【植木靖男の相場展望】 ─ 天気晴朗なれども波高し
「天気晴朗なれども波高し」
●相場の女神の警告? 週明け以降に切り返せるかが焦点
日経平均株価の現状は、まさしく日露戦争時の秋山真之海軍中将の残した名言、“天気晴朗なれども波高し”そのものである。
今年3月を安値とした今回の上昇相場は年に1~2回あるとされるツボを8月末に迎えた。このとき8月28日、安倍首相の辞任報道で326円安と下落しヒヤッとしたが、その後下げは続かず、逆に9月に入って新型コロナウイルス感染拡大で急落する前の2月下旬の水準を回復した。
だが、9月第1週末には米国株急落で再び大きく下げた。まさに“波高し”である。この2回の下げは、相場の女神の市場に対する警告なのかもしれない。
今後の焦点は、具体的には週明け以降、8月28日の終値である2万2882円を下回るかどうかだ。これを下回ると、天井打ちの可能性が生じる。しかし、これまで通り、週明け以降、再び切り返せば、2万4000円に向けて突っ走ることもあり得よう。
もっとも、すでにツボを通過した以上、延長戦ゆえに、いつ天井を打ってもおかしくはないといえる。
ちなみに、18年10月天井のときは、やはりツボを通過したあと数日して5日連続安をみせ、この間に次の上昇のエネルギーをしっかり蓄えて、一気に上昇して天井を迎えている。
今回も8月から9月にかけて数日の下落をみせている。エネルギーが蓄えられていれば、一気呵成に天井に向けて走り出さないとも限らない。
●巨大IT企業“GAFAM”に突如の異変?
ところで、米国のGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)の巨大IT企業の株価が9月3日突如急落した。これといった悪材料が顕在化したわけでないだけに気にかかるところだ。市場ではいつものことながら過熱感という曖昧な表現を使うが、3日に急に過熱したわけでなく、こうした表現で片付けてしまうのは危険であろう。
ここへきて物色の流れに変化が出そうだ。
米ナスダック指数が好調のときは、いうまでもなくGAFAMの株価が牽引している。わが国にはGAFAMのような強大なIT企業は存在しない。せいぜい世界に胸を張れるのは任天堂 <7974> 、東京エレクトロン <8035> 、キーエンス <6861> など限られている。結局、こうした超値がさ株がナスダックに同調して上昇を続ける。
だが、もしGAFAMに異変ありとすれば物色の流れはどうなるのか。一つはコロナ禍で業績を伸ばす巣ごもり消費、オンライン関連だろうか。また、同じハイテク株でも7月頃に高値をつけ、8月にかけて調整してこのところ再び台頭してきた出遅れハイテク株も候補となるか。さらに金利上昇で出遅れ修正の景気敏感株も動意をみせるか。ただ、金利上昇はもろ刃の剣だ。
このようにみると、今回の銘柄は オンライン関連からブイキューブ <3681> だ。また、景気敏感株からは下げて買いやすくなったサカイ引越センター <9039> に注目したい。底力はありそうだ。
出遅れハイテク株では、安川電機 <6506> も出番か。業績はさえないが、自動車株高に追随するか期待したい。
2020年9月4日 記
株探ニュース