大波乱相場の真相と処方箋 この中低位7銘柄で3月相場に臨め! <株探トップ特集>

特集
2021年2月26日 19時30分

―“過剰流動性相場”終わりの始まりかそれとも上昇波動の踊り場か、ここからの戦略は―

東京株式市場はにわかに大荒れ模様となっている。日経平均株価は2月前半に一気に水準を切り上げたが、その反動も大きかった。とりわけ2月最終週は高値波乱の典型ともいえる動きとなった。日経平均は24日に484円安と大幅安に振れた後、25日は496円高と前日の下げ分をまるごと取り返したが、そこで安心ムードが漂った投資家心理を再び谷底に突き落とすように週末26日は1202円安と暴落。終盤に狼狽売りが加速して24日に続く安値引けとなり、4年8ヵ月ぶりとなる下落幅で3万円大台はおろか、一気に2万9000円ラインをも下回った。

●米長期金利の急上昇がもたらした亀裂

到底崩れそうもない千丈の堤(つつみ)であっても時の流れは必ずそれを穿(うが)つ。足もとでは、これまで強気マインドを半ば信仰的に支えていた過剰流動性相場のコンセプトに亀裂が入る格好となっている。

いうまでもなく、そのトリガーとなったのは米長期金利の動向だ。25日の米国株市場ではNYダウが559ドル安、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は478ポイント安と急落したが、これは米10年債利回りが一時1.6%台まで急上昇し、インフレ警戒モードを増幅させたことによるもの。この1.6%という水準は2020年2月初旬以来、つまり時間軸で言えばコロナショック以前のレベルとなる。日本国内に目を向けても、直近で新発10年債利回りは0.17%台まで上昇。遡ること5年前、日銀がマイナス金利の導入を決めた時以来の水準であり、テコでも動かないはずのデフレ環境が地殻変動を起こし始めたという認識がマーケットに広がり始めている。

●コロナ収束への期待感と相場の本音

新型コロナウイルス感染拡大は実体経済に多大なるダメージを与えたが、それも収束に向けた道筋が見えてきた。米ファイザー製をはじめ新型コロナワクチンの普及が政策的な後押しで想定以上のハイペースで進んでいる。当然ながら、これが経済活動正常化への思惑を助長することになり、自粛疲れの反動も考慮すると爆発的な消費を生む可能性も意識される。本来であれば、経済が活性化することは企業業績を反映する株式市場にとってもポジティブ材料のはずだが、ここで一つ問題が生じてくる。

コロナ禍であればこそ、これまで各国政府や中央銀行によって掛け値なしの財政出動や強力な金融緩和が行われてきた。昨年3月下旬以降に形成された株高の本質はこの政策によってもたらされた“超”のつく金融相場であった。しかし、この究極ともいえるマーケットフレンドリーな政策を続ける大義名分が、コロナ収束とともに失われることもまた自明である。つまりカネ余りによって押し上げられた相場は、資金の流動性が収縮するプロセスにおいて、企業業績の回復を買うという業績相場へすんなりとはバトンを渡すことができない。そうした思惑が足もとの株式市場を波乱に陥れているのだ。

●“次に来る”ステージはリバウンド

しかし、ここで弱気に宗旨替えするタイミングが訪れているのかと言えば答えはノーである。むしろこの突っ込みは買い場提供と考えてよい。「26日は大引けに機関投資家による株売り・債券買いの月末リバランスが行われる。この機械的なアクションを見込んで、株をできる限り安い水準に落としたいヘッジファンドの仕掛けが入った」(国内中堅証券マーケットアナリスト)という指摘がある。日経平均の2度にわたる安値引けはある意味“出来すぎ”である。3月相場ではこのヒステリックな売りの反動が出て、月の前半にリバウンド局面が訪れる公算が大きい。

改めて現在の株式市場を不安定にしている要因が何なのかを考えてみた場合、それは実体経済におけるインフレ懸念である。コモディティ市況など川上では既にインフレモードだが、これが川下である消費者が日常で感じる物価の上昇に色濃く反映されているわけではない。それどころか、今週のパウエルFRB議長の議会証言では「米経済は雇用・物価上昇の目標から程遠い」との認識が強く示された。デフレ脱却がテーマとなっていた経済からいきなりインフレ経済へと舞台が回るということはない。「目先の波乱相場は行き過ぎた警戒感がパニックを生んだ」(準大手証券ストラテジスト)という見方も強い。

3月は11日にECB理事会、16~17日にFOMC、18~19日に日銀金融政策決定会合が行われる予定だが、仮に全体相場が崩れた場合は、日米欧ともに強力な金融緩和政策の推進で足並みを揃えることは必至。ここから売り方にすれば動きにくい時間帯に入っていく。物価上昇が本当に警戒される局面にならない限り、各国中央銀行はテーパリングに言及することはない。今回の波乱相場の引き金を引いた米長期金利の動向は株式市場のバロメーターとして今後も注視が必要だが、短時日で2%台に向け突っ走るというようなことはなく、落ち着きを取り戻す可能性が高い。そして、株式市場もバランスを立て直すことになるだろう。

●波乱相場でも実力発揮、選りすぐりの中低位株7選

では、個別株戦略において投資対象としてはどこに着目するべきか。グロースからバリュー系銘柄への資金シフトが意識されるなか、これまで相場の牽引役であった値がさのハイテク株は、主力どころを中心に当面は上値の重い展開となる可能性がある。これに代わって、株価に値ごろ感のある好実態銘柄が動きやすい地合いとなりそうだ。具体的には株価が3ケタ台、つまり1000円未満の銘柄で、直近の決算内容が良好であった好チャート株は水準訂正妙味が浮き彫りとなる。

今回のトップ特集では、全体波乱含みの地合いでもオリジナルな輝きを放つ上値期待大の中低位7銘柄をエントリーした。

◎メディカルシステムネットワーク <4350>

北海道を拠点に調剤薬局関連事業を展開、良質な医療インフラの創造を企業理念に業容拡大に積極的であり、M&A戦略を駆使して全国へと活躍領域を広げている。足もとでは医薬品 ネットワーク部門で加盟店の医薬品取扱高が会社側の想定以上に伸びているほか、ジェネリックが増勢で処方箋単価も上昇して収益に貢献している。21年3月期営業利益予想は期中2度にわたる上方修正を行い、直近では25億円予想から34億円(前期比2.1倍)に大幅増額している。株価は2月第2週にストップ高を交え連日マドを開けての急騰を演じ、826円まで買われた。その後調整を入れたが、目先売り一巡から切り返し本番へ。

◎明和地所 <8869>

首都圏を中心として「クリオ」ブランドを主軸にマンション事業を手掛けるが、新型コロナウイルス感染拡大を背景とした住宅に対する意識変化や住み替え志向の高まりを捉え業績は好調だ。ウィズコロナ社会に対応し時代のニーズにも合わせた設備システム「アタラシエ」を展開し需要の獲得に成功している。21年3月期営業利益は前期比9割増となる31億円予想。しかし、20年4-12月期時点で前年同期比2.6倍の35億5400万円に達し通期計画ラインを大幅に超過。株価は昨年11月以降上昇トレンドを継続し新値街道を走るが、PERは7倍台でPBR0.6倍台、配当利回り4.5%台と依然割安感が強い。

◎エンビプロ・ホールディングス <5698>

金属スクラップを選別・加工して販売する資源リサイクルの大手で、環境コンサルティングや中古車関連の販売事業も展開している。中国の旺盛な需要を背景に鉄スクラップ価格が上昇し利益を押し上げている。21年6月期営業利益は従来予想の5億1000万円から10億円(前期比26.5%増)に大幅増額したほか、年間配当も従来計画の10円から15円に上乗せ(前期実績は10円)している。今後は世界的なカーボンニュートラルへの取り組みや廃プラ輸出規制強化の動きが廃プラリサイクルも手掛ける同社に追い風となっていく。時価はPER、PBRともに割高感はなく、早晩4ケタ大台復帰を目指す展開に。

◎エムケー精工 <5906> [JQ]

ガソリンスタンド向け洗車機などをはじめ自動車業界向けメカトロ製品技術を得意としている。世界的な電気自動車(EV)シフトの動きも同社にとってマイナス材料とはならない。また、ライフ&サポート部門では小型精米機や電気せいろなどニッチな調理家電を展開し、消費者のライフスタイルの巣ごもり化を追い風に業績を伸ばしている。コロナ禍にあっても20年4-12月期営業利益は前年同期比26%増の16億9000万円と絶好調、通期計画の10億5000万円を既に大幅に上回っており上振れが有力視される。株価は昨年10月以降、25日移動平均線をサポートラインに一貫した上昇波動を構築している。

◎カナミックネットワーク <3939>

医療・介護分野向けに特化したクラウドサービスを手掛けるが、ストックビジネスを主眼に置き、顧客基盤を順調に拡大させている。業績はここ10年にわたり高成長路線をまい進している。特に介護業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)化の動きを背景にトップラインの拡大が顕著であり、増収効果を利益面にも反映し、21年9月期第1四半期(20年10月-12月)営業利益は前年同期比倍増となる2億300万円と高水準の伸びを達成している。独自理論に基づいた経営コンサルティングを展開する識学 <7049> [東証M]とは協業体制で経営支援ビジネスを展開、業容拡大に向けた伸びしろが大きい。

◎カヤック <3904> [東証M]

ネット広告の受託制作やSNS ゲームの配信を主力事業としているが、巣ごもり需要を捉えて収益機会を広げている。技術者比率が高い会社で、これを背景としたデジタルコンテンツの開発力の高さが強み。ヒットした「パークマスター」などに続くゲーム分野の展開力に期待がかかる。トップラインの急拡大で営業大幅黒字化を果たした20年12月期に続き、21年12月期は伸びが加速し会社側では前期比34%増の10億円を見込む。株価は2月中旬に急動意、945円に買われた後調整しているが、800円台前半は押し目買いが厚い。4ケタ大台復帰から、昨年8月につけた高値1068円奪回が当面の目標に。

◎アライドアーキテクツ <6081> [東証M]

SNS活用に特化した企業のマーケティング 支援事業を展開しており、その実績は6000社以上に及ぶ。最近ではマーケティング領域におけるデジタル技術やデジタル人材に重点を置いたマーケティングDXを経営戦略の骨子に掲げ、業容拡大に傾注する。コロナ禍でいったんは落ち込んだ企業の広告需要もツイッターなどSNSを活用した販促市場は拡大が顕著であり、昨年後半以降は巻き返しが急だ。中華圏向けEC支援など海外事業も収益貢献が期待できる状況。21年12月期は増収効果を背景に営業利益段階で前期比34%増の4億円を見込む。株価は19年3月の戻り高値734円を払拭し800円台指向へ。

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