明日の株式相場戦略=急騰後の宴、中小型株の個別戦略を考える
きょう(24日)の東京株式市場は日経平均 が1200円を超える上昇をみせ、1万7000円を通過点に終値で一気に1万8000円台を回復した。これは空売り筋の買い戻しが加速したことによる踏み上げ相場の色が強かった。前日(23日)の前引け時点でTOPIXは確かに前日比1%のマイナス圏に位置していたとはいえ、実際に日銀がETF砲を轟かせ、前週19日に続く2営業日連続の2004億円買い入れを行ったことは売り方にとって脅威となった。加えて、きょうは東京五輪の開催が1年延期の方向でほぼ固まったとの見方が、アク抜け感をもたらし急騰劇につながった。
米国株市場でNYダウが下げ止まらないなか、我が道を行く日経平均の急速な切り返しには正直驚かされたが、ヘッジファンドのロング・ショート戦略の巻き戻しによる株高で、ボラティリティが高いだけで経済実勢を反映した中期トレンドの形勢には至っていない。特にきょうの上げは3月期末特有の需給環境が複合的にかみ合わさって演出された意味合いが強い。日銀が不退転の構えでETFの買い入れを継続する一方、この時期は3月末の配当に絡み、機関投資家による先物への配当再投資の買いが株高を助長するメカニズムが働く。加えて「空売り筋は期末を迎え調達した株券の返却を急ぐ必要に迫られるとの思惑も、買い方を精神的優位に立たせている」(準大手証券ストラテジスト)という指摘がある。
日経平均は2月下旬以降の強烈な下げ相場で上値抵抗ラインとなっていた5日移動平均線を上に抜け、同時に同移動平均線も上向きに変わった。テクニカル的には目先追撃で報われるというタイミングだ。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が経済の歯車を止めている現状にあって、安易な強気転換は依然としてリスクが伴う。ドル建て債務が膨張している新興国ではドル資金調達に難儀しているとの観測があり、グローバルにリスクオフ環境が解消されない段階では、今はまだ見えていない危機に足を取られる可能性がある。きょうはインドネシアやベトナムなど東南アジア株市場は、急騰する日本株を横目にしながらもマイナス圏を抜けきれない状況にあった。
したがって、個別株戦略も半身の構えで対処する。本気で買いに行かず、相場と戯れる感覚でよいと思われる。日経平均同様テクニカル的には垂涎の買い場に見える銘柄が多いが、外部環境を考慮したうえで、中長期で腰を据えて買う場面はもう少し先と見ておきたい。
目先マークされる銘柄としては、新型コロナの負の連鎖から外れているセクターが分かりやすい。巣ごもり消費関連の一角を担うゲームや電子書籍周辺の銘柄は有力で、例えばアエリア<3758>の500円台は見直し余地がある。また、ストレージ開発を手掛けるニューテック<6734>は人工知能(AI)やディープラーニング関連としての切り口で手掛かりが豊富だ。半導体関連株もきょうは東京エレクトロン<8035>が雄叫びを上げたことで、新たな流れが生じやすい。同社株については前述したファンドのロング・ショート戦略解消の特殊事情が反映されたとはいえ、3000円を超える急騰をみせ、たった1日で時価総額を5000億円弱も膨らませており、このインパクトは大きなものがある。半導体関連の小型株では超純水装置で高水準の受注残を確保している野村マイクロ・サイエンス<6254>。きょうストップ高を演じたマルマエ<6264>も半導体関連で、押し目があれば狙ってみたい。
一方、全固体電池関連として昨年秋口の大相場の記憶が新しい三櫻工業<6584>は、ここ最近の波乱相場で買い残の整理がかなり進捗しており注目しておく価値がありそうだ。また、やや時価総額は大きいが三井金属<5706>も2000円ライン(株式併合前株価では200円ライン)を割り込んだところはここ20年来のボックス下限で、大底買いのチャンスとなっている可能性がある。
日程面では、あすは朝方取引開始前に16日開催の日銀金融政策決定会合の「主な意見」が開示される。また、2月の外食売上高も発表される。このほか、東証マザーズにヴィス<5071>が新規上場する。海外では2月の米耐久財受注額、1月の米FHFA住宅価格指数が注目される。米5年物国債の入札も予定。欧州では3月の独Ifo企業景況感指数なども発表される。
(中村潤一)