米国株式市場見通し:FOMCに注目
追加パンデミック経済救済策が速やかに成立する可能性が後退し、新型ウイルスワクチンへの期待も不透明な状況で、9月の荒い相場は継続しそうだ。共和党と民主党の支援策への見解の相違が大きく、選挙を控えて歩み寄りも見られず合意の見通しがたたない。最も期待されていた英国の薬品アストラゼネカが開発中のワクチンを巡る最終治験において、1対象者が原因不明の疾患を訴え治験が中断するなど、開発が停滞したことも失望感につながった。トランプ政権は、中国アプリ、ティックトックの売却が15日までに決定しなければ米国での営業を停止する方針を発表している。加えて、国家安全の問題から中国人学生の旅券発行を制限するなど米中関係の悪化も引き続き重しとなりそうだ。
リモート授業やハイブリッド方式など形態は様々だが、全米の多くの地域で学校が再開し、NY市では30日から収容率25%の条件でレストランの室内営業が再開されるなど、経済活動の再開は継続しているほか、連邦準備制度理事会(FRB)が長期にわたり大規模緩和を維持することが支援材料となるだろう。
FRBは15日から16日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)を開催。ゼロ金利を据え置き、長期にわたり低金利を据え置く姿勢を再表明する見通しだ。パウエル議長の会見のほか、メンバーの景気やインフレ、金利見通しも発表される。前回の予測では、メンバーのほとんどは、今後2年間、ゼロ金利を据え置くことになると予想していた。特にインフレ目標の指針修正後、ゼロ金利のさらなる長期化が予想されるかどうかが焦点となる。追加財政措置の行方が不透明となる中、回復支援のため、市場はFRBが9月会合で、フォワードガイダンス強化で一段の緩和姿勢を示すとかどうかに注目したい。FRBの一段の緩和姿勢は株式相場の下支えとなる。
経済指標では、9月ニューヨーク連銀製造業景気指数、8月輸入物価指数、8月鉱工業生産・設備稼働率(15日)、8月小売売上高速報、7月企業在庫、9月NAHB住宅市場指数、7月分対米国投資(16日)、8月住宅着工件数・許可件数、9月フィラデルフィア連銀景況指数、週次新規失業保険申請件数(17日)、8月景気先行指数、9月ミシガン大消費者信頼感指数(18日)が予定されている。特に8月小売売上高速報に注目だ。ウイルスの収束が見られず活動の再開が遅れ雇用に影響を与えているほか、政府の追加財政策も失効したため消費の伸びがさらに鈍化する見込みで見通しの悪化に警戒したい。
企業決算では住宅建設のレナー(14日)、ソフトウェア会社のアドビ、運送会社のフェデックス(15日)などが予定されている。特に外出規制で、オンライン小売り急増に伴う配送需要の増加が収益に繋がったと見られフェデックスの好決算が期待される。また携帯端末のアップルが15日に新製品発表イベントを予定しており、注目が集まっている。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》