コロナ後の最有望国【フィスコ・コラム】

市況
2020年5月10日 9時00分

人口1億人近いベトナムで、新型コロナウイルスの死者はいまだゼロ。経済活動も正常化に向けて動き始め、東南アジア諸国連合(ASEAN)の原動力となりつつあります。コロナ後の世界では最も早い回復が期待できそうです。(感染者、死者は5月8日午前時点)

コロナの感染拡大は一時期よりもペースが緩やかになったとはいえ、まだ増加中です。死者数は世界全体で25万人を超え、世界トップのアメリカでは今後10万人に膨れ上がると予想されています。それだけに、死者数でみた被害を完全に抑止しているベトナムはひときわ目を引きます。今月に入ってハノイ-ホーチミン間の旅客輸送が再開されるなど、経済活動も徐々に正常化しつつあります。

ベトナムでは1月23日に最初に感染者が確認されて以来、約2カ月で270人台に増加してしました。フック首相は4月1日から22日まで一定規模以上の飲食店の閉鎖など、比較的厳しい抑止措置に踏み切ります。その効果が出始め、4月以降は新規感染者が1ケタ台に減少。その後はゼロとなり、23日に抑止措置は原則解除されました。現在の感染者は288人、そのうち233人が回復しています。

251人目の感染者となった60歳代の男性が4回のウイルス検査で「陰性」となり退院した後、5月1日に持病の肝硬変で死亡しました。ただ、その後の検体による検査でもやはり「陰性」で、死者ゼロはなお更新中です。検査の状況に違いがあるため単純比較はできないかもしれませんが、人口1億人前後のメキシコ(死者2961人)、日本(577人)、フィリピン(685人)、エジプト(482人)に対しベトナムのゼロは驚異的です。

感染抑止に成功しつつある理由として、政府が初期段階で拡大防止に手を打ったことが挙げられます。特に、ティエン前保健相の尽力が注目されています。同氏は医学博士を取得後、パルツール研究所免疫室での研究員を経て同研究所の所長に就任した経歴を持っています。2016年のフック政権発足で唯一の女性閣僚として保健相に就任。在任中、パンデミック防止に向けた公衆衛生戦略を構築しました。

今回は、重症急性呼吸器症候群(SARS)などからの教訓とした戦略が生かされた格好です。ティエン氏の60歳定年で保健相ポストは現在空席になっていますが、ダム副首相が後を引き継ぎ陣頭指揮にあたっています。ウイルスがまん延する前に封じ込めた台湾でも、防疫学者の副総統がリーダーシップを発揮。専門家が入閣し政府として早い段階から感染症対策に備えていた点で、両国は共通しています。

ベトナムの2020年1-3月期国内総生産(GDP)は、過去10年間で最も低い前年比+3.8%にとどまりました。前期の+6.8%からも急激に減速しています。ただ、各国がロックダウンなどの措置に乗り出した1カ月前にフランスの調査会社が実施した調査によると、ベトナムは自国経済が「早期に回復する」と答えた人が15カ国中トップの80%にのぼりました。すぐれた防疫対策に加え、前向きなマインドが道を開きそうです。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

(吉池 威)

《YN》

提供:フィスコ

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