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すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 合金さんの場合-第1回

特集
2020年1月10日 15時35分


メディア初登場、好きなことに没頭していたら、資産が6倍・約2億円になったワケとは

登場する銘柄

サニックス<4651>、新報国製鉄<5542>、村田製作所<6981>、MARUWA<5344>など

文・イラスト/福島由恵(ライター)、構成/真弓重孝(株探編集部)

>合金さん合金さん(ハンドルネーム・40代・男性)のプロフィール:
投資歴18年で、資金を追加しながら3000万円の元手を約2億円に増やしてきた。本人いわく「好きなことに没頭するうち資産が6倍に増えていた」と、お金を稼ぐことより、むしろ知られざるお宝銘柄を発見することに喜びを感じるという。好みのお宝銘柄は、「一見Aカップのように見えて、実はFカップのような株」。ぱっと見ただけでは通り過ごしてしまいがちだが、じっくり見極めれば大きな魅力を秘めている銘柄を、独特のたとえで表現する。そのために頭だけではなく、足も使って独自の調査も取り組む。

最近は家族との時間を優先するため、勤めていた会社を辞め、不動産投資を含めた専業投資家に転身。不動産投資では保育施設を建設して運用。仕事は辞めても、投資家であるより、社会貢献につながる事業家でありたいという気持ちが、不動産をポートフォリオに加えた理由の1つだ。


実際はFカップなのに、見かけはAカップみたいな株が好き――

今回登場する合金さん(ハンドルネーム)が編集部に渡してくれた資料を読んでいると、こんなキャッチフレーズが飛び込んでくる。メディア初登場のすご腕投資家さんで、事前情報は本人提供資料のみ。その貴重な情報源に、こんな言葉が踊っていた。

「パッと見ただけではスルーしがちだが、丸裸にすると隠れた魅力を秘めている銘柄」ということをたとえているらしい。言いたいことはわかるものの、ドン引きするような表現を使っていることに「果たして、この人は大丈夫!?」という不安を抱えながら、取材に臨んでみる。

「ひょっとしたら、記事にできないかも」と覚悟しながら話を進めていくと、それこそ最初の印象とは、全く異なる実像が見えてくる。投資スタイルは堅実そのもの。じっくりと企業分析を行い、長期を見据えてリターンを追求する姿勢がひしひしと伝わってきた。

そんな合金さんの投資哲学を一言で表せば、我が道を突き詰めること。「人が気付いていない本当の実力を、労を惜しまずに自分が納得できるまで調べ上げ、これぞと思ったら周囲の評価に振り回されずに信念を持って先回り投資する」というものだ。

合金さんの投資家像が見えてくると、冒頭のたとえは、自分の本来の姿を簡単には掴ませないためのギミック(仕掛け)のように思えてきた。第一印象とは正反対の魅力を秘めている合金さんは、一体どのように投資を行っているのか。これから4回にわたって丸裸にしていく。

「一見マイナーなのに、ほんとはすごい実力派」を探す

取材から見えてきた合金さんの性格を、表現するとすれば、

・興味や魅力を感じたら、自分が満足し納得がいくまで没頭して、本質を突き詰める

・他人が良いと思うものに安易に流されない。むしろ他人が回避するものに、知られざる魅力を発掘することに喜びを感じる

――タイプだ。

投資の場では、目に留まった銘柄はそれを取り巻く業界を含めて、ともかくありとあらゆる手段を繰り出して、調べ上げる。IR(投資家向け広報)資料の読み込みやIRへの問い合わせはもちろん、資料を基に原価を試算するなど頭を動かしたり、業界団体の有料メルマガ会員になったり、現場に足を運んで聞き取り調査するなど、「そこまでやるの」というレベルまで調べ尽くす。

そして興味を持つ対象も、後で紹介するが、継続疑義の注記がでたり、利益進捗率が悪かったり、業績を下方修正したりと"危ない銘柄"に、むしろ引かれることが多いという。

「そんなマイナーな銘柄を買っているの?」とあきれられるような、他人が気付いていない実力派銘柄をひっそり探し当て、やがて「実はものすごくいい会社だったんだね」という評価を得ることに喜びを感じている。

もちろん投資である以上、自己満足が高くても、運用成績が伴わなければ、継続することは難しい。肝心の運用成果はどうかというと、投資を始めて20年弱、この期間に追加投資を含めた約3000万円の原資を、約2億円にまで拡大させることに成功している。「好きなことにハマっていたら、満足感もお金も膨らんできた」と、趣味と実益を兼ねる状況を作ってきた。

最近は、家族と過ごす時間をより充実させることを優先して、勤めていた会社を退職。もちろん、投資で資金が増えたことがこの決断を後押しすることにはなったのが、合金さんの目的はお金を増やして贅沢することではない。今後も、実業家に近い専業投資家として、社会に役立つ取り組みをしながら、自由で精神的にも豊かな人生を追求しているところだ。

その一環で、現在力を注ぎつつある不動産投資については、児童の保育施設を運営する建物を保有し、その賃料収入を得ているのだという。

保育施設への投資と聞くと興味をそそられるが、この詳細は別の回に譲ることとし、まずは当コラムのメインである、株式投資の具体的な投資法や個別銘柄の選び方を見ていこう。

調べを進めるうちに好きになり、結果的に集中投資に

本題に入る前に、合金さんの運用資産のポートフォリオを整理すると、その内容はかなりシンプルだ。運用資産額2億円のうち、半分の1億円は日本株。その投資先は現在6銘柄でかなりの集中投資の状態となる。

続いて2000万円分は海外株式を中心とするインデックス投信に振り向け、そして3000万円は国債や現金などリスクが低い資産に振り分ける。そして資産の4分の1相当の5000万円は不動産投資に配分している状況だ。なお、この5000万円は下の円グラフのように不動産の時価から借入額を引いた正味の額になる。

日本株投資のカテゴリーで集中投資になっているのは、銘柄分析を進めるうちにその銘柄に惚れ込んでしまい、結果的に資金を投入してしまっているからだという。

もともと合金さんは「広く浅く」よりも「限られた範囲をより深く」というやり方を好み、気になる企業をより深く調べていく方が性に合っていると考えている。そして、投資をより楽しく行うために、ドキドキ感を得られる状況があった方がいいとも捉えていて、それを得るには集中投資が適しているという思いがあるようだ。

もちろん、集中投資のリスクを知らない訳ではない。過去、リーマンショックの時期に1銘柄に資金を集中させ過ぎて、当時の投資元本を割り込むほどの大損を食らってしまうというイタイ経験もある。その失敗談は後の回で解説するが、そうした怖さも十々踏まえた上で、本当に気に入り深く調べた銘柄を長く持つのが合金さんのやり方なのだ。

■合金さんのポートフォリオ

合金さんのポートフォリオ

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 惚れ込む銘柄、その内容は?

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