【杉村富生の短期相場観測】 ─大荒れの株式市場をどう乗り切るか!
「大荒れの株式市場をどう乗り切るか!」
●投資戦術の基本方針は個別物色!
世間では「女心と秋の空」という。この季節は天気が変わりやすい。さらに、台風が襲来する。株式市場もそうだ。荒れる。9月30日のNYダウは546ドル安(-1.59%)の3万3843ドルと急落した。9月20日の614ドル安の3万3970ドルに続く大幅下落である。
前回(9月20日)は中国恒大集団の経営危機が主因だったが、今回はアメリカの連邦債務問題である。NYダウはチャート的には“崩れ足”になっている。目先は調整(下値模索)が必要だろう。
ただ、インデックス(NYダウ)はETF(上場投信)の売却、恒大集団の破綻に備えた換金売りがあってさえないものの、ナスダック指数は比較的堅調だ。9月30日の下落率は0.44%にとどまっている。
それに、アメリカ市場はドルが売られているわけではない。ドル高・円安だ。さらに、個別物色機運は旺盛である。宇宙関連のヴァージン・ギャラクティック・ホールディングス<SPCE>、ロケットラボ<RKLB>などは急騰している。指数主導の大型株が値を消し、“小物”に目が向き始めたということか。
これは日本市場も同じだろう。個別物色だ。日経平均株価は“高値しぐれ”商状に陥っている。秋は落葉しぐれだ。真っ青な秋晴れと長雨が繰り返される。とはいえ、ズルズルと下げるとは思えない。企業業績は好調(企業収益はコロナショック前を上回る)だし、新政権誕生に伴う政策期待がある。加えて、総選挙が控えている。
●アメリカの連邦債務問題は解決する!
なお、アメリカの連邦債務(上限28兆4600億ドル)の引き上げ、ないしは運用停止を巡る議会のゴタゴタ劇(最悪の場合は米国債のデフォルト)は年中行事だ。最近は2011年、13年、15年にあった。いずれも民主党政権時だ。巨額の財政出動を掲げる大きな政府の民主党と小さな政府の共和党が対立する。
今年は民主党の10年間に3.5兆ドル(約390兆円)の投資に対し、共和党は「債務上限を引き上げる前に、財政支出を圧縮したらどうか」と主張している。民主党は「選挙公約だ」と譲らない。両党の言い分はもっともだが、最終的には決着するだろう。デフォルトはあり得ない。これはいつものパターン(駆け引き)である。
一方、投資戦術、物色面はどうか。やはり、引き続いて個別物色だろう。明治海運 <9115> は他の 海運株と同様に大荒れの展開となっている。日本郵船 <9101> 、商船三井 <9104> の業績が絶好調、大幅増配に進むのに対し、明治海運の2022年3月期は最終利益が35.8%減益、1株利益は23.87円にとどまる。
PERは32.0倍(日本郵船は2.8倍、商船三井は2.7倍)だ。「割高じゃないか」。確かに、表面的にはそうなる。しかし、事情はちょっと違う。海運業(売上構成比86%)は大型コンテナ船、タンカー、ばら積み船、LNG船、自動車専用船など50隻を有し、絶好調に近い。ではなぜ、足元の業績がさえないのか。
それはサフィールホテルズ、ニセコノーザンリゾート・アンヌプリ、ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ(2008年のサミット会場)、早来カントリー倶楽部、レストラン(中華、和食)などを多角的に経営していることによる。この分野はコロナ禍が直撃し、多くが赤字だ。しかし、2023年3月期には急浮上に転じるとみられる。
時価の700~800円水準は中・長期的に仕込みの好機と判断する。このほか、岸田政権の政策テーマを睨み、ENECHANGE <4169> [東証M]、ピーエス三菱 <1871> 、芝浦機械 <6104> 、ジー・スリーホールディングス <3647> [東証2]、かんなん丸 <7585> [JQ]などに注目できる。
2021年10月1日 記
株探ニュース