【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─ アフターコロナ銘柄に注目

市況
2021年5月30日 18時30分

「アフターコロナ銘柄に注目」

◆日経平均の1株利益は初の2000円乗せ、下値不安薄れる

6月中旬までの東京株式市場は、米国でのインフレ懸念を気にしつつも、しっかりとした展開が想定される。米国景気の拡大期待や日本の企業業績の堅調さを評価すれば、戻りを試す展開も想定される。

日経平均株価は2万8000円~3万円程度の値動きが想定される。国内でも新型コロナワクチンの接種が進み始めたことが前向きな材料。リスク要因は米金利の上昇や、仮想通貨ビットコイン価格の一段安などとなりそうだ。75日移動平均線(2万9240円前後)が抵抗ラインとして意識される。

スケジュール面では、海外で6月4日に5月の米雇用統計の発表が予定されている。前回の雇用統計の非農業部門雇用者数は市場予想を大きく下回っており、今回のデータに対する関心が高い。また、15日~16日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催される。政策に変更はない見込みだが、パウエルFRB議長の発言が注目される。このほか、6月1日に米5月ISM製造業景況指数、3日にISM非製造業指数が発表される。日本では11日が先物・オプションのSQ(特別清算指数算出)日となる。当該週の火曜日や水曜日にボラティリティ(変動率)が上がる傾向もあり、需給面が注目される。

22年3月期の企業業績は事前の想定以上に堅調な見通しとなっている。日経平均の1株利益は決算発表前の4月22日時点では1340円だったが、5月6日に1519円と1500円に乗せ、12日には1685円にまで拡大している。今期予想を開示したソフトバンクグループ <9984> がカウントされた13日に約1905円、決算発表が一巡した21日には2050円前後と2000円乗せとなっている。市場関係者によれば、日経平均の1株利益が2000円に乗せるのは初めて。4月22日に日経平均のPERは21倍だったが、5月21日時点では13.8倍と14倍を割り込んでいる。投資会社であるSBG分のかさ上げを割り引く必要はあるものの、下値不安は相当に薄れたといえる。なお、SBGの利益をゼロと仮定しても、市場の推計で1株利益は1750円程度であり、コロナ前の1700円前後(20年3月期のSBGは最終赤字)を上回る。

需給面では外国人の動向を注視したい。日経平均は5月11日~13日の3営業日で2070円もの下げとなったが、この週(5月第2週)に外国人投資家は現物と先物合計で1兆1149億円の売り越しだった。第3週目も大幅な売り越し。外国人売りが下げの主導であることが改めて確認された格好だ。一方、この週を含め、日本銀行による5月のETF購入はゼロだった(27日現在)。

◆マザーズに底入れ感、新興市場も出直りへ

物色はグロース(成長株)とバリュー(割安株)の循環物色が想定される。今回の決算では日本製鉄 <5401> 、日本郵船 <9101> など主力景気敏感株の収益改善が明らかになったほか、三井化学 <4183> 、三菱ケミカルホールディングス <4188> といった総合化学なども好調。また、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 、第一生命ホールディングス <8750> など大手金融に今期増配に進む企業も目立っている。いずれもPBRやPERなどが低いバリュー株で、上値の余地は大きそう。

一方、グロース株では東京エレクトロン <8035> 、信越化学工業 <4063> などの半導体関連が好調で、日本電産 <6594> 、村田製作所 <6981> などモーター、部品系も堅調。市場予想に届かないなどの理由で決算発表後にさえない株価の銘柄もあるが、見直される公算が大きい。グロース株は米国でナスダックに底入れ感が出始めていることも下支え要因となりそうだ。

注目は、これまで苦戦を強いられてきたコロナによる業績悪化銘柄だ。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の延長が決まった一方で、ワクチンの接種が加速し始めており見直される公算が高まっている。 アフターコロナをにらみ、ANAホールディングス <9202> 、JR東日本 <9020> 、イオン <8267> 、高島屋 <8233> 、資生堂 <4911> などのリバウンド本格化に期待したい。

新興市場の出直りも見込まれる。4月末にAI(人工知能)を用いた文字認識技術を手掛けるAI inside <4488> [東証M]の大口取引先からの契約不更新発表を受けた株価暴落で、5月にかけて信用取引を利用していた投資家のハイテク株への投げ売りなどで需給が悪化。また、投資マインドも冷え込んだ。ただ、関連した売りは一巡したとみられ、東証マザーズ指数には底入れ感が浮上している。

6月のIPO(株式新規公開)は22社が予定されている(27日現在)。5月はIPOがなかった。6月は、2日の建設関連サービスなどのメイホーホールディングス <7369> [東証M]が再開1号。マザーズ市場が低迷していた際に公開価格が決まり、相対的な割安感があるとの見方もあるようだ。

(2021年5月28日 記/次回は6月27日配信予定)

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■和島英樹(Hideki Wajima)

株式ジャーナリスト

日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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