導入加速する「セルフレジ」、コロナ禍逆手に活躍のステージへ <株探トップ特集>
―非接触、負担軽減などニーズ捉え飛躍する関連銘柄を追う―
コロナ禍をキッカケに、 セルフレジの導入が加速している。非接触での接客対応やスタッフの負担軽減などが求められるなか、大手スーパーやコンビニなどでも目に見える形で急速に設置が進んでいる。ここにきては、緊急事態宣言の解除で飲食店などにおいて人手不足が顕在化しており、セルフレジの設置を後押ししている。市場規模が急拡大するなか、「セミセルフレジ」「セルフレジ」「無人レジ」といった多様な形態で活躍領域を広げる同レジ関連株の動向を追った。
●現実買いへ一気に駆け上がる
セルフレジ関連株を巡っては、昨春の新型コロナウイルス感染拡大を契機に株式市場での存在感が急速に高まった。“コロナ前”においても、それなりに注目はされてはいたが、かといってそれほど投資家にインパクトを与えてはいなかった。いわば、新型コロナ感染拡大を契機に、理想買いから現実買いへの道程を一気に駆け上がった格好だ。
先週末の22日、全国スーパーマーケット協会が「2021年 スーパーマーケット年次統計調査」(国内にスーパーマーケットを保有する企業921社のうち回答企業278社)を公表したが、ここでもセルフレジの普及が進んでいることが明らかになった。「セルフレジ設置率は全体で23.5%となり、ここ数年増加傾向にある」とし、今後の設置意向については、全体では「新たに設置したい」割合が22.6%、「設置数を増やしたい」が13.3%となっている。
また、セルフ精算レジ(セミセルフレジ)の設置率(「設置店舗がある」企業割合)については72.2%となっており、設置率は急速に増加している。現在、大規模店舗中心型の企業で設置率が高い傾向にあるだけに、今後は中型店舗、地方圏への拡大が予想されるなか、ここからの伸びしろは非常に大きい。
●サインポストに投資家の熱視線
ここにきては、セルフレジ製品を手掛けるサインポスト <3996> に向けられる投資家の視線が熱い。同社は、2019年7月にJR東日本 <9020> グループのJR東日本スタートアップとAI無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を利用した無人決済店舗の事業化に向けて合弁会社「TOUCH TO GO(以下TTG、東京都港区)」を設立したことで株式市場での注目を一気に集めることになった。TTGの無人決済システムの導入企業・店舗が相次いだうえ、9月末にはTTGが東芝テック <6588> と資本・業務提携、更に今月に入っても13日にTTGがグローリー <6457> と資本・業務提携を発表。また14日には、KDDI <9433> からTTGが資金調達したことを発表するなど、株価の刺激材料にこと欠かない状況だ。もちろん、自社のセルフレジ製品でもニーズを捉えようと注力している。今秋には、商品バーコードの読み取りから精算まで行うことが可能で、価格もサイズもコンパクトなPOSセルフレジ「EZ レジ」(イージーレジ)の提供を開始。会社側では「既に引き合いも多く好評だ」と話す。
同社は12日、22年2月期業績予想の下方修正を発表しており、営業損益を2億3500万円の赤字から4億6000万円の赤字(前期5億9600万円の赤字)へ引き下げた。上半期の業績や進行中のプロジェクトの動向を踏まえたほか、中途採用者の増加による人件費などの増加が響くという。9月初旬には700円程度だった株価は、相次ぐ会社側からのリリースに反応して変貌を遂げているが、先週末には思惑買い主導とはいえ一時1984円まで買われ年初来高値を更新している。きょうも物色人気に強調展開となっており、セルフレジ導入が急拡大するなか、まだまだ目が離せない状況が続きそうだ。
●東芝テック、グローリーも恩恵享受
もちろんTTGと連携を強めるPOSシステム大手の東芝テック、そして貨幣処理機大手で「セルフ決済端末向けつり銭機」なども手掛けるグローリーもセルフレジ設置拡大の恩恵を享受することになりそうだ。東芝テックは9月中旬、イトーヨーカ堂(東京都千代田区)と、買い物カートとスマートフォンを活用したセルフレジシステム(IYマイレジ ピピットカート/ピピットスマホ)によるレジ業務効率化に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)施策を実施すると発表。まずは4店舗に導入し、21年度は計13店舗の導入を予定するなど新機軸での攻勢も目を引く。22年3月期は営業利益が前期比2.5倍となる210億円を計画している。一方グローリーは、8月6日に上期の営業利益を従来予想の30億円から40億円(前年同期は16億円)に上方修正している。
●アルファクスは「セルフショット」で攻勢
注文システム、配膳ロボットなど外食向けASPサービス提供するアルファクス・フード・システム <3814> [JQG]も、ここセルフレジで頭角を現している。今年に入っても4月には、「セルフショット(セミセルフレジバージョン)」を回転寿司チェーン「すし銚子丸」を運営する銚子丸 <3075> [JQ]全92店舗に納品。直近では、今月13日に極楽湯ホールディングス <2340> [JQ]子会社の極楽湯が津店のセミセルフ方式「セルフショット」に続き、青森店の食事処にフルセルフレジ仕様を導入したと発表している。顧客自身でメニュー選択から会計操作までを行うことにより、完全非接触化を促進する。現金だけでなく電子マネー・クレジットカード・スマホ決済など多彩な支払い方式にも対応しているという。株価は、今月5日に直近安値602円をつけたあと切り返しに転じ、現在は750円手前で推移している。
●スマレジ、新機能「セルフレジ機能」をリリース
スマレジ <4431> [東証M]にも注目したい。同社はクラウド型POSレジ「スマレジ」を展開するが、今夏に新機能として「セルフレジ機能」をリリース。顧客がスマレジの画面を操作し、注文、会計、レシート発行などを行う。セルフレジとして雑貨や食品などの小売店、券売機としてカフェなどの飲食店、精算機として居酒屋などの飲食店など、さまざまなシチュエーションで使用でき幅広いニーズに応えることができる。同社は9月14日に第1四半期(5-7月)単独決算が営業利益2億3200万円(前年同期比67.4%増)と大幅増益で着地。自動釣銭機の供給不安による影響を受けたものの、機器販売売り上げが堅調に推移したことに加えて、コロナ禍においても有料店舗数が増加し、サブスクリプション売上高(クラウドサービス月額利用料など)が順調に積み上がったことが寄与した。なお、22年4月期通期業績予想は、営業利益5億9400万円(前期比29.7%減)の従来見通しを据え置いている。株価は、8月27日に4395円まで買われ年初来高値をつけた後は調整しており、現在は3500円台半ばでもみ合う展開。
●ヴィンクス、USENHDにも妙味
そのほかでは、ヴィンクス <3784> にも目を配っておきたい。同社は、流通小売業向けシステム開発などを手がけるが、セルフレジ関連の一角としても投資家の関心が高い。関東を中心に展開する大手スーパーから次世代キャッシュレス・セルフPOSシステムの導入案件、スマホを利用したPOSなどのスマートPOSシステム案件を受注するなど攻勢を強めている点も見逃せない。8月4日に発表した21年12月期第2四半期の連結営業利益は前年同期比13%増の12億6800万円に伸び、通期計画の21億5000万円に対する進捗率は59%に達している。
また、USEN-NEXT HOLDINGS <9418> 子会社のUSENは、セルフレジとしても利用可能な キャッシュレス対応券売機「Uレジ Ticket&Pay(※Uレジ FOODの導入が必要)」を手がける。注文から決済まで完結でき、特にラーメン・食堂・ファストフード業態に最適なセルフオーダーシステムで利便性の高さが魅力。コロナ禍にあっても同社の業績は好調だ。14日に発表した21年8月期連結営業利益は前の期比43.4%増の156億800万円で着地。続く22年の同利益も170億円に拡大する見通しだ。9月16日に3940円まで買われ年初来高値を更新したが、その後急速に調整し今月20日には3000円大台割れとなった。ただ、ここにきてはじわり再浮上の気配も見せている。
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