鈴木英之氏【「緊急事態宣言」全面解除へ、東京市場の新展開はあるか】 <相場観特集>
―経済活動再開の本格化に期待、米中対立への警戒感は残る―
政府は東京など5都道県で続く、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を全面解除する方向となった。これに伴い、首都圏での経済活動再開に向けての動きは本格化する。このなか、25日の日経平均株価は353円高と大幅高となった。今後の東京株式市場はどう動いていくのか。SBI証券投資調査部長の鈴木英之氏に聞いた。
●「投資環境の改善続けば日経平均2万1500円視野も」
鈴木英之氏(SBI証券 投資調査部長)
この日の日経平均の上昇は、緊急事態宣言の解除に向けた動きを評価した面はあるだろう。
足もとでは「香港国家安全法」導入の動きにみられる米国と中国の対立や、弱い経済指標の発表など警戒材料は多い。そのなか、株価は上昇している。これは3月の株価急落で最悪期を織り込んだことが大きいだろう。また、日米欧が未曾有(みぞう)の金融緩和を実施しモメンタム(勢い)投資が続いていることも見逃せない。
日経平均は、第1の節ともいえるPBR1倍を達成してきている。次の第2の節は心理的抵抗線となる2万1000円と1月高値から3月安値までの下げ幅の黄金分割比(61.8%)での戻りとなる2万1200円近辺となる。
今後、株式市場が上昇基調を継続できるか、どうかは新型コロナウイルスの感染拡大が第1波でおおむね収束に向かうか、6月の成長戦略発表などを経てL字型以上の景気回復が見込めるか、などに左右されるだろう。
逆に新型コロナによる第2波がきついものになったり、景気回復には予想以上に長い時間がかかるとの見方が増えたりした場合、株価は上値を抑えられる可能性がある。今後1ヵ月程度の日経平均のレンジは2万~2万1500円前後を見込んでいる。
こうしたなか、当面は個別株物色が中心となりそうだ。新型コロナの感染拡大以前なら銘柄物色のポイントは高ROEや高資本効率だったが、足もとのような状況下では、キャッシュリッチで低PBRな銘柄などが見直されるだろう。
東京本社のキー局のような大手テレビ局や5Gの流れに乗るような電気工事会社、あるいは資源エネルギー会社の一角などには投資妙味がありそうだ。また、巣ごもりや5G、半導体といった実際の業績拡大に結び付くようなテーマの関連銘柄には注目したい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資調査部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て2009年5月より現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース