【杉村富生の短期相場観測】 ─総選挙後の政局次第の相場展開となる!

市況
2021年10月31日 9時15分

●アメリカ市場は“絶好調”なのに、日本市場は…?

NY市場は“絶好調”である。NYダウS&P500指数ナスダック指数は揃って史上最高値圏だ。メルク<MRK>、キャタピラー<CAT>などの好決算が評価されている。10年物国債利回りは落ち着いているし、VIX(恐怖)指数は15~16ポイントに低下、SOX(半導体株価指数)は上昇するなど、絶妙の投資環境にある。

7-9月期の米国GDP成長率は年率換算で前期比+2.0%と予想を大きく下回ったが、テスラ<TSLA>などの好決算発表が「景気減速懸念」を打ち消した。なお、アップル<AAPL>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>は28日引け後に売られている。ちなみに、テスラの時価総額は1兆ドルを超えている。日本円では約116兆円だ。トヨタ自動車 <7203> の3.6倍になる。

なお、28日にナスダックに上場した世界3位の半導体メーカーのグローバルファウンドリーズ<GFS>は公開価格47ドルに対し、初値は同値の47ドルだった。意外に不人気のスタートだが、マーケット関係者は「利益率の低さは気になるものの、自動車向けのチップは伸びる」と指摘する。

本社はニューヨーク州、大株主はアブダビの政府系ファンド「ムバダラ・インベストメント」だ。バイデン政権は半導体分野を安全保障上、重要な産業と位置づけている。もちろん、半導体産業は巨額の投資を必要とする。インテル<INTC>、サムスン、台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の今年の投資額は計750億ドル(約8兆5500億円)の計画である。

設備増強を続けるには非上場では難しい。そのためのIPOなのだろう。一方、東京市場では好業績のレーザーテック <6920> 、東京エレクトロン <8035> 、信越化学工業 <4063> 、SCREENホールディングス <7735> 、アドバンテスト <6857> などが波乱含みだ。やはり、素直でない相場展開となっている。

●半導体、リチウムイオン電池の確保は国策!

ただ、 半導体産業の育成、強化は国策だ。TSMCはアメリカのアリゾナに新工場を建設するが、アメリカ政府は30億ドル(約4000億円)の援助を検討している。TSMCはソニーグループ <6758> と組み、1兆円を投じ熊本工場を建設する。日本政府は「投資額の半分程度を支援したい」という。

それほど、半導体工場の誘致合戦は競争が厳しい。EV(電気自動車)リチウムイオン電池 については中国依存度(約8割)を下げようと、日米欧がやっきになっている。トヨタ自動車は豊田通商 <8015> と連携し、アメリカ工場(投資額3800億円、2025年稼働)を立ち上げる。

ヨーロッパではEUの支援(7000億円の公的資金投入)を受け、一気に15~20のリチウムイオン電池工場新設を推進中だ。この動きは加速するだろう。リチウムイオン電池製造用の電極塗工システムは世界的にヒラノテクシード <6245> [東証2]、テクノスマート <6246> [東証2]、東レエンジニアリング(非上場)の独占状態である。

上場2社は大きなメリットを受けるだろう。今年のリチウムイオン電池の投資額(世界ベース)は1兆9000億円に達する、とのデータもある。なにしろ、EV時代の到来だ。そのキーパーツの供給を、中国に頼っていては危険極まりない。日米欧政府の首脳がそう考えるのは当然の成り行きだろう。

いずれにせよ、日本市場は総選挙後の政局次第だろう。もちろん、再三指摘しているように、日本株は出遅れが著しい。PER、PBRはもとより、アメリカ市場の時価総額52.5兆ドル(5985兆円)に対し、東京市場のそれは742兆円にとどまっている。中・長期的にこの修正があろう。

2021年10月29日 記

株探ニュース

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