明日の株式相場戦略=全方位型の個別株戦略で臨む

市況
2020年7月15日 17時28分

きょう(15日)の東京株式市場は日経平均 が鮮烈な切り返しをみせた。上にも下にもボラティリティが高い割に方向性が定まらなかったが、ここにきて上げ潮ムードが強まりつつある。2万2000~2万3000円のボックス相場と考えればほぼ上限に到達していることになるが、週足では13週・26週移動平均線のゴールデンクロスを示現しており、約1カ月ぶりの高値圏にもかかわらず、東証1部の騰落レシオは78%と80%ラインを切っている。日経平均ベースでは前日時点で64%とむしろ陰の極を指し示していた。

過熱感が感じられない。これは売り方にとっては焦りを覚える相場環境といえる。人間の欲望は時にユーフォリア(陶酔状態)を生み出し、上昇相場においてはそれが崩壊の端緒ともなるが、これまでの経緯を見る限りユーフォリアとは無縁、相場は懐疑の深い森の中で育ち続けている。きょうの日銀の金融政策決定会合も市場関係者の間でほとんど話題にならないくらいの注目度の低さであった。相場は「現状維持」で100%織り込んでおり、それ以上に対する期待はもちろん、それ以下に対する不安すら微塵も漂ってはいない。しかし、よく考えれば、現状維持というのは大規模な金融緩和政策を恒常的に続けるということであって、これは実際のところ株式市場には強力な援軍が後ろに控えているようなものだ。あすに予定されるECB理事会についても同じことがいえる。

ただし、株式市場は経済を映し出す鏡であることも忘れてはいけない。新型コロナワクチン開発への「期待」で現在の景気や企業収益の悪さを帳消しにはできない。過剰流動性にすべてを委ねるのは危険で、投資家としては常に後ろを振り返りながら慎重に歩を進めるという姿勢を心掛ける必要がある。

個別株戦略については物色の裾野が広がっており、全方位的な視点で機を捉えたい。例えば大衆医薬品卸の大木ヘルスケアホールディングス<3417>がジリジリと水準を切り上げている。新型コロナウイルス収束の糸口が見えないなか、今年1月及び春先に人気化したマスク・除菌剤関連の一角。これらの関連銘柄はシコリ玉の関係で総じて上値が重いものの、同社株については波動が違う。業績好調で割安。動物用医薬やペット保険なども提携戦略を駆使して積極展開しており、現在の収益環境は追い風が強い。また、巣ごもり消費関連ではエニグモ<3665>が再動意含みで注目しておく価値がありそう。ロコンド<3558>の強烈人気が飛び火する可能性も考えておきたい。

デジタルトランスフォーメーション(DX)がフォローの風となっているクラウド周辺株ではエムケイシステム<3910>に底値圏離脱の機が熟してきているように見える。社会保険労務士向けシステムを手掛け、義務化の動きを背景とする電子申請手続き支援で活躍余地が大きい。また、同じくクラウド関連でうねりのある波動を形成しているのが不動産会社向けシステムを提供するいい生活<3796>。ここから25日移動平均線を踏み台に跳躍があってもおかしくない。ここ不動産株全般がリターンリバーサルの流れにあることも同社株の上値余地を示唆している。

しばらく休火山状態だった人工知能(AI)関連ではメンバーズ<2130>がそろそろ売り物が枯れてくるタイミングで、中期スタンスの投資対象として考えてみたい。

中低位材料株の一角、指月電機製作所<6994>が動兆しきり。6月下旬に急動意し620円の戻り高値をつけたが、足もとの上昇第2波でここを上回ってくるようだと、人気が加速するケースも。ポイントとなるのは出来高だ。三菱系フィルムコンデンサーのトップメーカーで大株主の村田製作所<6981>とは車載用高耐熱フィルムコンデンサーの開発で協業体制にある。時流である電気自動車(EV)関連の一角として頭角を現す可能性がある。

日程面では、あすは国内では重要スケジュールは見当たらないが、海外では中国と米国で重要経済指標の発表が集中する。4~6月期中国GDP、6月の中国工業生産・小売売上高・都市部固定資産投資・不動産開発投資。7月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数、7月の全米住宅建設業協会(NAHB)住宅市場指数、6月の米小売売上高、5月の米企業在庫、5月の対米証券投資など。また、ECB定例理事会の金融政策発表とラガルドECB総裁の記者会見が予定されている。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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