値固め続くプラチナ、経済活動再開もコロナ拡大で先行き懸念 <コモディティ特集>

特集
2020年7月15日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は、金堅調やドル安を受けて5月21日以来の高値858.48ドルをつけた。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で景気の先行き懸念が強いなか、高値での買いが見送られて上げ一服となり、787.50~862.98ドルのレンジ相場を継続した。

経済活動再開で米中の自動車販売の回復期待などが支援要因だが、米国中心に新型コロナの感染拡大が続き、景気回復の動きは平坦化するとみられている。ワクチンが開発されるまではロックダウン(都市封鎖)の再導入の可能性もあり、高値を買い進む向きは少ないとみられる。ワクチンが開発されるのは早くても年末との見方があり、収束の兆しが見られるまでプラチナは値固めの動きが続く可能性がある。

中国では経済指標の改善が示されるなか、北京市での新型コロナの新規感染者がゼロになると、景気回復期待から株高に振れた。上海総合指数は2018年2月以来の高値をつけた。6月の中国の財新サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は新型コロナによる制限措置の緩和を受け、58.4と前月の55.0から上昇し、2010年4月以来の高水準となった。財新総合PMIも55.7と前月の54.5から上昇した。

また、6月の中国貿易統計で輸出入が予想外に増加した。政府の景気支援策を受けて商品需要が急増したことや、海外のロックダウン緩和が背景にある。ドル建てで輸入は前年比2.7%増(事前予想10%減)、輸出は同0.5%増加(同1.5%減)となった。

16日には第2四半期(4-6月)の中国の国内総生産(GDP)の発表がある。事前予想は前年同期比2.5%増となっており、これを超えて好調な内容になれば、中国経済のV字回復に対する期待感がプラチナの下支えになるとみられる。ただ、世界の新型コロナウイルスの感染者は1300万人を突破しており、先行き懸念も残っている。

●プラチナは米中の自動車販売の回復見通しなどが下支え

中国汽車工業協会(CAAM)によると、6月の自動車販売台数は前年比11.6%増の230万台となり、3ヵ月連続で増加した。ただ、CAAMは今年の販売台数が前年(約2500万台)から10~20%減少すると予想している。一方、米自動車販売の4-6月期は前年同期比で急減したが、5月以降は減少幅が縮小し、底堅さが示された。

4-6月期、ゼネラル・モーターズ(GM)の販売は前年同期比34%減少した。ただし月ごとに見ると、4月に35%減少したのち、5月と6月は約20%減少にとどまっている。操業再開後、メーカーは減少した在庫を回復させるため生産を加速させた。中国の販売回復や米国の生産加速はプラチナの下支え要因である。

欧州自動車工業協会(ACEA)によると、欧州連合(EU)の新車(乗用車)登録台数は大幅な減少が続いている。5月は前年同月比52.3%減の58万1161台、1~5月は前年同期比41.5%減の333万1715台となった。6月分は7月16日に発表される。また、同日には欧州中央銀行(ECB)理事会がある。景気見通しと金融政策の行方も確認したい。

南アフリカのラマポーザ大統領は、新型コロナの感染者急増を受けて13日から夜間外出禁止令を発表した。同国の感染者は12日に27万人を超え、医療設備が不足している。この影響で同国の鉱山生産が減少しており、需給がタイトな状況に変わりがないことはプラチナの下支え要因である。

●プラチナETF残高はまちまちの動き

プラチナETF(上場投信)残高は14日の米国で29.05トン(1ヵ月前26.43トン)に増加、13日の南アで19.25トン(同21.43トン)、8日の英国で16.50トン(同16.73トン)に減少した。強弱材料が交錯するなか、銘柄ごとにまちまちの動きとなった。投資資金の動向に方向性がないこともレンジ相場が続く要因になっている。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは1万7315枚となった。新型コロナ感染拡大に対する懸念が高まるなか、6月30日に1万5848枚まで縮小し4月21日以来の低水準となったが、金堅調などを受けて新規買い・買い戻しが入った。

ただ、ニューヨーク先物市場の指定倉庫在庫がここ1月で急増し、上値を抑える要因になった。13日の指定倉庫在庫は33万0167オンスと1ヵ月前の15万9320オンスから倍増。5月下旬に一段高となったことでニューヨークのプラチナ先物にプレミアムが付き、実需筋の売りが出やすくなっている。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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