明日の株式相場戦略=AI暴走、超短期かタイムカプセル投資か
きょう(25日)の東京株式市場は日経平均 が1400円を超える上昇で一気に1万9000円台半ばまで駆け上がった。前日に1万6000円後半から大跳躍、1万7000円台上空を通過して1万8000円台で着地したことにも驚かされるが、その勢いを保ったままノンストップでまたもや大台を替えることに、今の相場の「狂気」がある。米国の大規模な経済対策の最終合意が買いの根拠とされるが、これは既に投資家の眼前に置いてあった材料だ。下げの反動とはいえ、人間の感性ではついて行くことができないAI暴走相場といっても過言ではない。
暴落過程における小休止的な反発をデッド・キャット・バウンスと呼ぶが、今回の切り返しはこの呼称とはイメージのかけ離れた強烈無比なリバウンドであることは確かだ。AIによる高速アルゴリズム売買によって蹂躙され、バイ&ホールドを前提とする中長期資金は動けない相場である。個別株も相次ぐ信用規制の動きなども絡め乱高下、きょうは東証全体で110銘柄あまりがストップ高と狂い咲きの様相を呈した。
しかし、いかに変動幅が大きくてもこれは波の上下動であって、潮の流れが変わったわけではないということは認識しておく必要がある。新型コロナウイルス感染防止の観点から外出禁止や海外への渡航禁止など移動制限を強力に推し進めることは正論には違いないが、これが経済の体温を根こそぎ奪ってしまうことにつながってしまう。このジレンマをどう克服するか、現在はまだその答えが見つからない。経済対策期待との綱引きといえば聞こえはいいものの、そのシーンを語れる位置まで時間軸は進んでいない。
市場の声としては「新型コロナによって経済や企業業績へのダメージがどの程度か見えてくれば、それと打ち出される経済対策を秤にかけて、今後の相場シナリオを描くということも可能。しかし今はそれ以前の段階」(国内ネット証券ストラテジスト)という指摘が正鵠を射ている。「相場は相場に聞け」という格言はあるが、直近の動きで何らかの経済的解釈がみつかるならそれは神の領域だ。
極端にいえば、株を買ってオーバーナイトすることに価値が見いだせない局面であり、ファンダメンタルズからのアプローチを封印した超短期トレードを前提として銘柄を考えていく。もしくは、今の金融緩和環境と財政出動による景気浮揚効果がいずれ発現するという漠とした相場観でよければ、日経平均と連動性の高い主力株を買って値動きを追わないで寝かせておくタイムカプセル投資。仮にここから日経平均が1万6000円近辺までもう一度下押すような波乱に遭遇しても、例えば1年後に2万円を大きく回復していれば勝利ということになる。しかし、最良の策は待つことだ。人間の英知は130億年以上前に発した宇宙空間の光を捉えることはできるが、一歩先の未来すら知ることはできない。おそらく、ここは「静観」が最も期待値の高い選択肢ということになる。
と言いながら銘柄を列挙するのも矛盾しているが、常にマークしておく株というものはあった方がよい。企業のIT投資を促すDX関連では日本ユニシス<8056>の中期スタンスの買いに妙味がありそうだ。また、同じく中期スタンスで、あえて配当落ち後に狙いたいのが配合飼料大手のフィード・ワン<2060>。株価150円台でPER及びPBRが割安ということで買いやすさがあるが、話題のGPIFと農林中金をキーワードに、全農に次ぐ飼料業界大手の同社に光が当たる可能性がある。
短期ではAI関連で再び頭角を現しつつあるニューテック<6734>や全固体電池で材料を内包する三櫻工業<6584>は引き続きマーク。巣ごもり関連では今回の暴落相場でチャートが崩れなかった米アマゾン関連のファイズホールディングス<9325>や電子書籍を手掛けるイーブックイニシアティブジャパン<3658>、信用買い残整理の進んでいるアエリア<3758>なども継続して目を配っておきたい。
日程面では、あすは2月の企業向けサービス価格指数が日銀から朝方取引開始前に開示される。IPOが2件ありサイバーセキュリティクラウド<4493>、アディッシュ<7093>がマザーズ市場に新規上場する。また、海外では19年10~12月期米GDP確報値。米7年物国債の入札も予定される。このほか英中銀やメキシコ中銀の金融政策発表など。
(中村潤一)
最終更新日:2020年03月26日 07時38分