明日の株式相場戦略=新型肺炎の影響続く、物色枠に広がりも
週明け17日の東京株式市場は、新型肺炎の影響に加え、寄り前に内閣府から発表された19年10~12月期のGDP速報値が年率換算で6.3%減と事前コンセンサスを大きく下回ったことで、リスクオフの流れに改めて晒される展開となった。GDPが5四半期ぶりにマイナスに転じること自体は事前に織り込みが進んでいたが、マイナス幅は3%台後半とみられていた。20年1~3月期も新型肺炎の影響でマイナス成長の可能性が濃厚、つまり2四半期連続のマイナス成長で景気後退のレッテルを張られることへの抵抗感も買い手控え要因に挙げられている。ただし、後退局面ということであれば、景気対策を打ち出すことへの大義名分も立つわけで、悲観に凝り固まる必要はないと思われる。
きょうの日経平均株価は寄り後15分あまりで一時350円強の急落に見舞われ、更に下げ幅を広げるようであれば2万3000円大台を巡る攻防も意識される場面となるところだったが、そこは踏みとどまった。今の相場はボラティリティが高いものの、狼狽売りを誘発するような展開となりにくい。リスク回避に傾いても押し目買いや買い戻しのブレーキが利きやすく、きょうもその例に漏れず下げ渋り、結局下げ幅は160円強にとどまった。
ただし、東証1部の値下がり銘柄数を見ると1800を超え、全体の85%近い銘柄が前週末終値を下回った。日経平均は先物絡みのインデックス売買に誘導され指数としてはやや歪んだ状況に置かれており、今の相場の体感温度とは開きがある。TOPIXを比較対象としたNT倍率の拡大傾向も続いており実態面との遊離を物語っている。波乱相場を望むわけではないが、日経平均はいったん大きく下値を試しに行くほうが、後々を考えると健全ということも往々にしてある。目先は下げている銘柄の押し目買いでリバウンドを狙うにせよ、凧糸を出し切らない腹五分目くらいの仕込みにとどめておくところであろう。
個別株も、新型肺炎関連の「ストップ高orストップ安」という丁半博打相場から離れて、好実態株で活路を見いだしたいところだが、なかなか難しい局面にある。過剰流動性を背景に上昇パフォーマンスを際立たせる銘柄は多いが、強力なマネーフローが流れ込む入り江は今のところ新型肺炎絡みの防疫関連と決まっている。ただし、テレワーク関連株のように物色対象が派生して横に広がりをみせているのは光明ともいえ、その延長線上でITソリューションを手掛けるDX銘柄や“巣ごもり消費”でゲーム関連の一角などが、今の相場では相対的優位性を保っている。
1月下旬にも取り上げたが、底練りからの離脱秒読みとみられていたエクストリーム<6033>が、きょうは大きく上放れてきた。大きく上放れたとはいっても、視点を引いて2018年からの週足チャートを見てみればまだ初動であることが分かる。今はやっとエンジンがかかったのを確認したような段階で、まだアクセルが踏まれた感触はない。株券調達に伴う空売り玉が今後の株価にどう影響するのかは、現時点では分からないが、どこかで踏み上げ的な動きが出てくる可能性を内包している。
また、キャッシュレス決済関連ではスマレジ<4431>も地味ながら全体相場とは軌道を異にしたジリ高歩調を続けている。それなりに流動性は高く、株式需給関係も悪くない。気が付けば4000円大台復帰も射程圏に入っている。このほか、内需で新型肺炎のデメリットを受けにくい業態としては不動産セクターがある。そのなかサブリースが好調なストライダーズ<9816>は継続注目。クセのある値動きではあるが、今のところ押し目買いを基本線に結果はついてきている。目先は25日移動平均線を足場に切り返してきたところで、ここからの動きに目を配っておきたい。
日程面では、あすは国内では注目される重要スケジュールは見当たらないが、5年物国債の入札が予定されている。海外では、2月のNY連銀製造業景気指数、2月の全米住宅建設業協会(NAHB)住宅市場指数などが発表される。また、2月の欧州経済研究センター(ZEW)による独景況感指数が開示される見通し。(中村潤一)