明日の株式相場戦略=アベノミクス高値の更新カウントダウン
日経平均株価はバブル崩壊後の高値、いわゆる“アベノミクス高値”である昨年10月2日の2万4270円(終値ベース)を視界に入れながらの強調相場が続いている。きょう(17日)の日経平均株価は113円高と切り返し2万4066円まで買われ、年初来高値を更新。押し目形成イコール買い場という認識が投資家マインドに浸透していると思われる。
しかし、売り方に回っている個人投資家も多いもようで、これはNEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の信用売り残の推移や日証金の逆日歩を見れば明らかだ。更に、きょう話題となっていたのが、日経レバの裏銘柄であるNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>。市場関係者によると「ダブルインバースの口数が3億を超え2014年設定以来最高を記録、日経平均の下落方向に賭ける投資家がいかにたくさん存在するかを物語っている」(国内ネット証券アナリスト)と指摘する。
米中貿易摩擦がメディアを通じて過剰にネガティブに喧伝され、これが空売りを誘導し、結果的に踏み上げ相場が繰り返される。株は需給。うがった見方をすれば、米中対立があったからこそ相場は容易に崩れず、懐疑の森を突き進む格好となっているともいえる。
個別ではマザーズ市場のサンバイオ<4592>の注目度が高い。大日本住友製薬<4506>との契約解消が嫌気され、きょうも大量の売り注文に値がつかず、2日続けて大引けストップ安配分となった。バイオベンチャー株のリスクを改めて浮き彫りにしたが、需給バランスからは、あすザラ場中に寄る可能性がある。観賞用にとどめておく方が無難とは思われるが、虎視眈々とリバウンド狙いの鉄火場マネーが動き出すタイミングが近づいている。
相場は強い株につくというのが基本だが、全体が温まってくるとリターンリバーサルの動きも活発化してくる。そのなか好実態にも関わらず大きく株価をディスカウントさせた日総工産<6569>に照準を合わせてみたい。同社株は今年前半に下値切り上げ型の力強い上昇トレンドを続け7月3日には1672円の高値をつけたが、その後は大幅調整を余儀なくされた。9月に入ると1000円近辺で売り物を枯らし中間反騰に転じたものの、10月下旬に戻り高値をつけ再び下値を探る展開に。しかし、1000円ラインはターニングポイントとして意識され、再び仕込み好機にも見える。製造業向け人材派遣を展開するが、中国人エンジニアを育成し5G需要に対応する構えにあり、今の地合いにマッチしている。
一方、これまで5G関連の切り口で注目されることが少なく、逆に妙味が感じられる銘柄としては東陽テクニカ<8151>。電子計測器の輸入商社で研究開発用を主力とする。5Gの基地局整備が今後本格化するなか、基地局向け情報通信測定器の販売が本格化しており、来期以降の業績に大きく反映されそうだ。
このほか、2018年2月に天井をつけ今年の年央まで下げ続けた冨士ダイス<6167>の動きが変わってきた。超硬工具・金型のトップメーカーで業績は半導体市況の動向と連動する。7月10日の戻り高値721円を上抜き、更に2月20日の年初来高値743円をクリアすれば、中長期トレンドの転換を意味するだけにマークしておく価値がある。
なお、半導体ではロジック微細化の進展に伴い次世代露光技術としてEUV(極端紫外線)が注目されている。EUV向けマスクブランクス世界トップで、直近外資系証券が投資判断を引き上げたHOYA<7741>やマスクブランクス検査装置で世界シェアを独占するレーザーテック<6920>などが代表格だが、これ以外で参考までに銘柄を挙げると、レジスト首位の東京応化工業<4186>や低誘電率の絶縁膜材料を手掛ける化学薬品メーカーのトリケミカル研究所<4369>などが株価を大きく動意させている。
日程面では、あすは日銀の金融政策決定会合が19日までの日程で行われる。このほか、11月の貿易統計が朝方取引開始前に開示され、引け後には11月の訪日外客数が発表される。またIPOが3件あり、マザーズ市場にJTOWER<4485>、ユナイトアンドグロウ<4486>、BuySell Technologies<7685>が新規上場する。海外ではタイ中銀の金融政策会合(政策金利決定)、12月の独Ifo景況感指数の発表も予定されている。(中村潤一)