藤代宏一氏【上値重い日経平均、東京市場に春の兆しは見えるか】(2) <相場観特集>
―金融引き締め警戒と業績相場への期待が錯綜するマーケット―
週明け7日の東京株式市場は、リスク回避ムードのなか日経平均株価は軟調な展開となった。前週末の米国株市場は主要株指数が高安まちまちだったとはいえ、1月の米雇用統計発表を受け、FRBによる利上げや量的引き締め策への警戒感が改めて強まっている。3月期末にかけて日経平均は戻り足を継続できるのかどうか。全体相場の見通しや物色の方向性などについて、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「3月FOMCまでボラタイルな展開か、日本株に相対的割安感」
藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)
先週末4日の米1月雇用統計が堅調な内容だったことから、3月米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%利上げを予想する見方も増えたようだ。しかし、現時点では米連邦準備制度理事会(FRB)は3月、5月、6月に0.25%ずつの利上げを実施するとみている。3回連続で利上げを行い、その後は四半期ごとに1回の利上げをし、年5回の利上げを行うと予想する。来年も複数回の利上げが予想されるが、その点を市場は夏場以降、探っていくのだろう。
市場は、年前半での3回の利上げを織り込みつつあるようにも見えるが、FOMCが近づくとやはり、金融引き締め懸念を嫌がる展開が予想される。方向感として引き締めに対する警戒は、なお消えないだろう。市場にアク抜け感が出るとすれば、3月15~16日のFOMC以降かもしれない。それまで、ナスダック市場を中心に米国株式相場はボラタイル(変動が大きい)な展開が続きそうだ。もし、米長短金利が逆転する逆イールドが発生するようなことがあれば、市場はネガティブに反応することも予想される。
ただ、東京市場にはバリュー株が増えており、日経平均株価はナスダック指数など米国株に比べて相対的に、底堅い展開も予想される。東京市場では過去2年間で上昇した銘柄が売られているが、その一方で、海運株のほかにも鉄鋼株や化学株、商社株など低PERで配当利回りなどでも割安な銘柄は少なくない。これらバリュー株が支える格好となり、底堅い展開も予想される。当面の日経平均株価は2万7000円前後を安値に下値を固める展開を見込んでいる。ただ、上値も重く、戻り局面では売りに押される場面も予想される。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(ふじしろ・こういち)
第一生命経済研究所経済調査部・主任エコノミスト。担当は金融市場全般。2005年4月、第一生命保険入社。08年、みずほ証券出向。10年4月第一生命経済研究所出向、同年7月内閣府経済財政分析担当へ2年間出向。12年7月副主任エコノミストを経て、15年4月より現職。
株探ニュース