明日の株式相場に向けて=「パワー半導体」と「レーザー」が輝き放つ
きょう(23日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比9円安の2万8874円とわずかながら反落した。強弱感が対立し、前日終値近辺で狭いゾーンでのもみ合いに終始した。カギを握るとみられたパウエルFRB議長の議会証言だったが、インフレは特殊事情による一過性のものというこれまでの主張を貫き、米国株市場ではとりあえず敬意を表する形で株価は終盤に強含み、ナスダック総合指数は最高値を更新した。
ただ東京市場の方は、急騰急落のあと強弱感が拮抗する展開となっている。テーパリング議論開始が早まるとの思惑で不安定な足取りとなっていたが、これがいつの間にか早期利上げ懸念に発展し、FRB高官発言もセントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言にとどまらない様相となってきた。これが、米国を起点に世界の株式市場に波紋を広げている。ただ、マーケットは既に“超のつく”金融緩和環境が続かないことくらいは相応に理解していたはずで、引き締めモードのコメントが色々なところから発せられても、少なくとも寝耳に水というようなことはなかった。ここからはまさに中央銀行と市場との対話が重視されるタームに入っていく。これまで築き上げた上昇相場がすぐに瓦解するというようなことはないが、FRBの政策スタンスの変化を注意深く観察していく必要が生じている。
そうしたなか、前日の日経平均の戻り足は売り方の立場にすれば肝を冷やす想定外の強さであったと思われる。パウエルFRB議長の議会証言はハト派色の強いものとなることを見切り発車的に織り込んだ形での切り返しであり、実際、米国株市場でも終盤にナスダック市場が上げ足を加速し過去最高値に買われた。しかし、冷静に振り返るとパウエル発言は必ずしもマーケットフレンドリーな内容とは言い切れない。インフレ率の高まりについては一過性のものであるという従来の主張を繰り返し、インフレ懸念の段階で先手を打って利上げをすることはないと明言したが、もしインフレ局面に至れば速やかにしかるべき対応をする準備があることにもしっかりと言及した。
市場では「今回の議会証言でパウエル氏は(金融政策において)フリーハンドを得たという認識であると思う。経済の状況に合わせて動くということだ。少なくともこれまでのような、コロナ禍にあってテーパリングも利上げも議論すること自体もってのほか、という時間軸ではなくなったと市場関係者に宣言したに等しい」(ネット証券マーケットアナリスト)という声が聞かれた。具体的には8月のジャクソンホールでテーパリングについて言及し、早ければ9月のFOMCでテーパリングの開始を発表する。利上げについてはまだ先だが、来年後半にはあって不思議はないというムード作りに動き出すと思われる。
個別では、前日に業種別指数で10%を超える驚異的な上昇をみせた海運もさすがに上げ一服となったが、下げ率は1%にも満たない。中期的にみて上値の伸びしろは大きそうだ。筆頭株主にアクティビストを抱える乾汽船<9308>はマドを開けて買われたが、きょうは全体地合いにも押されて後半上げ幅を縮小した。
物色テーマとして投資資金を強く誘引しているのは「パワー半導体 」だ。半導体関連よりも対象銘柄は狭まるが、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)など脱炭素社会との絡みが強く意識されていることで輝きを増している。関連銘柄ではタムラ製作所<6768>のほかにトレックス・セミコンダクター<6616>、三社電機製作所<6882>などが人気化している。芝浦メカトロニクス<6590>なども強い動きだ。これ以外に、株価低位に位置する銘柄で、パワー半導体検査装置に注力するウインテスト<6721>をマークしておきたい。また、SiC用精密切断装置を手掛けるタカトリ<6338>も見逃せない。
パワー半導体と並んでレーザー関連にも再び物色の矛先が向いている。直近はオキサイド<6521>が人気化しているが、横に波及しそうだ。QDレーザ<6613>は売り板の厚さがやや気になるものの、ジェイテックコーポレーション<3446>は小型で足が軽い。シグマ光機<7713>も25日移動平均線を足場に調整一巡からのリバウンドに期待したい。
あすのスケジュールでは6月の月例経済報告、5月の企業向けサービス価格指数、5月のスーパー全国スーパー売上高など。また、ジャスダック市場にアルマード<4932>、HCSホールディングス<4200>、マザーズ市場にセレンディップ・ホールディングス<7318>、ベイシス<4068>が新規上場する。海外では、英国中銀の政策金利発表、5月の米耐久財受注、1~3月期の米実質GDP確報値、米新規失業保険申請者件数などがある。(銀)