佐藤正和氏【戻り相場はどこまで、ハイボラの先行きを読む】(2) <相場観特集>
―米国企業の決算発表と円安が進む為替動向にも注目―
週明け18日の東京株式市場は、日経平均株価が3日ぶりに反落した。前週末の米国株市場で主要株指数が揃って上値追い基調を強めており、足もとリスクを取る動きが期待されたが、日経平均は前週後半2営業日で900円以上の上昇をみせ一気に2万9000円台を回復したこともあって、きょうは上値の重さが意識された。当面、戻り相場は継続できるのか。また円安が進む為替市場の見通しは。株式と為替それぞれについて先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。
●「急激な円安が進行、1ドル116円意識の展開も」
佐藤正和氏(外為オンライン シニアアナリスト)
ドル円相場は1ドル=114円台をつけたが、足もとで進行しているのは「ドル高」というより「円安」だとみている。クロス円では、軒並み安となっており、円はドルだけではなく、対英ポンドや対豪ドルなどでも売られている。
原油高は、日本にとって交易条件の悪化となるほか、ソニーグループ <6758> にとって円安がマイナスとなるように、以前とは産業構造も異なっている。また、コロナ前には訪日旅行者による円買い需要が発生していたが、いまはこれも蒸発している。更に、インフレが懸念され米国などでテーパリング(量的緩和縮小)が視野に入る中、日本では出口戦略が話題にもならないなど、金融政策の差が大きいことも円安要因となっている。
こうしたなか、今後1ヵ月程度のドル円相場のレンジは1ドル=112円50~116円00銭前後を想定している。トレンドはドル高・円安だろう。115円に大きな壁があるが、ここを抜ければ一段と上昇基調を強める可能性がある。
当面は、原油相場がどこまで上昇するかに加えて、11月2~3日に予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)が注目されるだろう。FOMCで、テーパリングの開始が決定されるのは間違いないだろうが、焦点はインフレの見通しに関して「一時的」という文言が出てくるかどうかだ。一時的という言葉が削除された場合、利上げ前倒しの観測が強まり金利の上昇要因となるだろう。
クロス円では、対ユーロでは1ユーロ=135~136円前後までのユーロ高・円安が進む可能性もあると思う。対豪ドルでも急激な円安が進んだが、上値は1豪ドル=86円前後だとみている。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(さとう・まさかず)
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。通算20年以上、為替の世界に携わっている。
株探ニュース