為替週間見通し:もみ合いか、米追加緩和の思惑残る

通貨
2020年9月12日 14時57分

【今週の概況】

■ドル・円は伸び悩み、米国金利の先高観はさらに後退

今週のドル・円は伸び悩み。週前半に106円38銭までドル高に振れたものの、トランプ米大統領が「デカップリング」(経済面での米国の中国依存をやめること/米中分離)に言及し、米中対立激化が警戒されたことや、米国金利の先高観は一段と後退していることから、リスク回避のドル売り・円買いが優勢となった。英国と欧州連合(EU)の通商協議は難航しており、ユーロ、ポンドに対する円買いが観測されたこともドル・円相場を圧迫した。

11日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時106円21銭まで戻した。この日発表された8月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想を上回り、ドル買いが優勢となった。ただ、米長期金利は伸び悩んだことから、リスク選好的なドル買いはやや縮小し、ドル・円は106円16銭でこの週の取引を終えた。今週の取引レンジは105円80銭から106円38銭となった。取引レンジ:105円80銭-106円38銭。

【来週の見通し】

■もみ合いか、米追加緩和の思惑残る

来週のドル・円はもみ合いか。自民党総裁選で菅義偉官房長官が予想通り選出された場合、日本銀行の大規模な金融緩和策や日本政府による機動的な財政出動などの経済支援策は継続されるとの思惑から、リスク回避的な円買いは後退する見通し。一方、9月15-16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で追加緩和につながる議論が活発となる可能性があることから、米国金利の先高観はさらに後退し、ドルに下押し圧力がかかりやすいだろう。

辞任を表明した安倍首相の後任を決める自民党総裁選には、菅氏のほか石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長が立候補しているが、国会議員中心の投票による選挙で、すでに有力派閥の支持を固めている菅氏の当選が確実視されている。菅氏は出馬にあたり安倍政権の経済政策の中枢となった「アベノミクス」を継承する意向を示しており、14日投開票の総裁選で同氏が当選を決めれば株高・円安の相場展開も予想されるが、早期の衆院解散・総選挙が予見された場合、リスク選好的な円売りは抑制される可能性がある。

一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は来週15-16日開催のFOMCで政策金利の据え置きを決定する見込み。完全雇用の実現に向け長期的な金融緩和で物価の安定を目指し、インフレ率は一時的に2%超となる可能性もあるが、それを容認する新たな政策決定プロセスを導入する。一段の金融緩和政策の導入を想定して、リスク回避的なドル売りがやや強まる可能性がある。なお、市場参加者の一部は欧州通貨の値動きがドル・円相場にも一定の影響を与える可能性があると予想している。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁はユーロ高を問題視していないとの見解を示しており、ユーロ買い・ドル売りが再び強まる可能性がある。一方、英国は欧州連合(EU)からの合意なき離脱を選択する可能性もあるため、ポンド、ユーロに対するドル買いが広がった場合、リスク回避的なドル売り・円買いを抑制するケースも予想される。

【米連邦公開市場委員会(FOMC)】(15-16日開催)

FRBは9月15-16日にFOMCを開催し、現行の政策金利を据え置く公算。同時に、インフレ上昇率が一時的に2%超となるのを容認した金融政策決定の新たなアプローチを決定するとみられ、ドル売りを招きやすい。

【米・8月小売売上高】(16日発表予定)

16日発表の8月小売売上高は前月比+1.0%と、7月実績の+1.2%を下回る可能性がある。ただし、市場予想を上回った場合、年後半の景気回復シナリオへの期待感から、ドル買い要因となりやすい。

予想レンジ:104円50銭-107円50銭

《FA》

提供:フィスコ

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