【北浜流一郎のズバリ株先見!】 ─河野政権誕生を買い始めた株式市場
「河野政権誕生を買い始めた株式市場」
●異例の株価上昇、市場の願いが起爆力に
東京市場は、こんなにも強く政権交代を願っていたのか。こう言いたくなるような日々だ。日経平均株価は時々、軽く一服することはあるものの続伸、またも続伸。この原稿を書いている時点では3万0300円台に乗せている。
今年の日経平均株価の年初来高値は2月の3万0714円だが、いまはそこまであと一歩だ。いや、一歩もないほどで、近々クリアするとみてよい。ただ、正直なところまだ自民党総裁選への正式な立候補者は出揃っていない。現時点で立候補を表明しているのは岸田氏と高市氏の2人だけであり、この原稿を読者がお読みになってる頃には河野氏が加わっているだろう。こんな状況だ。
それでも、東京市場は買い一方になっている。しかも、週末の9月10日は興味ある動きになった。前夜の米国市場ではNYダウは151ドル安、ナスダックが38ポイント安だったにも関わらず、日経平均株価は上昇した。
改めて書くまでもなく、米国市場で主要指数が揃って下げた場合、日経平均株価は連動安するのが普通であり、滅多に上昇することはない。
ところが、10日は上昇したのだ。これは10日に河野氏が正式に立候補を表明することになっていたから――こう見てよい。
それだけ株式市場では河野氏に対する期待感が大きいのだろう。河野氏がまだ政策を発表したわけではないのに、市場は走り始めているのだから、その先取り意欲には驚いてしまう。
では、岸田氏に対する期待感はどうなっているのだろうか。私が市場を代表するわけではないが、岸田氏が「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」と述べたことは、総裁就任にマイナスに働いてしまうだろう。その本意は、「新自由主義的政策が貧富の差を拡大したため、それを修正したい」ということなのだが、岸田氏の考えを拡大解釈すると社会主義的な政策を指向しているように受け取られてしまう。
しかも、岸田氏にとってタイミングが悪いのは、現在、中国が新自由主義的経済の拡大が貧富の差を広げて社会を分断しつつあるとして、あらゆる分野で規制を強化しつつあることを想起させてしまうことだ。
以上のような状況から、市場はすでに河野政権誕生を買い始めている。こう見てよく、われわれもその流れに素直に乗る、これが正解となる。
●ワクチン接種の推進、行動抑制の緩和、M&Aが切り口に
具体的には、河野氏が菅政権で規制改革・ワクチン担当大臣の重責を担っていることから、まずはワクチンの3回目の接種を積極的に推進すると見てよく、モデルナ<MRNA>製ワクチンへの異物混入で株が売られた武田薬品工業 <4502> になる。同社はモデルナ製ワクチンの国内流通に責任を持つものの、ワクチンを製造したわけではないからだ。
ワクチンを3回接種するとなると、当然、注射針が大量に必要になる。となるとテルモ <4543> になる。株価はすでに上昇中ながら、2回目の接種を終えていない人も多数いるというのに、それに3回目が加わるのだから注射針の需要急増は間違いなしだ。ただし、目先株価はかなり高くなっているため、一服を待ちたい。
以上のようなワクチン接種促進の先にあるのは、もちろんコロナ禍による行動抑制策の緩和と経済の再生になる。
行動緩和策は新型コロナのワクチン接種が行き渡る11月をメドに、緊急事態宣言が出ていても会食や県をまたぐ移動などができるようになるというもの。まだ決定ではないが、投資の観点からは買い手掛かり材料になる。
この関連銘柄では、飲食店向けの需要拡大が見込める味の素 <2802> やキユーピー <2809> はまだ上値があると見てよい。食品香料 に強い高砂香料工業 <4914> も。ただ、この株も目先かなり高いので「ちょい下げ待ちで」となる。
当然、これから人材の流動化も本格化する。この点からはすでに取り上げたリクルートホールディングス <6098> になる。そして、任天堂 <7974> 、キーエンス <6861> 、村田製作所 <6981> が日経225構成銘柄に採用された一方で、採用されなかったとして失望売りを浴びたZOZO <3092> がある。
最後は、日本M&Aセンター <2127> だ。SBIホールディングス <8473> による新生銀行 <8303> へのTOB。想定外のことが起きたわけだが、今回のような敵対的な買収ではなく、平和的なそれは今後件数増となると考えられ、株価も期待が持てる。
2021年9月10日 記
株探ニュース