マスク社会に必須、ディープフェイク阻止の「静脈・虹彩認証」関連株10選 <株探トップ特集>
―本人成りすましの偽情報“顔認証”が問題化、個人差ある身体特徴をキーに有効活用-
●NECは宮古島にマスク着用顔認証システム提供
変異株を含め、引き続き世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。このウイルスについて、いつから大きく取り沙汰され始めたか、記憶しているだろうか。NHKの特設サイトによると、2020年1月に新型コロナウイルス関連の記事は289本、そこから2月には一気に1638本まで急拡大している。新型コロナウイルスに対する危機感が社会で醸成され、それに伴って「マスク社会」が到来したのが、この頃だと考えれば、既に我々はマスク社会を1年半近くも過ごしていることになる。
こうしたマスクが必須になった社会の中で、さまざまなサービスが進化し、この状況に適応している。例えば、 顔認証がそれだ。7月に入り、顔認証技術の筆頭格であるNEC <6701> が、沖縄県宮古島市の主要観光地などを走る「宮古島ループバス」の実証運行向けに、マスクを着用したままでも本人確認できる顔認証を活用した乗車システムを提供したと発表した。同システムは、NECの 生体認証「Bio-IDiom」の中核技術であり、世界ナンバーワンの認証精度を有する顔認証技術を活用している。
●生体認証は偽造が困難で非接触化が可能
こうした取り組みが進む一方で、気になる話題が報告されている。それは、「ディープフェイク(deepfake)」に絡んだものだ。NECソリューションイノベータの説明を借りれば、そもそもディープフェイクとは、機械学習アルゴリズムの一つである深層学習(ディープラーニング)を使用して、2つの画像や動画の一部を結合させ本物とは異なる動画を作成する技術のことである。よりわかりやすく言えば、現実の映像・音声・画像に偽の情報を組み込み、本物のように見せかけるというものだ。このディープフェイク技術を用いると、本人に成りすまして顔認証を突破できる恐れがあることが報告されている。
NECの技術は世界トップクラスだが、いまのところ顔認証システムのレベルは玉石混交だ。あくまで、現時点ではオンライン認証における危険性を伝える報告でしかないが、今後更にディープフェイク自体の技術が進んだり、悪用するアイデアが出てきたりすれば、問題は一段と大きく肥大化する危険性をはらんでいる。セキュリティーは、守る側と破る側の「いたちごっこ」が世の常なのだ。
そこで改めて注目される可能性が高いのが、「静脈認証」や「虹彩認証」であろう。これらは、個々人で細かな差異のある身体的特徴をキーに、本人確認を行う認証方式である「生体認証」の一種だ。偽造が非常に困難とされ、なおかつ非接触認証が可能であることから、コロナ禍の現在、そしてコロナ後の社会にも馴染みやすい特徴がある。今回は今後の活躍が期待できる「静脈認証」「虹彩認証」関連の特選10銘柄を紹介する。
●テクノアルファはマルチ生体認証、アルファCoはロッカーシステムで実績
NEC~1971年から生体認証の研究開発を開始しており、米国国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストにおいて、指紋認証・顔認証・虹彩認証の3つの生体認証技術で精度世界1位の評価を獲得。警察や空港などを中心に各国の社会インフラを支える多くのシステムに採用実績を持つ。また、指静脈認証・声認証・耳音響認証の技術を有しており、それらを組み合わせたマルチモーダル認証を提供することが可能としている。
富士通 <6702> ~富士通研究所では、顔情報で照合対象者を絞り込み、手のひら静脈で本人を特定する非接触な生体認証を融合させたマルチ生体認証技術を開発している。マスクを着用していても、着用なしと同等レベルの99%以上の高精度で本人特定が可能であり、NISTで実施された顔認証ベンダーテストにおいて、グローバルベンダーで6位、国内ベンダーで首位を獲得している。
日立製作所 <6501> ~97年より指静脈パターンを用いた認証技術の研究に取り組んでいる。今年の3月からニューノーマルに向けた非接触の指静脈認証装置とパソコンカメラ向け生体認証ソフトウェア開発キットの提供を開始。また、指静脈だけでなく顔や虹彩などさまざまな生体情報を活用するマルチモーダル化を推進し、これらをLumadaソリューション(顧客データから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、先進的なデジタル技術を活用したサービス)として提供する。
テクノアルファ <3089> [JQ]~半導体製造装置、電子材料・機器、環境機器の輸入販売を展開しており、マルチ生体認証システムでは、ポータブル生体認証入力ソリューションを手掛けているCrucialTechnologiesグループ社製品を取り扱っている。
アルファCo <3434> ~グループのアルファロッカーシステムでは、指静脈認証や、ICカードと暗証番号認証を組み合わせたロッカーを手掛けている。品物の入庫から引き渡しまでロッカー専用クラウドサーバーに接続したロッカーで運用を行い、店舗スタッフを介すことなく顧客自身で品物のピックアップが可能なロッカーも提供している。
●シーイーシーやディディエス、富士ソフトなど
シーイーシー <9692> ~ICカードをかざすだけで本人認証するシステムを提供。また、ソニーが開発した独自の指静脈認証技術を継承しスピンアウトしたモフィリア(東京都品川区)と2014年に認証セキュリティー分野の事業拡大に向けて業務提携。その他、富士通が開発した手のひら静脈認証装置を認証デバイスに採用しており、生体認証需要の増加に対応。
ディー・ディー・エス <3782> [東証M]~パソコン及びスマートデバイス向けの認証ソリューションなど、生体認証技術を活用したセキュリティー製品を手掛けている。多要素認証基盤「EVE MA」では、各種システムに対するパスワードでのユーザー認証を生体(指紋、顔、静脈)、ICカード(FeliCa、MIFARE、マイナンバーカード)、パスワードを用いた多要素認証方式に置き換え、確実な本人確認を行う。指静脈認証技術に強みを持つモフィリアのソリューションパートナー(情報セキュリティー関連)である。
富士ソフト <9749> ~14年に、モフィリアと「mofiriaの指静脈認証デバイスとソフトウェア開発キット」の販売代理店契約を締結。ソリューションパートナー(受託開発対応アプリケーション)である。
オムロン <6645> ~17年にオムロンベンチャーズを通じて、モフィリアに出資。モフィリアが保有する生体認証技術と同社が保有する「センシング&コントロール+Think」技術を生かし、新しい価値共創の実現を目指している。
パナソニック <6752> ~グループのパナソニック システムソリューションズ ジャパンは、NTTコミュニケーションズ(東京都千代田区)と顔認証を起点に各種のサービスが受けられる事業で共創を開始している。顔認証の応用として、非接触での入退出や、本人属性にあわせた照明・空調の制御などを開始している。
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