明日の株式相場戦略=全体手掛かり材料難でも個別は手掛かりいっぱい
きょう(16日)の東京株式市場は日経平均株価が上下70円幅の値動きにとどまり、方向感のないまま狭いゾーンでのもみ合いに終始した。結局、大引けの日経平均は16円高の2万3933円とかろうじて前日終値を上回る水準で着地したものの、TOPIXはマイナス圏だったほか、値下がり銘柄数が値上がりを750あまり上回る状況で、実質的には軟調地合いだったといえる。売買代金も昨年大納会以来の2兆円台割れ、つまり今年に入ってからは初めて2兆円に届かなかった。ひと言でいえば手掛かり材料難のなか、とりあえず利の乗ったものは売っておこうという投資家心理が投影された相場ともいえる。
米中貿易協議の第1段階の合意文書署名はポジティブ材料とはいえ既定路線であり、今はここを通過して小休止という場面。ここまでの新年相場を振り返ると大発会から激しい乱気流が発生し、投資家心理も大きく揺さぶられる格好となっていたが、ようやく通常モードの相場に回帰したことを暗示する静寂だったと定義できるかもしれない。
米中協議に進展がみられ、両国対立の構図がやや緩むなか、実勢経済への関心も高まるところ。そうしたなか、きょうは米国で12月の小売売上高をはじめ重要経済指標が数多く発表される。またあす17日は、引き続き米国で12月の鉱工業生産や住宅着工などの数字が注目されるほか、中国で10~12月のGDPや12月小売売上高、工業生産高といった経済指標が一斉に開示される見通しにあり、ファンダメンタルズ面からのアプローチが株式市場でも意識されることになりそうだ。
そして、相場の関心は28~29日に行われるFOMCに向かう。基本的に現状維持とみられるが、マーケットの視線はFRBによる国庫短期証券の買い入れが続くのかどうか。実質的な量的緩和策との見方が強いだけに、このFRBのスタンスに変化がなければ流動性相場継続への期待が高まる。
きょうの相場は「小休止」と表現したが、中小型株は依然としてアクティブな値動きで投資家の目を引きつける銘柄が多い。中国・武漢で流行している新型コロナウイルスによる肺炎に関して、国内で初めて患者の発生が確認されたことを材料視する動きが顕在化した。インフルエンザの季節ということもあってダイワボウホールディングス<3107>などマスク関連や第一三共<4568>を始めとする医薬品株が買われたが、穴株として面白いのがマナック<4364>だ。
マナックはエーザイ<4523>の「イータック抗菌化スプレー」の主成分を開発・供給している。また、同社は電気自動車(EV)向け難燃剤開発でも思惑高の素地がある。好業績プラスPBR0.6倍台の割安感も考慮して、きょうは長い上ヒゲをつけたが引き続き注目しておきたい。
DX(デジタルトランスフォーメーション)関連では流通や通信向けで強みを持つシステムインテグレータのキューブシステム<2335>の上昇一服場面は狙い目となりそうだ。日足一目均衡表の雲を抜け、800円近辺は上値への期待が大きい。
水素ステーション関連で頭角を現している長野計器<7715>も要マーク。一時4ケタ大台を回復したが、これでヤレヤレという感じではない。12月18日に瞬間風速でつけた1060円高値を終値でクリアして、更なる高みを目指しにいくイメージがある。
日程面では、あすは11月の第3次産業活動指数、12月の訪日外客数、12月の投信概況など。海外では中国の重要経済指標がまとめて発表され、10~12月のGDP、12月の小売売上高、12月の工業生産高、12月の都市部固定資産投資などに関心が高い。米国では12月の鉱工業生産・設備稼働率、12月の住宅着工件数、1月の消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などが注目される。(中村潤一)