田部井美彦氏【日経平均一時500円超安、下値メドとこれからの投資戦略】 <相場観特集>
―新型コロナ変異種の感染拡大と為替の急激な円高進行を警戒―
16日の東京株式市場は、日経平均株価が一時前週末に比べ500円超安と急落した。新型コロナウイルス変異種(デルタ株)の感染拡大が警戒されるうえに、米国の景気先行き懸念から1ドル=109円30銭前後へ急激な円高が進行。これを受け、日経平均株価は2万7400円台まで下落する場面があった。東京株式市場の下値メドと今後の投資姿勢について内藤証券投資調査部の田部井美彦氏に聞いた。
●「コロナ不安は徐々に鎮静化へ、目先は半導体関連に妙味」
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
この日の日経平均株価の急落は、前週末に米10年債利回りが低下し、為替が1ドル=109円前半へドル安・円高が進行したことなどが警戒された面があると思う。
新型コロナウイルス変異種(デルタ株)の感染拡大が続き、東京都などに出ている緊急事態宣言が延長される懸念も高まり、これが経済に与える影響に加え政局の不安につながりかねないことなども株価の上値を抑える要因に働いた。特に、4-6月期決算では好調な外需を背景に製造業を中心に増額修正を発表する企業が相次いだ。それだけに、円高の進行が業績の悪化要因となることが嫌気されたのだろう。
日経平均株価は2万7500円を割り込めば、次の下値のメドは先月30日ザラ場につけた2万7272円、続いては2万7000円となる。ただ、2万7000円前後から大きく売られることは想定しにくい。
新型コロナ感染拡大も、ワクチン未接種の若年層が中心とみられるだけに、今後のワクチン接種拡大とともに徐々に状況は落ち着いていく、とみられる。この先、秋口から年末に向けてはワクチン接種拡大を背景にした消費と内需の回復を織り込んでいく展開も予想される。
ただ、消費や内需回復を株価が織り込むのはまだ先だろう。当面は、半導体関連株などに見直し余地があるとみている。半導体関連の需要は強く、来年に向けても好調な業績が見込めるだろう。ソニーグループ <6758> や荏原 <6361> のほか、半導体基板向け薬品が好調なメック <4971> などに注目したい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース