入国制限の緩和観測も追い風、業績回復機運の「鉄道株」は株高発進へ <株探トップ特集>

特集
2022年2月14日 19時30分

―第3四半期決算は堅調に推移、黒字転換銘柄も目立ち再評価余地が膨らむ―

年初から弱含みとなっていた日本株だが、2月に入って底打ちから反転上昇の兆しがみられていたものの、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めに対する警戒感やウクライナ情勢の悪化を受け、ここにきて波乱含みの様相となってきた。テクニカル的にみれば、日経平均株価は2万7500円から2万8000円のゾーンに25日移動平均線や日足の一目均衡表の基準線などが位置しており、これらのチャートポイントが今後を占ううえで重視される。2万7000円前後で下落一服となれば、例年通り年度末にかけては配当や株主優待など権利取りの買いが流入しやすく、リバウンドがみられそうだ。とりわけ、今回の決算シーズンでは海運株や資源・市況関連など好調な業績を背景に大幅増配見通しを発表している企業も多いため、反発機運が高まる可能性もある。

3月末の権利取りの動きに合わせ、外部環境も新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」による感染拡大が落ち着き、それとともにマーケットのムード全体が好転していく可能性もある。投資家目線が新年度に移るにつれて、コロナ禍からの一段の業績回復期待が高まることも考えられる。そうなれば、新型コロナの影響を受け、業績や株価が低迷していた銘柄も投資対象として注目されそうだ。

新型コロナの影響を大きく受けたセクターの一つが 鉄道株だ。旅行控えやリモートワークの普及による出勤減少など移動自粛の影響で、21年3月期は上場するJR4社と大手私鉄の全社が最終赤字となった。これに対し、鉄道各社の22年3月期第3四半期決算発表が10日で出揃ったが、この時点で全社が回復傾向にある。経済正常化期待が高まるなか、鉄道株に目を向けてみたい。

●JR九州はコスト削減の効果発現に期待

JRの本州3社の業績は、第3四半期累計(4-12月)でみるとJR東日本 <9020> 及びJR西日本 <9021> は前年同期比で営業赤字の赤字幅を縮小し、JR東海 <9022> は営業黒字へ浮上した。ただ、JR東日本とJR西日本も第3四半期(10-12月)の3ヵ月間だけでみると、鉄道収入の回復を背景に営業黒字へ転換しており、3社ともに業績は回復している。

足もとの第4四半期(1-3月)は、やはり「オミクロン株」の影響が懸念される。人流が再び減少するなか、JR東日本は相対的に構成比の高い定期券収入の下振れが予想されるほか、東北・甲信越地方における大雪の影響も考えられる。JR西日本も近畿圏を中心に旅客収入の下振れが懸念され、これに加えて、北陸・山陰地方の大雪の影響が見込まれる。JR東海は新幹線で観光・ビジネス旅客が戻りつつあるが、ここにきて「オミクロン株」の感染拡大で出張手控えの影響が出ていると伝えられている。

注目はJR九州 <9142> だ。JR4社の中で唯一22年3月期業績予想を上方修正しており、営業損益は23億円の赤字見通しから一転し、27億円の黒字になる見込みとなった。コロナ禍以前の同社は「ゆふいんの森」など人気の観光列車を運行することで訪日観光客の需要を取り込んでいたが、 インバウンドの剥落で運輸収入は大きく落ち込んだ。しかし、本州の3社との比較で、運行ダイヤの見直しや利用者の少ない駅の無人化などコスト削減にいち早く着手しており、その効果発現が期待できる。また、4月から在来線特急列車の料金値上げが決まっており、これによる業績貢献も見込まれる。同社の運賃・料金が50%割引となる株主優待は個人投資家に人気であり、配当利回りは3.6%程度と他のJR3社との比較で魅力的であるため、株価上昇が期待できそうだ。

●相鉄HDは22年3月期業績予想を上方修正

関東の私鉄各社では、第3四半期(4-12月)累計で東武鉄道 <9001> 、相鉄ホールディングス <9003> 、東急 <9005> 、小田急電鉄 <9007> 、京王電鉄 <9008> が営業黒字となった。一方で、京浜急行電鉄 <9006> 、京成電鉄 <9009> は前年同期に比べて赤字幅を縮小したものの、前年度に続いて営業赤字での着地となった。西武ホールディングス <9024> も営業赤字が続いているが、西武建設の株式譲渡に伴う特別利益計上で22年3月期は一転最終黒字となる見通し。

京急と京成は沿線に羽田空港や成田空港を有し、都心のターミナル駅との間での空港利用者の乗車が多い。羽田、成田ともに発着航空便の運休・減便でとりわけインバウンド需要消失の影響が続いているほか、京成については東京ディズニーランド及び東京ディズニーシーの入園者数制限も重石となっており、業績回復が遅れているようだ。

注目は相鉄HDであり、22年3月期第3四半期決算の発表とあわせて、通期見通しを上方修正した。営業利益は10億円から29億円へ増額され、最終損益も14億円の赤字から収支均衡へと変更された。月次営業概況では鉄道、バス、ホテルがこのところ前年同月比で上振れとなる月が目立ってきており、回復傾向を示している。配当利回りは0.9%程度と、関東の私鉄の中では高い。また、相鉄線「羽沢横浜国大駅」と東急東横線・目黒線「日吉駅」を結ぶ直通線の開業が22年度下半期に予定されており、これを材料に同社株へ物色の矛先が向かう可能性もある。新線は中間にJR東海道新幹線・横浜線「新横浜駅」があり、利便性が高いと評価されている。

●関西では京阪HDと阪急阪神に期待

関西(西日本)の私鉄各社では、第3四半期(4-12月)累計で西日本鉄道 <9031> 、阪急阪神ホールディングス <9042> 、南海電気鉄道 <9044> 、京阪ホールディングス <9045> 、名古屋鉄道 <9048> 、近鉄グループホールディングス <9041> が営業黒字で着地した。

このなかで、京阪HDが注目できそうだ。22年3月期第3四半期決算の発表と同時に通期経常利益の見通しを上方修正した。コロナ禍の鉄道セクターでワースト・パフォーマンスとなった銘柄の一つであり、割安感は依然として強い。京都を地盤に事業展開していることから訪日観光客減少の影響を受けやすいとの見方が広がったほか、昨年5月のMSCI指数定期入れ替えで除外されたことも影響し、株価は一時5000円台から2500円前後まで半値になった。それだけに値ごろ感が生じており、経済活動の正常化に伴って、株価の戻りが十分に期待できそうだ。また、政府が新型コロナの水際対策について、3月から段階的に外国人の入国制限を緩和する方向で調整に入ったと伝えられており、この動向によってはインバウンド関連銘柄に物色の矛先が向かいそうだ。

また、阪急阪神も業績や株価動向を注視したい銘柄だ。コロナ禍の2年間で株価は3200円から3800円のレンジ内で推移しているが、コロナ禍以前は4000円台をつけており、戻りの余地は十分にある。この2年間は鉄道収入の下振れに加え、同業他社に比べてウェートの大きいレジャー産業の下振れが業績の重石となっていた。プロ野球球団の阪神タイガースでは今春から、主催試合の入場観客数を昨年までの50%以下から100%に引き上げる予定であり、その業績貢献が期待できそうだ。

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