「子ども庁創設」で芽吹く新時代、「子育て支援」テーマは至宝株の鉱脈 <株探トップ特集>

特集
2021年4月8日 19時30分

―「女性支援」の観点でESG投資にも乗る、男女平等社会の実現に向け高まる関心―

4月2日、にわかに「子育て支援」関連銘柄が動意づいた。きっかけとなったのは、2日付の複数のメディアで、菅義偉首相が1日、子育て政策などについて省庁横断で取り組む「子ども庁」の創設案が党内から出ていることを踏まえ、党として検討するよう指示したと報じられたことだった。子ども庁の創設により、子育て支援に関する政策が充実されるようになれば、関連する企業にとっても事業機会が増えるとの思惑が働き、幼児活動研究会 <2152> [JQ]をはじめJPホールディングス <2749> 、グローバルキッズCOMPANY <6189> などが急伸した。

これらの銘柄の株価は現在では落ち着きを取り戻しているが、子ども庁創設に向けた動きが進むことで、関連銘柄への関心も更に強まるとみられ、注目が必要だろう。

●縦割り行政の弊害をなくし子育てを支援へ

現在の政府の子育て支援は、例えば子育てを担う施設の所管は文部科学省が幼稚園や学校、厚生労働省が保育園や学童保育、内閣府が認定こども園をそれぞれ所管しているほか、主な子育て支援策も児童手当は内閣府、子育て世帯への給付金は厚労省、教育関連支援は文科省とばらばらな状態。それゆえに効果が把握しにくく、利用者にとってはどこに申請すれば良いのかがわかりづらいなどの問題があった。

子ども庁はこうした縦割り行政の弊害をなくし、省庁横断で子どもの発達支援や児童虐待・DV対策、施策の充実などを担うとしている。創設により出産や育児、教育など子育てを巡る施策を拡充し、安心して子どもを生み育てられる環境の構築により、女性がしっかりと働くことができる社会を実現するのが狙いだ。

厚労省が2020年9月に発表した人口動態統計(確定数)によると、19年の出生数は86万5239人と前年から5万3161人減少し過去最少を記録している。労働環境の変化や、非婚化・晩婚化に伴う出生率の低下など、さまざまな要因はあるものの、子ども庁を創設し国の取り組みを一本化することで、少子化解消への期待が強まっている。

●ジェンダー平等がより意識される社会へ

「子育て支援」はまた、「女性支援」としても注目されている。3月8日は国際女性デーだったが、21年のテーマは、「リーダーシップを発揮する女性たち:コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」。特に今年は、SDGs(持続可能な開発目標)の掲げる「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」や、日本のジェンダーギャップ指数の低さ、更にはここ最近相次いだ政治家などの発言で、「女性により平等な未来を」というテーマは、これまで以上に強く意識されることになった。

そのため株式市場でも、これをESG投資に関連付ける動きがみられ、「子育て支援」は「女性支援」としてとらえる向きが強まっている。そのため関連銘柄への注目は、一過性のものではなくなりそうだ。

●働きたい子育て世代と企業をマッチングするカラダノート

女性支援に関連した銘柄の中核は、前述の幼稚園や保育園の保育時間内(正課)に、社員が各園を訪問して体育授業や課外体育指導などを行う幼児活動研や、保育園をはじめ学童クラブ、児童館などの子育て支援施設を運営するJPHD、首都圏を中心に自治体から認可などを受けた保育施設や学童クラブ、児童館などを運営するGキッズだが、ほかにも注目すべき銘柄は多い。

インタースペース <2122> [東証M]は、成果報酬型広告(アフィリエイト広告)の仲介を行うインターネット広告事業が主力だが、メディア運営事業として日本最大級のママ支援SNSサイト「ママスタ」の運営を展開。同事業は、大手ポータルサイトとの提携により「ママスタ」の記事閲覧数が大幅に増加し、20年11月度には月間のコンテンツ閲覧数が2億8000万ページビュー(PV)に達するなど好調。第1四半期(20年10-12月)連結決算で、全体の営業損益は2000万円の赤字だったが、同事業は800万円の黒字(前年同期7100万円の赤字)と黒字転換した。

カラダノート <4014> [東証M]は、保険や住宅など家族向けサービスを展開するクライアント企業向けに、運営するWebサイトやアプリなどを通じて得た、妊娠育児層のママを中心に蓄積したさまざまなファミリーデータベースを提供している。運営するサイトには、妊娠中や育児の不安の解消や軽減につながるコンテンツを配信する「ママびより」があるほか、運営するアプリには、陣痛間隔計測アプリ国内トップの「陣痛きたかも」などがある。また、働きたい子育て世代と企業をマッチングするサービスを2月にスタートしている点も要注目だ。

●コンテンツ拡充で順調にPV数を伸ばすベビーカレンダー

SERIOホールディングス <6567> [東証M]は、子育て中の女性を対象に就労支援や育児支援事業を展開するほか、学童クラブを運営する放課後事業、保育園を運営する保育事業を手掛けている。就労支援では、パートタイマー型や1週間に2日もしくは3日の勤務など、仕事と家庭が両立しやすいワークスタイルを提案しているのが特徴で、第2四半期累計(20年6-11月)連結決算では、同事業の営業利益は7800万円(前年同期比78.4%増)と大幅に増加した。

ポピンズホールディングス <7358> は、ナニー(教育ベビーシッター)やベビーシッターの派遣や家事支援を行う在宅サービス事業と、保育所や学童保育の運営を行うエデュケア事業が柱。また、乳幼児教育に関する研修や保育士の人材紹介なども手掛けている。20年12月期連結決算は、在宅サービス、エデュケアともに計画を上回り、営業利益は14億6600万円(前の期比4.6%増)で着地した。21年12月期は、ベビーシッターの会員数拡大などを図り、在宅サービス事業の営業利益を25.5%増と予想。これを牽引役に、全体の営業利益は18億2000万円(前期比24.1%増)を見込む。

ベビーカレンダー <7363> [東証M]は妊娠・出産・育児の専門情報を提供するWebサイト/アプリ「ベビーカレンダー」の運営と、産婦人科向けデジタル情報提供サービス「ベビーパッドシリーズ」の提供が主な事業で、「ベビーカレンダー」の月間PV数は20年12月時点で1億973万PVに上る。会社側では、コンテンツの拡大や機能の拡充などで21年中に1億5000万PVを目指すほか、19年から展開している、生理情報やアンチエイジングなど周辺領域のサイト展開にも注力する方針で、21年12月期は営業利益1億9700万円(前期比2.1倍)を見込んでいる。

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