窪田朋一郎氏【下げ一服の東京市場、反転相場入りの可能性は】(2) <相場観特集>
―新型コロナで恐怖感の拭えない相場、夜明けはくるか―
週明け23日の東京株式市場では、日経平均株価が3日ぶりに大きく反発に転じた。ここまで新型コロナウイルス の影響で世界経済が失速することへの警戒感が強烈な下げ相場を先導してきた。東京五輪延期の可能性が高まったことも日本株市場にとってはネガティブ材料として意識されるが、目先的には下げのスピードが速く、過剰に売り込まれた反動も見込まれる場面だ。果たして、ここから東京市場はどういう軌跡を描くのか。先読みに定評のある市場関係者2人に相場展望を聞いた。
●「流動性への懸念で先行き不透明」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
東京株式市場は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大が続くなか先行き不透明感はなかなか払拭されず、今後も下値リスクを警戒する局面が続きそうだ。
週明けの株式市場は日経平均が大きく反発に転じているが、これは購入枠を年間12兆円まで大幅に拡大させた日銀のETF買いやGPIFなど公的マネーの買い支えに対する思惑が、売り方の仕掛けを封じている意味がある。今や、日本株市場は中国・上海株市場に勝るとも劣らぬ“官製相場”の様相を強めている。
ただし、企業の業績面を考慮すると実需の売り圧力には抗えず、全体株価は依然として下値リスクを内包している。新型コロナウイルスについては発生元の中国を除き、収束に向かう気配が見えない。インドやタイなどでも感染が広がっており、このウイルスとの闘いは長丁場になる可能性が高く、世界経済に与えるダメージも当初想定より大きなものとなる可能性が高まっている。また直近では東京五輪延期のシナリオも現実味を帯びてきた。これについては事前に織り込みが進んでいたとはいえ、悪材料出尽くし的な流れを形成するには至らないだろう。
財政出動による景気対策期待などから、目先急速に売り込まれた反動でリバウンドに転じても不思議はなく、短期的には日経平均にして1万8500円前後までの戻りを試す可能性はある。しかし、その場合も改めて売り圧力に押し戻される局面が想定される。コロナウイルスの実勢経済への影響が明らかになる過程で1万5000円台を割り込むような一段の大幅調整もあり得ると思われる。
また、今回の世界的なリスクオフ相場では、株価水準の問題もさることながら流動性リスクが重くのしかかっている。REIT指数の急落でも明らかとなったが、大口の売り手が存在すると、買い手の少なさから下げ幅が一気に広がるケースも出てくる。これが今後の金融市場の波乱を演出する可能性があり警戒が怠れない。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース