ノンストップ大暴落、リーマン超え新型コロナ「負の連鎖」の着地点 <株探トップ特集>
―AIトレードで掻き回される世界株市場、パンデミック連動型アルゴに要注意―
世界の株式市場が大波乱の様相を呈している。新型コロナウイルスによる世界的な感染拡大が加速、そのスピードの速さに金融市場も激しく動揺している。13日の東京株式市場では日経平均株価がフシ目の1万8000円はおろか一気に1万7000円も突き抜け、一時1869円安の1万6690円まで水準を切り下げた。ザラ場中に1万7000円台を下回ったのは16年11月以来約3年4ヵ月ぶり。その後は先物に買い戻しが入り下げ渋ったものの、大引けは1128円安の1万7431円と大幅安で3日続落となった。
●株だけじゃない、債券もREITも叩き売り
新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす負の連鎖恐るべし、といわざるを得ない。感染者数が世界的に増勢をたどるなか、世界景気の失速に対する警戒感が一段と強まり、株式市場では業種・業態を問わず個別株が根こそぎ売り込まれる展開となっている。そしてこれは株に限ったことではなく、債券やREIT、原油や金に至るまで、あらゆるリスクアセットを値段無視で叩き売るというパニック的な状況に陥っている。東証REIT指数は、今週に入ってからいきなり下げが加速し、きょうは一時17%安と思わず目を疑うような暴落をみせた。
また、前日の欧米株市場の下げが強烈だった。まず、時間軸で米国に先行する欧州では独DAXが12.2%安、仏CAC40が12.3%安、伊FTSE・MIBが16.9%安、英FTSE100が10.9%安と記録的な急落。トランプ米大統領が英国を除く欧州からの渡航者について30日間の入国禁止を発表したことで、これが世界経済の失速懸念につながり、人工知能(AI)によるアルゴリズム売買主導で売りの集中砲火を浴びた。これを引き継いで、米国株市場も波乱安に見舞われることになる。前日の米株市場ではNYダウが2300ドル強の過去最大の下げ幅で、下落率もブラックマンデー以来となる約10%に達した。終値の2万1200ドルは約2年9ヵ月ぶりの安値水準で弱気相場入りは疑いようがなくなった。
●世界同時株安の波にのまれる東京市場
この世界同時株安局面に遭遇して、13日の東京株式市場は半ばセリングクライマックス的な売りが噴出した。今月6日から前日(12日)までの5営業日では10日に小休止をいれたほかは垂直降下に等しい下げとなり、日経平均は合計2769円の下げをみせた。この間に逆張りスタンスの個人投資家が買い向かう動きなどが観測されていたが、「きょうの暴落局面で希望的観測が裏切られ、かなり投げを強要された」(国内中堅証券)という状況となった。
しかし、東証1部の騰落レシオは12日時点で49.55%と50%を割り込む異常な値を示しており、この状況について東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「人間の感覚的にはこれ以上売り込むという手段はとりえない。新型コロナによる経済へのダメージは大きいとしてもファンダメンタルズを度外視しており、ひと言でいえばこれはAIトレードの暴走がもたらした下げ」と断じる。今期企業業績の下方修正圧力は回避できないとはいえ、2月中旬以降の日経平均の下げのスピードは2008年のリーマン・ショックを上回る。
●1万6690円で底値は出し切ったか?
暴落前の2月12日に日経平均は終値ベースで2万3861円をつけていた。この当時、市場で意識されていたのは「2万4000円台への復帰」だった。ところが、新型コロナウイルスの感染が世界的に広がりをみせはじめ、ここから市場の期待とは真逆に動き、フリーフォール的な崩落に見舞われることになる。
そうしたなか、「きょう下ヒゲでつけた1万6690円は底値となった可能性がある」と大塚氏はいう。「12日の2万3861円からちょうど30%の下落となった。新型コロナの感染拡大はあっても、これだけ短期間で3割も時価総額が吹っ飛ぶのは理解不能」(同)と指摘する。ここから、世界各国の政府と中央銀行が財政出動と金融緩和のポリシーミックスでこの危機に対応する方向となることが想定されるなか、「ここからは行き過ぎて売り込まれた反動で全体相場は戻りトレンドに転じる」(同)と読む。
●流動性供給もコロナ関連ニュースに振り回される
また、松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏もAIによるアルゴリズム売買の影響が大きいことを認め、「下げ幅はともかくスピードの速さ、値動きの荒さはAIの仕業というよりない。きょうはSQ算出日とはいえ、売買代金が約4兆9000億円に達しミニセリングクライマックス的な動きをみせた。その点で、目先は底入れ反転のタイミングに入ったといえるかもしれない」とする。
しかし、「中期的には1万6690円で1番底を確認したとはいえず、先行きも予断を許さない」(窪田氏)という意見である。「世界中の中央銀行が流動性供給に足並みを揃える気配があるが、今のアルゴリズム売買は新型コロナ関連のニュースに呼応するケースが多い。ワクチンや治療薬の開発などがなされれば大きく状況は変わるが、基本的に当面は新型コロナについてはネガティブなニュースが多くなる。しばらくは短期志向の投資家も手を出すにはリスクの大きい地合いが続くだろう」(同)としている。
株探ニュース