植木靖男氏【世界株大波乱、新型肺炎の拡大で今後の展望は】(1) <相場観特集>
―リスクオフ一色、日経平均2万2000円台攻防も視野―
3連休明けとなった25日の東京株式市場では日経平均株価が急落、一時1000円を超える下げをみせ、2万2300円台まで突っ込む波乱展開を余儀なくされた。中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎はアジアだけでなく欧米でも感染が拡大し、これに伴う消費の低迷や製造業のサプライチェーンに支障をきたすことへの懸念が広がっている。前日の欧米株急落を受け、東京市場でもリスク回避の売り圧力が顕在化している。ここからの相場展望について、投資家からも人気の高い市場関係者2人に意見を聞いた。
●「新型肺炎の影響は2万2000円ラインがカギ」
植木靖男氏(株式評論家)
東京市場はここ荒い値動きに振り回されているが、目先は下値リスクが急速に高まった。中国で発生した新型肺炎 の感染拡大が続くなか、これまで相対的に強さを発揮していた欧米株市場も大きく値を崩したことで、一気に世界株安の動きを強めている。
ここからの相場展望を語るうえでポイントとなるのは、今回の波乱的な下げが、米国株市場を中心にここ10年ほど続いてきた長期上昇トレンドの終焉につながるのか、それとも長期上昇トレンドは揺るがず、その途上における単なる買い場提供場面となるのか、どちらを意味しているのかということだ。
新型肺炎が経済に与える影響が大きいことはもはや否定し得ず、企業業績も当初想定していたより落ち込みが厳しくなることも避けられない。しかし、一方で株式市場を取り巻くカネ余り的な環境は今後も続く。強気筋に言わせれば、こんなことで相場は崩れないと主張するだろう。ただ、新型肺炎の経済への影響度合いは現状で把握することは難しく、したがって心配ないと言い切ることもできない。
個人的な考え方としては、「相場は相場に聞け」で、全体指数が高値から10%下押してすぐに戻れないようであれば、大勢トレンドは上昇から下降に変わったと判断する。東京市場の場合、日経平均の直近戻り高値は2万4000円トビ台だが、そこから10%の下落となると2万1600円どころとなる。大幅な調整があっても2万2000円台を大きく下回ることなく体勢を立て直せれば、長期上昇トレンドは維持されるが、仮に更に下値に突っ込むケースでは、残念ながら長期トレンド自体が下向きに変わったと考えるしかない。
ここから、しばらく株式市場は厳しい環境に晒されると思われるが、新型肺炎はいずれ終息の時を迎える。一方、カネ余りの環境は継続することから、必ずしも悲観的に見る必要はない。投資家の心得としては欧米株市場や中国・香港市場の動きを横目に安易な買い下がりはせず、しばらく肺炎関連のニュースを注意深く確認しながら、確信が持てたら買い出動するというスタンスでよいと考えている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(うえき・やすお)
慶応義塾大学経済学部卒。日興証券(現SMBC日興証券)入社。情報部を経て株式本部スポークスマン。独立後、株式評論家としてテレビ、ラジオ、週刊誌更に講演会などで活躍。的確な相場見通しと独自の銘柄観に定評がある。
株探ニュース