明日の株式相場に向けて=インフレモードでメタル系大相場も

市況
2021年10月12日 17時00分

きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比267円安の2万8230円と4日ぶり反落。前日の米国株市場が軟調だったことで、とりあえず上昇一服となる場面ではある。ただし直近、日経平均は5日移動平均線と75日移動平均線の狭間で微妙なポジションにある。中長期波動の分水嶺である75日線を上に抜けてくれば、必然的に5日線も明確に上向きに変わる。しかし、75日線で頭打ちとなって再度調整を強いられれば、下値リスクが改めて意識され二番底をつけに行く展開だ。怖いのは今月6日ザラ場につけた2万7293円を下抜けた場合で、これは二番底探しとは言わない。下値模索のやり直しであり、そうなった場合は2万7000円割れから調整期間も長引く可能性が生じる。

世界的にインフレ懸念が強く意識される局面で、ブラジルなどのようにスタグフレーションに喘ぐ国も出始めている。日本の場合、幸か不幸かデフレ環境に変化はないが、原油高騰と円安に伴うコストを企業が被るとすれば、それはEPSの減少要因として日本株買いを躊躇させる話になる。日銀がETF買いからほとんど手を引いたような状態にあって、海外投資家の動向が今後の東京市場のトレンドを占ううえで一段と重みを増している。

もっとも、弱気に傾きすぎるとチャンスを見失う。森全体を見ることはもちろん大事だが、その時の地合いに応じて、木を見て機敏に対応できるのが個人投資家の強みでもある。きょうは、半導体関連の主力株が売られ全体を押し下げたとの説明もあったが、半導体セクターを売り込んでいるイメージはなく、例えば半導体業界向け搬送装置を手掛けるローツェ<6323>は前日の業績上方修正を素直に好感され投資資金が集中、ストップ高に買われる人気となった。半導体製造装置は7~9月期でピークアウト説も根強いが、構造的な需要拡大は否定し得ず、外資系の弱気リポートなどは、ある種“買いたい弱気”と思えるようなフシもある。そこら辺を読みながら相場を眺めてみるとまた違った風景が見えてくる。

個別では、資源関連株周辺に矛先が向いている。株式市場でも原油価格の上昇が先導役となって商品市況高、特にメタル系の銘柄に投資資金が誘引され始めている。LMEアルミニウムは前日に1トン当たり3064ドルと2008年7月以来約13年ぶりの高値をつけた。これについては、電力不足というサプライチェーン問題でアルミ生産がままならないという状況が背景にある。とはいえ、インフレモードのコモディティ全般を見渡せば、一時的な特殊要因では片づけられない部分もありそうだ。アルミ二次合金のトップメーカーである大紀アルミニウム工業所<5702>の上げ足が鮮烈である。銅市況もここにきて上昇傾向を強めている。金属商社の白銅<7637>の株価はまだ出遅れ感がある。東邦チタニウム<5727>や東邦亜鉛<5707>などにも目を配っておきたい。

更に、投資マネーが勢いよく流れ込んでいるのはメタル系のリサイクル関連だ。エンビプロ・ホールディングス<5698>、イボキン<5699>、松田産業<7456>はきょうも引き続き強い動きをみせているが、遅れて動意含みとなっているアサカ理研<5724>の1500円近辺の株価は魅力がある。同社は独自技術を駆使して電子デバイスなどから貴金属回収する事業を営む。また、貴金属リサイクルではアサヒホールディングス<5857>も目が覚めたように戻り相場に転じており、今後注目度が増す可能性がある。

世界的に金利上昇が意識される時期に入ったとはいっても、前述したように国内では金利上昇を懸念するような状況にはない。不動産分野については、中国当局の総量規制や統制強化の動きを嫌気して、チャイナマネーが日本に上陸するというシナリオも一部で囁(ささや)かれる。東京都で投資用マンションの開発及び不動産に特化したファンド運営などを行うディア・ライフ<3245>は高配当利回りで継続マークしておく価値がありそうだ。また、割り切りが必要な株だが、低位株では同じく都内でマンション開発を手掛けるアスコット<3264>がある。きょうは大幅高で200円台まで買われ、その後上げ幅を縮小。結果的に上ヒゲ形成となったが、底値圏での上ヒゲは本格動意の号砲となっているケースもある。

あすのスケジュールでは、9月のマネーストック、8月の機械受注がいずれも朝方取引開始前に発表される。海外では9月の中国貿易統計、8月のユーロ圏鉱工業生産のほか、9月の米消費者物価指数(CPI)に対するマーケットの関心が高い。また、FOMC議事要旨(9月21~22日開催分)も開示される。なお、タイ市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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