富田隆弥のチャート倶楽部2021スペシャル <新春特別企画>

特集
2021年1月2日 9時00分

「年央3万2000円も、金融・財政支援が相場押し上げ」

◆2021年も「高所」からスタート

2020年の日経平均株価は30年ぶりに2万7000円台を回復して終えた。年間の上昇率は16.0%で、新型コロナショックによる混迷や3月に1万6358円まで突っ込んだことを踏まえるなら、この上昇は大健闘、立派と言えるだろう。

さて2021新年相場だが、日米とも株価は昨年同様に高値圏からのスタートになる。新年「丑(うし)年」の相場格言は「牛つまずく」であり、また週足のテクニカル指標は過熱信号を灯しており、春先はもたつく展開を想定している。だが、金融・財政の支援が続くことから、夏場に向け上昇の勢いを強めて3万円の大台に乗せるだろう。

大まかな年間予測としては「序盤にもたつき(2万6000円台)、年央の6月頃に向けて高値模索(3万2000円)、終盤に調整(2万7000円台)」という流れで、年間を通してでは「イッテコイ」になる可能性もある。この相場予測の要因を下記に挙げておく。

春先(序盤)もたつきの要因は、

(1)米国の追加経済対策成立、バイデン大統領就任など「材料出尽くし感」が漂う

(2)米国の1月5日のジョージア州上院選挙(トリプルブルー懸念)

(3)日米とも株価は高値圏でテクニカル指標に過熱感あり

(4)「ドル安」基調が続き、米国株に「リスクオフ」ムードが流れる

(5)10-12月期および3月通期決算が予想に届かず

(6)3月年度末に「彼岸底」リスクあり…など

だが、4月から6月にかけて大きく切り返す。その要因は

(7)経済活動の停滞で金融支援・財政出動が続く

(8)過剰流動性(金融)相場が指数を押し上げる

(9)衆院解散・総選挙を控えた「株高」アノマリーあり

(10)東証の新「プライム」市場を意識して主力株が買われる

(11)2020年並み16%の上昇(年末比)が3万2000円…など

そして、年終盤の調整リスク要因は

(13)無制限の金融緩和・財政出動に打ち止め論(金利上昇)

(14)米中問題の再燃

(15)過去最高値の米国株に波乱懸念…など。

さまざまな要因が想定されるものの、相場の最大の要因は「需給」であるから金融・財政支援が相場を下支え、そして押し上げるだろう。とはいえ、相場であれば調整を挟むことは避けられない。大きな波をうまく捉えるためにもチャートから目が離せない。

◆2021年の「注目株」

菅内閣が「グリーンとデジタル」を政策の柱に据えたことで、新年の株式市場はこれがそのまま主要テーマとなる。そして、カネ余りの金融相場が続くことと、22年からプライム新市場が創設されることを踏まえると、「大型主力株」が活躍するとみている。すでに動意づいているものも少なくないが、カネ余りの地合いが続くことから年央まで「押し目買い」基調が続こう。

□トヨタ自動車 <7203> (12/30日終値 7957円)

環境関連の中核銘柄として躍進が期待される。25年に電動車を世界で550万台以上販売し、そのうちEV(電気自動車)FCV(燃料電池車)を100万台以上とする計画を打ち立てた。EVは米テスラが先行し、中国勢の台頭や米アップルの参入も囁かれる。また、FCVは韓国・現代自動車が先行するが、新年のトヨタは巻き返しに向けてアクセルを大きく踏みこもう。

EVの核心となる部品は電池だが、いま日本は次世代バッテリー「全固体電池」の実用化に向け官民共同で注力している。走行距離がリチウムイオンバッテリーの2倍とされ、トヨタは全固体電池搭載車を20年代前半に販売する方針。

並行してトヨタが注力するのが水素バッテリーで動く「FCV」で、20年12月9日に新型「ミライ」を発表した。CO2を排出しない究極の環境車と言われ、市場のテーマである「水素」の普及をトヨタが加速させよう。

株価は12月17日に年初来高値8045円をつけ、2月6日の高値(8026円)水準に肩を並べて少し足踏みしたが、ここでの調整はセオリー通り。だが、この節を抜くと、次に目指すは15年の上場来高値8783円となる。そして、新年にはそれを抜いて「1万円大台」指向が想定される。

□三井金属鉱業 <5706> (12/30日終値 3685円)

同社は全固体電池関連として注目されている。株価は3月安値の1511円からジリ高基調にあったが、12月に3000円処の節を抜くと3905円(12月21日)へ上昇を加速させた。野村証券(目標株価4060円)や日興証券(同3700円)、三菱UFJモルガン(同4300円)が見通しを引き上げたほか、貴金属市況の上昇も同社には追い風となっている。

12月下旬に株価はもたつくが、急騰に伴うスピード調整は相場のセオリーであり問題はない。信用残が低水準で拮抗(売り42万株、買い71万株、信用倍率1.7倍)しており需給は良好。日経平均採用銘柄でバリューファンドの資金流入も期待される。チャートは3年間の調整を経て出直りを鮮明にしている。18年1月に7200円の高値があり、新年は18年1月高値から20年3月安値までの下落幅の半値戻しである4355円水準を目指そう。

□川崎重工業 <7012> (12/30日終値 2324円)

同社のチャートは20年10月29日安値の1231円で底を打ち、そこから直近12月29日には2353円の高値をつけ底値圏からの浮上を明確にした。いまや脱炭素は世界の潮流で、発電や自動車などでの「水素」の積極活用は待ったなし。政府は国内の水素利用量を30年に1000万トン規模とする目標を掲げた。その多くを当初はオーストラリアなどからの輸入に頼るが、そこで活躍するのが世界初となる同社の「液化水素運搬船」だ。

目先は短期急騰に伴うスピード調整を挟む可能性はあるものの、チャートを見れば18年1月に4620円、15年3月に6470円という高値があり、戻り余地は十分にある。信用倍率は0.93倍で買い方が有利な状況が続く。新年は3000円台から4000円指向となろう。

*新年が皆様にとりまして良い年になりますようお祈り申し上げます。

(2020年12月29日 記 ※注目3銘柄の終値は編集部が追記)

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