明日の株式相場戦略=チャンスの女神の後ろ髪
きょう(30日)の東京株式市場は、前日の米株高を受けて日経平均 も切り返しに転じた。前日の下げを帳消しにするところまではいかなかったが、瞬間風速で450円強の上昇をみせ、前日に下回った25日移動平均線とのマイナスカイ離を一時は解消した。引け際に上げ幅を縮小し、この日の安値圏で着地したことで引け味は悪いものの、全体トレンドとしては“押さば買い”の依然として2万2000円台前半のボックス圏攻防が継続していることを示唆する動きとなった。日経平均の日々の値動きは、日中の米株価指数先物の動向も含め基本的には米国株に追随した動きではあるが、NYダウ と日経平均の純粋な比較では後者の方が底堅さを発揮していることも事実だ。
前日の米国株市場ではNYダウが600ドル近い上昇をみせた。新型コロナウイルス の感染拡大の影響に目をつむってはいられない状況になってきているが、それでも容易に崩れないパターンが繰り返されている。前日は5月の仮契約住宅販売指数が事前の市場予測を大幅に上回ったことがポジティブサプライズとなったとされるが、これによって投資家心理が一気に強気に傾くものかどうかは疑問符が付く。やはりニュースヘッドラインに反応するAI取引のなせる業で、たとえ値幅は大きくてもこの手のニュースは1日経てば忘れられてしまう“ノイズ”の域を出ていない。経済指標の結果に一喜一憂しているようで、本質的には潤沢な資金がセーフティーネットとして下値を支える金融相場の色彩が強い。
一方、東京市場は米国株が崩れなければ崩れる道理がない。日本においても新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念は拭えないものの、米国と比べれば感染者数の広がりは文字通りケタ違いに少ない。これがグローバルマネーの日本株シフトを促すというほど短絡的なものではないにせよ、日本株にとってアドバンテージであることに違いはない。
しかし、全体指数は強さをみせているが、投資マインドには変化が出ていることがうかがわれる。前日の当欄で個別株については押し目買いを強調したが、それは高値に飛びついてしまうと、なかなかうまくいかない地合いに変わっているためだ。軒並み上昇しているようでも寄り付き早々に上ヒゲを形成してそのままという銘柄が少なくない。買い意欲の強い相場ではあるが、それと表裏一体で早めに資金回収したいという思惑も潜在している。ここ相次ぐIPO銘柄のセカンダリーの値動きなどはその縮図ともいえる。日経平均は大きく切り返したとはいえ、マザーズ指数は変調で4日続落となっている点にも注意しておくところで、25日移動平均線の水準は下ヒゲで踏みとどまったが怖い位置にいる。
直近の個別株戦略はあくまで下押したところに照準を合わせる必要がある。買えなければそれでよしという考え方。仮に意中の銘柄が上昇してしまってもそれは機会損失であって実損ではない。“チャンスの女神に後ろ髪はいくらでもある”のが株式市場であり、機会損失に焦る必要は全くない。
押し目買いの対象としては、例えばさくらインターネット<3778>。デジタルトランスフォーメーション(DX)関連株が人気だが、その流れの一環として日米ともにテレワーク導入の動きが活発だ。これを背景にデータセンター増設需要は旺盛であり、米国では関連株の上昇パフォーマンスが際立っている。同社株にも連想が働きやすい。また、NTTデータ<9613>傘下でWebシステム構築を手掛けるエヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート<3850>も下値を探るチャートだが、75日移動平均線との上方カイ離縮小で買い場が近づいているようにも見える。
このほか、株価100円台やそれ以下の超低位に位置する銘柄に動意づくものも増えている。マネーゲーム的な要素も強く、既に激しく動意している銘柄についてはその日の状況に応じて各自が判断するよりない。順番待ちの候補としては、SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ<9478>やピーエイ<4766>などに着目してみたい。
日程面では、あすは6月の日銀短観が朝方取引開始前に開示される。後場取引時間中には6月の消費動向調査、6月の新車販が発表される。海外では6月の財新中国製造業PMI、6月の独失業率。また、米国で重要指標発表が相次ぎ、6月のADP全米雇用リポート、6月のISM製造業景況感指数、5月の米建設支出などが予定される。また、FOMC議事要旨(6月9~10日開催分)も開示される。(中村潤一)