欧印で高まる石油需要の下振れ懸念、相場の軸は再び需要見通しに <コモディティ特集>

特集
2021年3月31日 13時30分

今週、石油輸出国機構(OPEC)プラスは4月1日に閣僚会合を行う。前回と同様に減産目標はほぼ据え置かれる見通しである。欧州やインドなどで新型コロナウイルスが再流行していることが石油の需要見通しを悪化させているうえ、世界的な景気回復期待を後退させていることが背景。

●インドで感染者数が急拡大

世界第3位の石油消費国であるインドでは感染者数が急拡大しており、死者数も上向いている。昨年9月にかけての第1波のように感染が悪化していくとインドにおける都市封鎖も覚悟しなければならないだろう。印マハラシュトラ州ではすでに夜間の外出禁止令が出ており、都市封鎖に踏み切ることを検討している。今週にも追加の措置が発令される見通しで、石油需要がさらに悪化することは避けられそうにない。

インドでは英アストラゼネカが開発したワクチンのほか、国産のコバクシンが利用されており、接種ペースは一日あたり150万回超とそれなりに高水準ではある。ただ、中国と並び人口は14億人近くと大規模であることから接種率の拡大は遅い。集団免疫の獲得時期はかなり先である。ブルームバーグのワクチン・トラッカーによると、インドの人口の75%がワクチン接種を完了するまで3年以上必要である。余談ではあるが、日本の場合は10年以上必要である。

欧州ではドイツやフランス、イタリアなどで感染が拡大している。ポーランドやウクライナ、ハンガーでは一日あたりの感染者数が過去最多を更新しており、欧州連合(EU)の主要国で流行がさらに広がるリスクがある。ドイツのワクチン接種率は7.8%、フランスは8.1%、イタリアは7.9%と、英国の25.5%、米国の22.7%と比較して明らかに出遅れている。

●相場の軸は再び需要見通しに

OPEC月報によると、2020年の欧州の石油需要は日量1244万バレル、インドは440万バレルである。合計で世界全体の20%近くを占める。今年はそれぞれ同1309万バレル、同499万バレルまで回復すると見通されているが、下方修正される可能性が高い。

今月初めにかけての原油価格の上昇トレンドはOPECプラスが供給制限を続けることや、原油高のなかでも米国のシェールオイル生産量が回復しないことなど、どちらかといえば供給側の要因が買いを促してきたと思われるものの、値動きを決める相場の軸は再び需要見通しに移りつつある。足元の調整安が長引くのかどうかは新型コロナウイルスの流行が左右しそうだ。コロナ禍はまだ終わりそうにない。

ただ、イスラエルや英国、米国など、ワクチン接種で先行する国々では流行が沈静化に向かっている。イスラエルは集団免疫の獲得が近い。効果が持続する期間についてはまだ不明だが、ワクチンは救世主として世界経済を確実に正常化へ導いており、再流行を過剰に警戒する必要はなさそうだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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