明日の株式相場に向けて=好決算銘柄に売りの洗礼続く
週明け26日の東京株式市場は、日経平均株価が105円高の2万9126円と反発。日経平均株価、TOPIXともに75日移動平均線を前週21日に下抜けたが、そこで何とかこらえて水準を保ち、今は同移動平均線にぶら下がっているような状態にある。崩れそうでなかなか崩れない強さを発揮してはいるのだが、敢然と切り返すような勢いもない。
「満つれば則ち覆る」というのは孔子の言葉で「宥座の器」としても広く伝わっている。壺に程よく水が入っている状態であればバランスを保てるが、水がいっぱいになるとひっくり返ってしまう。これは十五夜満月の翌日に顔を出す“十六夜の月”にも通じるが、完全に坂を上り切ってしまえば、次は下り坂が待っているということ。好決算発表で売り込まれた安川電機<6506>、日本電産<6594>に共通する動きだ。
きょうはエムスリー<2413>がこのバトンを引き継ぐ形で売りのターゲットとなった。医薬従事者向け情報サイトを主力展開するが業績は成長トレンドまっしぐらといってよく、前週末23日に発表した21年3月期決算は営業利益が前の期比69%増の579億7200万円と大幅拡大し最高益更新街道をひた走る状況にある。ただ、こうなると次期の業績はどうなるのかということにマーケットの関心が集中する。増収増益だけでは飽き足らない。同社は22年3月期の業績予想を非開示としているが、仮に発表したとして株価に対しポジティブに作用させることは、とてつもなく高いハードルとなる。であれば、結論は非開示でも「売り」ということになりやすい。きょうの同社株の5.8%安の急落はAIによる機械的な売りも影響したと思われるが、もともと期待値の高い銘柄を決算発表日を跨いで保有してはいけない、という鉄のセオリーをここでも実証する形となった。
ただし、これは銘柄の業態や相場全体の地合いに左右されている部分も大きい。どこかで流れが変わる可能性も含め、主要銘柄の決算と株価動向は注視しておきたい。あすの決算発表ではアドバンテスト<6857>やファナック<6954>、アンリツ<6754>などが予定され、マーケットの注目を集めそうだ。なお、きょうのキヤノン<7751>は12月決算企業のため第1四半期の好業績がそのまま素直に評価されそうだ。
個別に中小型株でマークしてみたいのは、半導体関連で今月15日と16日に急騰劇を演じたミナトホールディングス<6862>。同社は産業用メモリーやATM用タッチパネルなどの電子機器を手掛けるが、この時の急騰劇は日本サムスン、トーメンデバイス<2737>と共同で、デバイスの供給プロジェクトを本格稼働したことを発表したことが手掛かりとなった。16日には早くも上ヒゲ大陰線を形成し、その後はあっという間に100円幅水準を切り下げたが、目先売り一巡感がある。大商いをこなしたが、回転売買主軸で上値にそれほど需給面のシコリはないと思われる。もうひとつ半導体周辺株で、ヒーハイスト<6433>のチャートが煮詰まっておりチェックしておきたい。直動ベアリングを手掛け、半導体製造装置も展開している。21年3月期は減収赤字予想だが、400円台後半の株価は値ごろ感がある。
このほか、工業炉首位の中外炉工業<1964>。ここ最近はグローバル景気の回復期待を背景に海運株に歩調を合わせ鉄鋼株も買われる流れにある。鉄鋼業界との結び付きが強い同社株は年60円配当でPBRが0.8倍台と株価指標面から割安感がある。アンモニア燃料による燃焼技術の開発でも思惑を内包する。
一方、低価格の注文住宅を販売するタマホーム<1419>にも目を配っておきたい。今年1月15日に大きく上放れて以降、ハイテク系の高成長企業顔負けの急速な上昇トレンドを形成中だ。新型コロナ感染拡大によるリモートワーク需要の拡大が戸建て住宅需要を刺激している。21年5月期は収益成長が一服する見通しながら、年間配当は前期実績から20円増配の90円(期末一括配当)を計画しており、配当利回りは3.5%を超える。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の結果発表と黒田日銀総裁の記者会見が行われる。また、東証1部にテスホールディングス<5074>が新規上場する。海外については、アジアでは1~3月の韓国GDP速報値、1~3月の中国工業利益などが発表されるほか、米国で2月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、4月の消費者信頼感指数などが予定されている。(銀)
最終更新日:2021年04月26日 17時23分