波乱相場が生む好機、安値買いチャンス「ここぞの10銘柄」リスト <株探トップ特集>
―全体波乱相場にツレ安、買い場を提供している中小型の好業績株に反撃高の狼煙―
名実ともに2月相場入りとなった東京株式市場だが、日経平均株価は朝方に400円を超える下げに見舞われるなど、北風に晒される形での厳しいスタートを余儀なくされた。中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎は感染者数の拡大が続いており、世界経済への影響も懸念される状況にある。前週末の米国株市場でNYダウが600ドルを超える下げとなったことで、投資家心理は一段と冷え込む格好となった。
ただし、こういう局面こそ投資のチャンスが眠っている。肺炎の感染拡大は、さすがにここまで広がると中国を中心に世界経済への影響は回避できないが、中国はすかさず流動性の供給に動くなど積極的に対策を打ち出している。今後も第2弾、第3弾の景気対策が打ち出されることは容易に察しがつく。世界的にも今回の肺炎対策として金融政策などで過剰流動性をフォローする政策アナウンスが相次ぐ可能性がある。一方で、新型肺炎は特効薬ができていない状況とはいえ、時間の経過とともに収束に向かう。目の前にあるピンチは長い目で見れば投資のチャンスにほかならない。
ここは全体にツレ安した好実態株をディスカウントされた値段で拾う好機と捉えるべきだ。基本に立ち返り、逆風に負けず業績拡大基調にある有望株に照準を合わせてみたい。
●波乱相場で調整局面にある好実態株に注目
3月決算企業の第3四半期決算発表が本格化しており、前半ピークとなった1月31日までに全体のおよそ3割にあたる711社が発表を終えた。この711社の直近3カ月である10-12月期の経常利益を調べたところ、半数を超える企業が前年同期比マイナスとなった。製造業では中国景気減速の影響が続いたほか、内需系でも消費税増税前の駆け込み需要の反動減などで業績が悪化した銘柄が目立つ。
今回は全体で減益基調が継続する状況下でも、四半期ベースで2ケタ増益を確保した中小型の好業績企業に注目。以下では、本決算月にかかわらず直近3カ月の経常利益が前年同期比で10%以上増益を達成した銘柄の中から、全体波乱相場に連動して株価が調整局面にある好実態株10銘柄を紹介していく。
●JBCCHDはクラウドなど注力分野が好調
JBCCホールディングス <9889> はITインフラ構築の大手企業。戦略的注力分野であるクラウド、セキュリティー、新しい手法によるシステム開発などが伸長している。1月30日に発表した20年3月期第3四半期(4-12月)業績は売上高が509億4700万円(前年同期比19%増)、経常利益は31億9500万円(同50.1%増)といずれも急拡大をみせた。アジャイル開発手法による超高速開発案件や業務改善アプリケーション開発などのクラウド案件の受注が伸びたほか、セキュリティーサービスやWindows10更新関連のシステム販売が好調だった。業績拡大に伴い、通期業績予想を大幅上方修正している。
●システムリサは自動車関連のIT投資拡大が追い風
システムリサーチ <3771> は売上高の4割近くをトヨタグループ向けが占めるシステムインテグレーター。RPAと人工知能(AI)を活用した書類業務効率化ソリューションを提供開始するなど、AIビジネスの強化に傾注している。直近3カ月の10-12月期(第3四半期)は自動車関連を中心とする製造業などのIT投資需要を追い風に、システム構築案件、ソフトウェア開発ともに受注が伸びたほか、経費削減やプロジェクトごとの収益管理も奏功し、9四半期連続となる増収増益を達成した。
●医学生物は中国事業の強化で持続的な成長へ
医学生物学研究所 <4557> [JQ]は合成ゴム大手のJSR <4185> を親会社に持つ医薬品メーカー。医薬品市場で世界2位の中国で診断薬メーカーとしての体制確立に注力している。20年3月期第3四半期(4-12月)は国内向け自己免疫疾患検査試薬やがん関連試薬、中国診断薬メーカー向け原料の販売が伸びたうえ、第2の柱に位置づける遺伝子検査試薬では前期に投入した2製品の販売が大幅に増加し、経常利益は10億9300万円と前年同期の2.9倍に膨らんだ。
●さくらネットは専用サーバーとクラウドが増勢
データセンター大手、さくらインターネット <3778> の20年3月期は経常利益ベースで前期比36.7%増の5億4000万円と5期ぶりの増益で急回復を見込む。足もとの業績は第3四半期(4-12月)時点で売上高が158億8400万円(前年同期比13.9%増)、経常利益は5億1200万円(同67.3%増)と好調に推移。専用サーバーサービスで前期から提供を開始した国立研究機関向け高火力コンピューティングの大口案件が寄与したうえ、VPS(仮想専用サーバー)やクラウドサービスの利用者増加が続いたことも収益拡大につながった。
●AGSはデータ運用サービスとソフト開発案件が増加
AGS <3648> は銀行系業務や地方自治体のシステム構築・運用業務に強みを持つITサービス会社。20年3月期第3四半期(4-12月)は自治体向けデータ運用サービスやソフトウェア開発案件が増加し、経常利益は前年同期比18.7%増の6億6600万円に伸びた。決算と同時に、通期の同利益予想を従来の6億1000万円から7億3000万円に増額すると発表。機器入れ替えに伴うフィールドサービスやパッケージソフト販売を中心に、その他情報サービス部門の採算が上向く見通しだ。
●テラスカイはクラウド絶好調で利益“青天井”続く
テラスカイ <3915> は米セールスフォース・ドットコムが提供するクラウドベースのCRM(顧客関係管理)ソフトで国内トップの導入実績を持つほか、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)システム構築のシェアが拡大している。直近3カ月の9-11月期(第3四半期)は経常利益段階で4四半期連続の最高益更新と業績絶好調が続く。クラウドシステムの導入支援や受託開発を展開するソリューション事業で大型案件が増加したうえ、製品事業では自社製品の販売が伸びた。
●ソーバルは好採算の受託開発業務へのシフト進む
ソーバル <2186> [JQ]は組み込みソフトの受託開発と技術者派遣を展開。足もとでは自動運転やAI、IoT分野の受託開発に注力している。20年2月期第3四半期(3-11月)はマニュアル制作や臨床試験の統計解析分野で顧客開拓が進んだほか、利益率の高い受託開発の請負業務が増加し、経常利益は前年同期比22.3%増の5億4900万円で着地。通期計画(6億4200万円)に対する進捗率は85.5%に達し、3期連続の増益は有力とみられる。来期は11年ぶりとなる最高益(7億2800万円)の更新が視野に入りそうだ。
●シンメンテはテスコ買収後に業績急拡大
シンメンテホールディングス <6086> [東証M]は外食や小売りの店舗メンテナンス大手。すかいらーくを中心に飲食店のメンテナンスを展開するテスコを17年に連結化したことで事業規模が急拡大している。20年2月期第3四半期(3-11月)はサービス対象業界の拡大に取り組むなか、サービス対象店舗数とメンテナンスの対象種類が増加した。また、原価低減も寄与し、経常利益は前年同期比33.7%増の7億6200万億円に膨らんだ。
●パイプドHDは先行投資の収穫期で急回復へ
パイプドHD <3919> はクラウド型のデータ管理プラットフォーム「スパイラル」を主軸に事業を展開する。人材への投資負担増大で前期まで業績の悪化が続いたが、20年2月期は先行投資の収穫期と位置づけ、一気に過去最高益の更新を狙う。直近3カ月の9-11月期(第3四半期)は業務効率化ニーズが高まるなか、スパイラルのアカウント数が増加したうえ、アフィリエイトASP一括管理サービスの好調や広告管理業務の内製化で広告事業の収益も大きく伸び、経常利益は前年同期比3.6倍の3億7200万円と3四半期連続で業績高変化を遂げた。
●アイルは第1四半期急拡大で早くも通期増額修正
アイル <3854> は中小企業向けを中心に基幹業務システムやECサイトの一元管理・販促システムなどを提供するシステム開発会社。20年7月期第1四半期(8-10月)は消費税増税やWindows7サポート終了を前に買い替え需要が旺盛で、販売・在庫・生産管理システム「アラジンオフィス」を中心に受注が急増し、経常利益は8億5100万円と前年同期を5.6倍も上回った。第1四半期の業績拡大を踏まえ、早くも通期計画を大幅に増額修正している。
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