米国株式市場見通し:企業決算シーズン開始
高値警戒感や景気回復の頭打ち感が引き続き警戒されるが、企業の決算シーズン開始にともない好決算への期待を受けた買いに底堅く推移しそうだ。今週は、新型コロナウイルスのデルタ株などの変異株感染リスクが相場に織り込まれていないとの指摘が見られたほか、経済活動の再開を巡る好材料はすでに相場に織り込み済みとの見方から景気循環株の利益確定売りに拍車がかかった。国内の成長の勢いが頭打ちしつつあるほか、短期的には国内の大型株には増税と規制強化のリスクがあると警告し、金融アナリストが米国株全体の投資判断を引き下げる傾向も見られた。ただ、FRBが大規模な金融緩和を実施している中、資金があふれていることに変わりはなく、中長期投資において、押し目は良い買い場になりそうだ。
欧州中央銀行(ECB)も今週、金融政策戦略レビューで中期的な物価目安を引き上げ、より長期に緩和策を維持する環境を整えた。例え、FRBが緩和策の解消軌道を開始したとしても、かなりペースが緩やかなものとなる可能性が強く、株式相場の上昇基調を劇的に混乱させる危険は今のところ少ないだろう。
経済指標では、6月消費者物価指数(CPI)(13日)、6月生産者物価指数(PPI)(14日)、7月ニューヨーク連銀景況指数、フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数、6月輸入物価指数、6月鉱工業生産・設備稼働率(15日)、6月小売売上高、5月企業在庫、7月ミシガン大消費者信頼感指数、5月対米証券投資(16日)、などが予定されている。その他、FRBは14日に地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表する。この結果は、27日、28日に予定されている次回FOMCでの金融政策決定における参考材料となる。さらに、パウエルFRB議長は14日に下院金融サービス委員会、15日に上院銀行委で金融政策や経済情勢に関する半期に一度の証言を予定しており注目したい。証言を控えて、公表されたFRBの金融政策報告の中では、ワクチンの普及や緩和的な金融・財政政策支援により経済の強い成長がもたらされたとしたが、昨年の深刻なリセッションから立ち直り、大きな進展が見られるまで支援を続ける方針を再表明した。質疑応答では、緩和縮小や利上げの時期などを巡る発言に注目したい。
第2四半期決算シーズンが開始する。金融では、ゴールドマンサックス、JPモルガン(13日)、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズファーゴ、ブラックロック、PNC(14日)、モルガンスタンレー(15日)、が予定されているほか、飲料メーカーのペプシコ(13日)、金属品メーカーのアルコア、仮想通貨プラットフォームのコインベース(15日)、などが予定されている。
金融決算では、引き続き順調な結果が予想されているものの経済活動の再開が本格化した第1四半期の結果に及ぶのは困難と見られている。JPモルガンはすでに、金利の低下で通期金利収入の予想を引き下げた。最近の金利低下で、他行もこの動きに続く可能性があり、短期的な業績の障害になりそうだ。強いトレーディング収入で、埋めることができるかどうかに注目だ。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》