明日の株式相場に向けて=年の瀬は中低位材料株で餅つき
きょう(22日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比44円高の2万8562円と小幅ながら続伸。前日の欧米株が高く、米国株市場ではNYダウが4日ぶりに560ドルあまりの急反発をみせたほか、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は360ポイント高でNYダウの上昇率を大きく上回った。バイデン米政権が看板政策として掲げてきた1兆7500億ドル規模の経済対策が、民主党マンチン議員の反対で頓挫したことで暗雲が漂ったが、「これは心配しなくても早晩落としどころが見えて成立に漕ぎつけるはず。反対している議員の選挙区は炭鉱業が盛んな州で、炭鉱労組がバイデン政策を支持する姿勢をみせているため、拳を下ろすよりない」(生保系エコノミスト)という。
もっとも目玉の経済対策が成立するメドが立ったとしても、これはもともと相場に織り込まれていた部分で、やはり警戒されるのはタカ派に転換したFRBの姿勢だ。米国株市場は年明け以降も神経質な展開が続くことは覚悟しなければならない。そうしたなか、きょうの東京市場は国内外にこれといった手掛かり材料がなく、海外投資家はクリスマス休暇に入ったところも多く、売買代金は約5カ月ぶりに2兆円台を割り込んだ。必然的にIPOラッシュの佳境(きょうは6社)に入ったマザーズ市場の動きに目が行くことになる。案の定、公開価格割れが続出し、公募組の悲鳴が聞こえてくるような状態となったが、皮肉なものでマザーズ指数は底入れ反転の兆しをみせている。「IPO銘柄のセカンダリーを狙っていた短期資金が、旗色悪しとみて物色の矛先をマザーズの時価総額上位の銘柄に向けた」(ネット証券アナリスト)ことが、マザーズ指数反転の原動力となったようだ。
個別株全般は株価が中低位の銘柄に人気が集まっている。好業績でも株価が4ケタ台にある銘柄はここ最近のリスクオフ相場で利益確定売りのターゲットとなってしまったケースが多くなっている。結果的に上値にシコリを残した状態で、切り返すにもやや時間がかかってしまいがちだ。相対的に評価不足あるいは調整一巡感の出ている3ケタ台の好実態株に視線が向きやすい。
例えば、EV関連の切り口で自動車部品 株の一角に光が当たるなか、いすゞ系のIJTT<7315>は狙い目。親会社であるいすゞ自動車<7202>は電動化戦略を組み直しているトヨタ自動車<7203>と資本提携していることで展開力を増している。また、今月中旬に取り上げたトヨタ系自動車部品会社の大豊工業<6470>も引き続き注目しておきたい。
一方、建築用金属材を手掛け、米国で自動車バッテリー部品を手掛ける岡部<5959>も上値余地を内包している。21年12月期は20円配当を計画するが、PBR0.5倍台の時価は評価不足ともいえ、早晩頭角を現す可能性がある。このほか、NFT関連株ではアステリア<3853>の800円近辺のもみ合いは強気対処して妙味がありそうだ。同社はブロックチェーンの草分けといってもよい企業で、NFTがテーマ化するなかにあって今後の活躍余地が大きい。テクニカル的にも13週・26週線のゴールデンクロス達成から再浮上の機をうかがう。
直近IPO銘柄は玉石混交となっているが、見ての通り苦戦しているものが多い。そのなか、今週初に注目したJDSC<4418>が荒い値動きながら上値指向の強さを示しており、引き続きマークしておきたい。東大発のベンチャー企業でAIを活用したアルゴリズムモジュールの開発とライセンス提供を行っているが、ビジネスモデルが時流に乗っている。業績も22年6月期のトップラインが前期比35%増の14億7300万円予想と高水準の伸びで過去最高更新を見込んでいる。公開価格とほぼ同値で誕生し、発射台が低かったことが、その後のセカンダリーにおける株価動向にプラスに働いている。
あすのスケジュールでは、10月の景気動向指数改定値のほか、11月の全国百貨店売上高も発表される。また、海外では米国での経済指標発表が相次ぐ。11月の米耐久財受注額、11月の米個人所得・個人支出のほか、12月の消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)、11月の米新築住宅販売件数などが開示される。なお、国内ではIPOが4社予定されており、ジャスダック市場にクルーバー<7134>、三和油化工業<4125>が、マザーズ市場にエクサウィザーズ<4259>、ハイブリッドテクノロジーズ<4260>がそれぞれ新規上場する。(銀)