【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─テスラ決算が資金シフトの試金石に、成長期待ある中小型株に注目
「テスラ決算が資金シフトの試金石に、成長期待ある中小型株に注目」
●グロース優位が続くか、バリュー株の巻き直しか
今週の日経平均株価は前週比405円高と上昇。ギリアド・サイエンシズやモデルナによる新型コロナウイルス治療薬・ワクチンに関する良好なデータが伝わり、経済活動の正常化に向けた期待が高まったことで、節目の2万3000円に迫る場面がみられた。しかし、足元で強い上昇が続いていた中国・上海市場が上げ一服となったほか、新型コロナの影響を大きく受けて出遅れていたセクターに資金が向かう一方で、成長期待の大きい半導体などハイテク株への利益確定の流れが強まった。グロース株からバリュー株への資金シフトといった形だが、これが長期化するとみる市場参加者は限られており、目先的には物色対象の変化を見極めることになりそうだ。
米国では来週から四半期決算の発表が本格化する。連休を控えて商いが膨らみづらい中では、東京市場も企業決算に対する米国市場の反応の影響を受けやすいだろう。週末にはネットフリックスが7-9月(第3四半期)の新規会員数が250万人になるとの見通しを示し、500万人余りとの市場予想に届かなったことが失望されて時間外で急落している。来週はアマゾン・ドット・コムのほか、インテル、Tモバイル、ツイッター、バイオジェン、マイクロソフト、テスラなどの決算発表が予定されている。アマゾン・ドット・コムの決算反応によってはFANG、GAFAと称される他のプラットフォーマ企業にも影響を与えそうである。
そして、最も注目されるのが7月22日に決算発表を予定している電気自動車(EV)大手のテスラである。今回の四半期決算で黒字となればS&P500種採用基準をクリアする。黒字化は想定の範囲内でありサプライズはなさそうだが、S&Pに採用されるようだとインデックス連動資金が流入することになり、一段の上昇が期待される。一方で、投資アプリ「ロビンフッド」経由の45万人ともいわれる小口株主の急増などバブル化も指摘されており、決算発表を契機に利益確定の流れが加速する可能性も警戒されている。テスラの株価動向次第では、グロース株への一段の資金流入、もしくはバリュー株へのシフトといった資金の流れが加速することも意識しておきたい。また、日本でも連休明けから決算発表が本格化する。機関投資家は動きづらくなるため、個人主体による成長期待のある中小型株に資金が向かいやすい地合いが想定される。
●今週の活躍期待「注目5銘柄」
◆ネットイヤーグループ <3622> [東証M]
ソーシャモバイルやアドテク、データ、クラウドなどを活用したデジタルマーケティング関連サービスを展開。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた企業の予算削減で広告・マーケティングシステム投資が影響を受ける一方、コロナ禍においてはこれまでデジタル化を躊躇していた企業のデジタルシフトが加速する可能性が高い。株価は上昇トレンドを継続しており、6月23日には744円まで上昇。その後は調整が続いているが、支持線として意識される25日移動平均線レベルでの押し目狙いで対処。
◆Jストリーム <4308> [東証M]
動画配信プラットフォームを展開。プロモーション目的の動画の企画・制作からWebサイトでの配信、さらに動画の活用施策まで提供する。コロナ禍で外出が手控えられる中において、医師のWeb講演会視聴履歴をMR(医薬情報担当者)に提供するソリューションなど、動画サービス需要が今後も幅広い業界で伸びそうである。株価は上昇する25日線を支持線とした強いトレンドが継続。過熱感が警戒されやすいが、需給状況は良好である。
◆エイトレッド <3969>
中小法人向けのワークフローパッケージ「X-point(エクスポイント)」などを手掛ける。テレワーク導入のハードルとなる「ハンコ出社」問題などは、ワークフローシステムで解決できるため、コロナ禍での新しい働き方改革において生じる需要を取り込むことが期待される。株価は強いトレンドが継続。6月19日高値2311円をピークに調整していたが、75日移動平均線を支持線にリバウンドをみせており、上値抵抗の25日移動平均線を突破してきている。
◆バリューコマース <2491>
アフィリエイト(成果報酬型広告)を軸とするソリューションを展開。コロナ禍においてECサイトの運営支援など集客回復に向けた需要が期待されよう。株価は3月安値1171円をボトムに上昇する25日移動平均線を支持線とした強いトレンドが継続している。3000円大台クリアでいったんは達成感も意識されやすいが、昨年5月高値水準を支持線に変えてくることで、値固めからの一段高に期待したい。
◆アルプスアルパイン <6770>
同社は6月4日に未定としていた2021年3月期業績予想を発表。新型コロナウイルスの影響が収束していない状況ではあるが、世界自動車販売台数を前年比20%減と見込んで予想を算定している。営業利益は5割減の見通しだが、まずは計画を発表したことで市場は織り込んだことになる。足元の株価は1400円を挟んで膠着が続くが、上値を抑えられていた25日移動平均線を支持線に変えつつある。5Gスマホ向け部品の需要など期待が高まりやすく見直しを期待。
2020年7月17日 記
株探ニュース