明日の株式相場に向けて=正念場のSQ週に突入
週明け7日の東京株式市場は売り優勢の地合いとなり、日経平均株価が前営業日比191円安の2万7248円と反落。難しい地合いである。日経平均は2万7500円どころまではすんなり戻ったが、そこまでは自律反発の領域。そこから上が滞留出来高の多い胸突き八丁の上り坂で、案の定、日経平均は失速し押し戻される展開となった。2万7000円台前半で瀬踏みをしている状況でここを踊り場に切り返せるかどうかだが、仮に2万7000円台を再び割り込むような展開となっても全く不思議はない。
3月中旬まではFOMCが行われないこともあって、当面は中銀の金融政策に絡む思惑で短期資金が錯綜するような相場とはなりにくいのだが、それでも前週末に発表された1月の米雇用統計には市場関係者の耳目が集中した。今回、非農業部門の雇用者数は前月比マイナスとなるとの見方もあったくらいだが、実際は市場コンセンサスを大きく覆す46万7000人の増加。昨年11月と12月についても大幅な上方修正となった。これはサプライズといってよい。米長期金利は1.9%台まで上昇し2%台乗せは秒読み段階というムードだ。この日は好決算を発表し株価を急騰させたアマゾン・ドット・コム<AMZN>が立役者となってナスダック市場を上昇に導いたが、今後ハイテク株には向かい風が強まることを改めて覚悟する必要が出てきた。
今週は10日のオプションSQ算出に絡み波乱が生じてもおかしくない。ただ市場では、「1月28日から2月2日にかけての4連騰は売り方の立場とすれば肝を冷やす強烈な揺り戻しだった。短期であればそれだけ人間の相場観はAI売買に凌駕されやすい。売り方も買い方も腰が引けた状態でなかなか一方向に持ち高を傾けるのは困難」(中堅証券ストラテジスト)とする。かといって、日経平均2万7000円台の水準を中長期スタンスで強気に買い溜めて、報われるかどうかははっきりしない。なぜなら、超金融相場は今後確実に幕を引く方向にあるが、中長期上昇トレンドを維持するということは、業績相場へのスムーズな移行を前提としているからだ。端的に言えば22年3月期ではなく、23年3月期の企業業績が明るいことが条件となる。22年3月期業績の上方修正を発表して素直に買われない銘柄が多いのも、この時期特有の現象だ。今期の発射台が高くなることで、次期業績予想が相対的に伸びを欠くことを恐れて買いを入れにくいというのが、投資資金の本音である。
当欄では以前、中長期投資であればいったん資金回収してキャッシュポジションを高めることを提案したが、それは相場がこれから下げ相場に転じるという予想に基づくものではない。過剰流動性相場の終焉に際し、今度は企業業績が株価上昇の原動力となることに確信が持てるのかどうか、ということへの問いである。それなくして、足もとの軟調地合いやネガティブな論調をノイズと決めつけることはできない。波の上下動ではなく、潮の流れを読まなければならない局面に来ている。ただ無策に資金を寝かせておくのは危険である。
現在、強いセクターはどこか。例えば上昇が止まらない原油市況。WTI原油先物価格が1バレル=100ドルの壁を突破するのかどうかが当面の注目点。ちなみに比較するのも憚られるが、2008年の年央に140ドル台まで上昇した過去がある。当時は大手外資系証券などが原油200ドル説を謳っていたが、タイミング的にはそこが頂点で、その後は周知のように9月のリーマン・ショックの深い谷底が待っていた。100ドル台は大きなフシだが、11年、12年、13年、14年とその後何度も経験している。今回も、100ドル大台ラインはそれほど強力なフシとは思えず、投機資金は当然100ドル超えが通過点となることを前提に流入していると思われる。株式市場では資源関連のほか総合商社株に買いが向かいやすい。そのなか配当利回り5%超でPER5倍台の双日<2768>は相対的に出遅れている。また、長期金利の上昇を背景に三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などメガバンクが強い動きだが、ここにきて地銀株の上昇も目立つ。低位株では千葉興業銀行<8337>、筑波銀行<8338>、東邦銀行<8346>、栃木銀行<8550>などがある。
あすのスケジュールでは、12月の家計調査、12月の国際収支、1月の景気ウォッチャー調査などが発表されるほか、10年物の物価連動国債入札も予定。海外では12月の米貿易収支に注目度が高い。国内主要企業の決算発表では、大成建設<1801>、ジェイ エフ イー ホールディングス<5411>、住友金属鉱山<5713>、ソフトバンクグループ<9984>など。海外主要企業の決算では、BNPパリバ、ファイザー<PFE>などがある。(銀)
最終更新日:2022年02月07日 17時01分