが活発であることが分かる。物色のキーワードとなっているのは「生産性の向上」、そしてそれを実現する「建設業界へのIT導入(ICT化)」である。
●生産性向上を担う建設ICT化が加速
“国土強靱化”は安倍政権の看板テーマ、いわゆる国策の一つであるが、建設会社にすればこの追い風を素直に喜べない事情がある。建設技能労働者が減少の一途にあり、物理的な労働力不足に悩まされる環境に置かれているからだ。現在、建設技能労働者については、ピーク時の1990年代後半との比較で既に30%強減少している状況にあるほか、高齢化社会の到来を映して今後も年を追って離職者が加速していく見通しにある。加えて、同じく国策に位置づけられる“働き方改革”が長時間労働を規制して、建設業界のマンパワー不足を助長するという皮肉な状況となっている。
これをクリアする手段として、建設会社ではICTを導入する動きが加速している。ドローンを活用した測量や3次元CAD、GIS(地理情報システム)の活用といったテクノロジーを取り入れることで画期的な生産性の向上が可能となる。これに絡むシステム開発会社や建設ソリューションを手掛けるコンサルティング会社などに今、光が当たっている。
今回は、建設とITの融合をテーマにビジネスチャンスを獲得する5銘柄を厳選セレクト。いずれも株価は動兆著しいが、怒涛の快進撃は始まったばかりだ。
●大相場に突き進む垂涎の5銘柄はこれだ
【オオバは株価大台替え有望、GISで需要獲得】
オオバ <9765> は早晩4ケタ大台活躍へ歩を進めることになりそうだ。時価は1997年夏場以来の高値水準にあり、実質的な青空圏といってよく株式需給面から上値が軽い。同社株の最高値は95年2月につけた2780円で上昇余地の大きさが意識される。
同社は建設コンサルタント会社で調査測量業務や区画整理業務を主力に手掛ける。 GISのシステム開発やGISを活用したアプリケーション開発も行い、土木設計や空間情報といった技術と融合して最適なソリューションで顧客を支援する。昨年2月に東電タウンプランニング(東京都港区)と無電柱化推進事業で業務提携をしており、電線地中化関連としても注目度が高い。豊富な受注残を武器に20年5月期営業利益は前期比8.7%増の12億円と増益トレンドを堅持、政府が推進する国土強靱化計画では更なる案件の獲得が期待される。業容拡大に向けたM&Aにも前向きに取り組んでおり、中期成長力の高さも評価される。信用倍率が0.5倍(11月29日現在)と売り長である点もポイント。
【福井コンは高成長路線まい進で最高値街道へ】
福井コンピュータホールディングス <9790> が利益確定売りを吸収し、更なる高みに向かい始めた。17年6月につけた上場来高値4210円奪回が目前で、信用買い残も枯れ切っており、青空圏突入から戻り売り圧力のない真空地帯を走る展開が想定できる。
福井市に本拠を置く建築用ソフト会社だが、測量・土木用CAD などで業界トップシェアを誇る。3D建築CADなどで高水準の需要を取り込んでおり、業績は高成長路線をまい進、連結決算が開始された05年3月期以降の業績推移をみると、リーマンショック直後の09年3月期を例外として除けば、営業減益となったのは前期までの合計15期でわずかに2回にとどまっている。しかも増益率の高さが際立っており、15年間の年平均成長率は33%強と抜群。このずば抜けた成長キャパシティーは伸び率が若干鈍化しても来期以降も継続するとみられる。ドローンで空撮した現場の画像を3次元モデルに変換するソフトが建設業界のニーズを捉え、採用が加速している。20年3月期営業利益は前期比16%増の47億5000万円を見込む。
【CTSの上値大、クラウドとの融合で新境地】
シーティーエス <4345> の上値余地は大きく、800円近辺は依然として仕込み場となっている可能性が高い。
同社は建設ICTの専門会社で現場向け測量計測器とITシステムの販売・レンタルが収益の二本柱となっている。システム事業では建設現場事務所向けモバイル回線などを中心に新規受注の獲得が進むほか、測量計測事業では新商品投入効果で収益上乗せが予想されている。10月末にはファイル管理クラウドサービスを手掛けるファイルフォース(東京都千代田区)に出資、ITインフラとクラウドの連携で新たな需要開拓の布石を打っている。19年4-9月期の業績は売上高が前年同期比4.4%増の44億7800万円、営業利益が同9.4%増の8億1500万円と増収増益を確保した。20年3月期通期営業利益も前期比9.4%増の17億4000万円を見込むが上振れ余地あり。来期(21年3月期)も2ケタ近い増益が確保できそうだ。中期トレンドでみても株価は13週移動平均線をサポートラインとする下値切り上げ波動を継続中で容易に崩れない。
【ビーイングは積算ソフトで成長ステージ本番】
ビーイング <4734> [JQ]の戻り相場が本格化しそうだ。株価は26週移動平均線をサポートラインに4ケタ大台で水準を切り上げる展開が期待できる。
同社は建設業界向けに土木積算ソフトなどを販売。主力商品である「ガイア10」の新版が好調で収益を牽引、ソフト開発会社ラグザイアを傘下に収めたことで業容拡大効果も生まれている。安倍政権が推進する国土強靱化のもと老朽化した橋梁やトンネルなどの整備が今後本格化するとみられ、土木積算ソフトで高実績を持つ同社の活躍余地は大きい。19年3月期営業利益は前の期比2.2倍と高変化を示したが、20年3月期も前期比12%増の7億8000万円と2ケタ成長が見込まれている。しかも上期時点の営業利益は5億1300万円(前年同期比29%増)と対通期進捗率が約66%に達しており増額含みだ。更に豊富な受注を背景に来期も成長トレンドが継続する公算が大きい。株主還元にも前向きで前の期比13円増配となった19年3月期に続き、20年3月期も3円上乗せの26円と連続増配を計画している。
【FCHDが株高加速、ICTとM&Aで飛躍】
FCホールディングス <6542> [JQ]が上昇加速局面に向かいそうだ。9月後半以降上げ足を加速させたが、高収益体質でPERは依然として10倍を割れた水準に過ぎず、1000円ラインを通過点に一段と株高基調を強める公算が大きい。
同社は道路や橋梁、鉄道といった交通系に強みを持つ建設コンサルティング会社で官公需に優位性を持ち、 国土強靱化のキーカンパニーとして頭角を現している。人工知能(AI)やビッグデータ解析などのICT活用による生産性の向上を実現し、建設業界向け3次元設計の導入やi-Construction(アイ・コンストラクション)推進の担い手として存在感を示す。また、異業種連携も含めたM&A戦略でも他社と一線を画す。22年6月期を最終年度とする中期計画を推進中で、最終年度の数値目標は売上高85億円(前期実績73億3500万円)、営業利益9億円(同7億3900万円)を掲げている。同社の上位株主には光通信 <9435> が入っており、これも足もとの株高思惑を後押ししている。
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