「景気過熱覚悟」の買い?/後場の投資戦略

市況
2021年5月6日 12時30分

日経平均 : 29391.19 (+578.56)

TOPIX  : 1933.55 (+35.31)

[後場の投資戦略]

連休明けの日経平均は一時上げ幅を600円以上に広げ、取引時間中としては4月19日以来の高値を付けた。日足チャートを見ると、29400円台に位置する25日移動平均線近辺まで上昇。また、東証株価指数(TOPIX)も+1.86%と日経平均(+2.01%)に負けず強い動きだ。連休前には海外勢のものとみられる株価指数先物の売りや、個人投資家のものとみられる信用買いの手仕舞いの動きが観測されていたため、連休中の欧米株の堅調ぶりから反動が出やすかったのだろう。ファーストリテなどの一部値がさ株や時価総額上位銘柄の堅調ぶりを見ると先物主導との印象を持つかもしれないが、本日ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円弱に膨らんでおり、現物株の取引はまずまず活発だ。

米国ではイエレン氏による「やや金利上昇が必要」との発言が注目されたが、その後同氏が発言を修正したうえ、連邦準備理事会(FRB)高官が金融緩和策を当面維持する姿勢を示したことで、結果的に10年物国債利回りは日本の連休前より低下した。ただ、金利低下が追い風となるはずのナスダック総合指数は5日まで4日続落。また、資源・穀物等の商品市況は一段と強含み、ブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の指標)は2.47%まで上昇している。金融緩和の長期化が見込まれるとともに、むしろ「将来のインフレ加速・金利上昇」への思惑は強まっているとみておくべきだろう。

また、足元の米国株の堅調ぶりについては、短期志向の投機筋による買い持ち高の積み上げが主因との見方がある。それだけに、短期的にはこれら投資家の持ち高調整に伴う反動安にも注意が必要だろう。

こうした株式・商品の買いが「インフレヘッジ」を通り越し、「景気過熱覚悟の投機」によるものだとしたら、やはり経済の先行きを慎重に見極める必要がありそうだ。比較的足元の消費が強い米国にしても、給付金効果が一巡するタイミングでコストプッシュ型のインフレが到来すれば景気を冷やしかねない。それに、かねて当欄では東京市場での信用買い残の積み上がりを取り上げてきたが、米国株についてもこの1年でショート(売り持ち)のレバレッジ型上場投資信託(ETF)残高が減少する一方、ロング(買い持ち)のETF残高は急増してきた。ここからの買い持ち高の積み上げ余地が大きいとは考えにくい。好調な米国株もじき「賞味期限」が意識されてくるかもしれない。

さて、改めて東京市場に目を向けると、日本製鉄や三井物産が決算(ないし業績観測報道)を手掛かりに年初来高値を付けてきているのはポジティブな印象。ただ、前述した「インフレ睨み」の面もあるかもしれない。半導体関連の東エレクやレーザーテックは期待どおりの良好な決算内容で、株式需給の面でも信用買い残に過大感がなく、売り一巡後は下げ渋ってきた。とはいえ、もともと期待が高かっただけに一段と目線を切り上げるのも容易でない感はある。大型連休を通過し、ここからは改めて決算を受けた個別対応中心の展開となりそうだ。本日は任天堂などが決算発表を予定している。(小林大純)

《AK》

提供:フィスコ

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