株価変貌のプロローグ、「医療業界DX」でテンバガーを狙う株 <株探トップ特集>

特集
2020年9月12日 19時30分

―遥かなる未踏峰への挑戦、時価総額4兆円の大化け銘柄エムスリーに続くのは―

●医療の合理化と付加価値化が求められる時代に

週明け14日には自民党総裁選というビッグイベントが待つ。両院議員総会で投開票が行われるが、菅官房長官が次期総裁に選出される可能性が高いとみられている。菅氏は地銀の再編やデジタル行政の加速などを政策方針として掲げたが、株式市場でも“菅政権”の成立をにらみ関連銘柄が軒並み動意づく展開となった。しかし、株式市場では新政権で早晩クローズアップされるであろう、重要な政策路線をまだ織り込んではいない。

菅氏は直近のテレビメディアを通じての発言で将来的な消費増税の必要性について否定しなかったが、その根拠となっているのは日本国内で進む超高齢化の実態がある。全人口の5分の1が65歳以上という超高齢化社会に既に突入している日本だが、社会保障費の増大や生産年齢人口の減少など副次的に様々な問題を生じさせているのは言うまでもない。消費増税の話ともリンクして、今後は医療業界の合理化及びサービスの付加価値化、あるいは予防医療の充実などが必須のテーマとなっていく。

●超高齢化は増税ではなくDXでクリアする

第1次ベビーブームで生まれた世代が後期高齢者になる2025年には、65歳以上の割合が全人口の3割にまで達することが予測されている。この難局を増税だけでクリアするというのは政策サイドとしてあまりに無策である。官公庁や民間企業がこぞってデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むなか、医療業界もまた例外ではない。むしろ医療ビッグデータ 人工知能(AI)の融合で、デジタルシフトの“効能”が最も効果的に発現するのが医療業界と言えるかもしれない。国策とともに民間企業のバイタリティーが試される時だ。

医療ICTは、院内情報にとどまるものではない。不特定多数の患者のバイタルデータの蓄積や病中だけでなく病後のデータ、あるいは未病の段階のヘルスケアもその範疇となる。最先端のICTを駆使して効果的な医療サービスを生み出す「ヘルステック」の概念がグローバルに浸透している。ビッグデータの普及やAIの進化に伴い医療情報のデジタル化が真の意味で恩恵をもたらす時代がすぐ目の前に迫っている。

●テンバガー5個分のモンスター銘柄の存在感

そして個別株をみても医療ICT関連は変身銘柄の宝庫といってよい。何といっても同テーマでは先駆的銘柄といえるエムスリー <2413> が特筆すべき存在だ。同社は医師向け医薬品情報サイトを運営し、製薬会社のマーケティング支援ビジネスを展開するが、直近10年間の株価変貌はまさに圧巻である。9月に入り株価は調整色を強めたが、それでも現在、同社株の時価総額は4兆1000億円を超えている。驚くべきことにこれは半導体製造装置国内トップである東京エレクトロン <8035> を上回っている(9月11日現在)。しかし、同社は今から10年前、2010年の年初時点で時価総額は770億円だった。そこから、ざっくりと53倍。テンバガー銘柄を5つまとめて抱えたに等しい驚愕の株高パフォーマンスを演じている。PERは150倍強と高いが、それはなお今後の成長余力の高さをマーケットが感知しているからにほかならない。

そして、医療業界のDX化への取り組みが今後加速するなか、次の10年でこのエムスリーの変貌を彷彿とさせるような銘柄が出てくる可能性も十分にある。ここから中長期的に要注目となる医療ICT関連5銘柄をピックアップした。

●中長期で注目必至の5銘柄はこれだ!

◎ソフトマックス <3671> [東証M]

Web型電子カルテ を主力に医療情報システム開発分野に展開し、会計システムなども手掛けている。デジタル化が相対的に遅れている中規模病院向けで拡販を進めており、今後の市場開拓余地も大きい。新型コロナウイルス感染症への警戒感が高まるなか、院内での感染防止策として非接触型の電子カルテに対するニーズが喚起され、ソフトの仕様追加及びハード更新の件数が増勢、同社の収益機会拡大につながっている。業務提携戦略による業容拡大にも前向きで、医療機関への業務請負や介護サービスなどを展開するソラスト <6197> とは医療ICTの活用に関連したサービスで包括的に協業しシナジーが見込まれている。20年12月期中間期(1-6月)の営業利益は前年同期比25%増の1億2500万円と大幅な伸びを達成した。株価は昨年7月に1500円の高値をつけており、増収増益基調が続く現在、1000円未満の株価は依然として見直し余地が大きい。

◎メディカル・データ・ビジョン <3902>

医療機関や製薬会社向け経営支援ビジネスを展開する。データネットワークサービスとデータ利活用サービスが収益の2本柱となっている。病院や個人から許諾または同意を得て診療データなどの医療・健康情報を蓄積しており、既に3000万人を大きく上回る患者の診療データベースを保有。また、医療ビッグデータを利活用して製薬会社や研究機関に薬剤や疾患に関する分析データを提供し、生活習慣病予防やEBM(根拠に基づく医療)に役立てる。更に成長戦略として、構築したデータ基盤をもとにしたデータの利活用ビジネスを、さまざまな分野に向け展開、急速にその裾野を広げている。同社の医療ビッグデータが活用される市場は25年に約8000億円規模となると試算されている。20年12月期営業利益は前期比11%増の9億円と2ケタ成長を予想。株価は目先調整局面にあるが25日移動平均線を足場に切り返し、早晩2000円台復帰が視野に。

◎Ubicomホールディングス <3937>

オフショアの大企業向けシステム開発会社でフィリピンに開発拠点を置き、医療関連ソフトにも展開する。AIやRPAなどのソリューション及び、組込みソフトやアプリケーション開発などのソフトウェア領域をグローバル事業として展開、新規顧客の開拓や既存顧客の案件拡大が業績に寄与している。また、医療機関向け経営支援ソリューションの先駆的存在であり、次世代レセプト(診療報酬明細書)チェックシステムなど医療ICT分野で高水準の需要を捉えている。高度なセキュリティー基盤のもと医療機関の事業継続計画や医療データ保全をクラウドでバックアップするサービスを3月からスタートさせており、業容を広げている。16年3月期以降、大幅増益路線をまい進、21年3月期営業利益も前期比14%増の8億700万円と2ケタ成長継続の見込み。株価は6月末の年初来高値から20%前後ディスカウントされた水準にあり仕込み妙味がある。

◎CEホールディングス <4320>

中小病院を主要顧客に自社開発の電子カルテシステム「ミライズ・エーズィー」を中心とする医療ソリューション事業を手掛ける。20年9月期業績は前期収益に反映された大型案件の反動で大幅営業減益見通しにあるが、21年9月期は、買収により傘下に収めた医薬品・医療機器の臨床試験受託会社マイクロンがフル寄与することでV字回復に向かう見込み。このマイクロンが開発支援したAI搭載のプログラム医療機器が「新型コロナウイルス感染症に関連した肺画像解析プログラム」として日本初の承認を取得している。また、医療機器における品質マネジメントシステムの国際規格も取得しており、今後の展開力に磨きがかかっている。主要取引先のNEC <6701> との協業体制強化を図っている点もポイント。光通信 <9435> が純投資目的で同社株を買い増し、筆頭株主となっている。株価600円未満は医療システムを展開する同業他社と比較しても値ごろ感がある。

◎日本システム技術 <4323>

独立系のシステム開発会社で、主力の業務支援ソフト受託開発のほか医療ビッグデータ事業への展開力に厚いことでも知られる。医療ビッグデータについては成長分野として育成に力を入れており、保険者向けトータルサービスとして、レセプトデータの自動点検・分析システム「JMICS」をクラウド経由で提供し、高い評価を得ている。業績は16年3月期以降20年3月期まで増収かつ2ケタ営業増益を続けており、成長速度の速さが際立つ。21年3月期は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、営業利益は強含み横ばいを見込んでいるが、来期以降は再び高成長路線に復帰する可能性が高い。時価PERは16倍前後と成長性の高さを考慮すると割安さが目立つ。年間配当は今期も28円を計画し株主還元にも前向き。株価は25日・75日移動平均線が収れんする1600円近辺をターニングポイントに年初来高値1988円を目指す動きが期待される。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.