【杉村富生の短期相場観測】 ─政治改革(菅首相退陣)の動きは株価に反映される!
「政治改革(菅首相退陣)の動きは株価に反映される!」
●米国市場での小物狙いが日本市場に波及!
アメリカ市場は絶好調である。NYダウ、 S&P500指数、ナスダック指数は揃って市場最高値圏だ。好業績(調査会社ファクトセットによると、S&P500指数採用企業の決算は1-3月期の52.5%増益に続いて、4-6月期は89.3%増益)を素直に評価している。もちろん、超金融緩和状態の継続を好感する動きがあろう。
先のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演は「年内にテーパリングを開始する」と明言したものの、時期は示さなかった。おそらく、11月2~3日のFOMCにおいて、実施表明となろう。ただ、テーパリングは資産買い入れ額(現在は月間1200億ドル)の縮小だ。約9兆ドルと史上最高水準のFRBの総資産の減少ではない点には注意を要する。
FRBの総資産は当面、増え続ける。それと、テーパリングと利上げは別物だ。これはパウエルFRB議長も強調している。利上げはテーパリング終了後になる。1~2年先の話である。それまでは適温(ゴルディロックス)経済が継続する。株式投資にとってはすこぶる好環境である。
一方、アメリカ市場では年初以降、大きく売り込まれていた後払い決済システムのアファーム・ホールディングス<AFRM>、医者向けデジタルプラットフォームのドキシミティ<DOCS>、ウルグアイのITユニコーンのDローカル<DLO>などの小物が猛烈な切り返しをみせている。
パワー半導体のオン・セミコンダクター<ON>、金融インフラストラクチャーのコインベース・グローバル<COIN>なども好人気だ。これまではGAFA+Mなど巨大IT企業の「一極集中」的な展開だったが、物色の流れは明らかに広がりをみせ始めている。これは日本市場に好影響(外国人が日本株に目を向ける?)を与えるだろう。
●PER10倍以下の割安株をていねいに拾う!
なお、アメリカは近くコロナワクチンのブースター(3回目)接種を始める。すでに、ドイツ、フランス、イスラエルはブースター接種を行っている。欧米はやることが早い。アメリカの場合、全米50州のうち、22州で実効再生産数が1を下回っている。新型コロナウイルスの感染者数のピークアウトは近い。株価はこれを織り込みつつある。
日本はどうか。3月以降の株価低迷はコロナ対応の遅れにあったと思う。突き詰めれば政治の迷走だ。しかし、ここにきて横浜市長選で自民党候補が惨敗、菅首相は総裁選不出馬を表明した。総選挙を控え、菅首相は続投の意欲を失ったようだ。マーケットはこの動きを好感している。改革は株価に反映される。
内外の機関投資家は日本株のヒアリングを開始した。S&P500指数のPERが21倍台に買われているのに対し、日経平均株価のPERは13倍前後にすぎない。小物にマトを絞ると、PER10倍以下の銘柄がゴロゴロしている。確かに、割安株投資は難しいが、じっくり拾って“実りの秋”を迎える戦略はどうか。
具体的にはアルミリサイクルを手掛け、PER5.9倍の大紀アルミニウム工業所 <5702> 、トヨタグループ向け半導体(サムスン製)供給、PER11.7倍のトーメンデバイス <2737> 、日本製鉄 <5401> 、日本郵船 <9101> が大株主(1~2位)、PER5.6倍のNSユナイテッド海運 <9110> などに注目できる。
中国の アルミニウム生産は石炭火力発電、水力発電(雲南省)に頼っている。石炭火力発電は脱炭素の流れを受け、フル稼働が難しい。雲南省は意外なことに水不足だという。車載半導体はEV(電気自動車)時代を迎え、一段と重要になる。トーメンデバイスの親会社は豊田通商 <8015> である。
2021年9月3日 記
株探ニュース