ホルムズ危機にDC建設ラッシュ、「エネマネ」関連株の出番到来 <株探トップ特集>
―生成AI急成長で電力消費が増加中、エネルギー運用効率の最大化へスタンバイOK─
米国とイランが戦闘終結に向け合意したものの、再び視界不良の局面が続いている。中東からの原油の輸入に頼る日本にとって、中東情勢の不安定化はエネルギー危機に直結するだけに、固唾をのんで行方を見守る状況だ。こうしたなか、データ分析などによってエネルギーの利用状況を「見える化」することで、電力使用量などの効率的な運用を目指す「エネルギーマネジメント(エネマネ)」への注目が集まっている。これに加え 生成AI市場の急成長を背景として、世界的に「データセンター(DC)」の建設ラッシュが続いており、データセンターは膨大な電力消費を必要とするだけに、エネマネの重要性が強く意識されている。活躍の舞台を大きく広げる「エネマネ」関連株のいまを追った。
●競争力を大きく左右する存在に
中東有事を背景に、改めて省エネへの関心が企業や家庭で急速に高まった。ガソリン価格や電気・ガス料金などエネルギー価格の上昇はもちろん、地球温暖化対策の重要性が広く共有されるようになり、日常生活や設備投資の場面で「エネルギーをどう使うか」を見直す動きが進み、つれて「エネマネ」関連株に向けられる視線も熱を帯びてきている。
エネマネとは、電気などの使用状況を分析することで、ビルや工場そして住宅などにおいてエネルギーの管理体制を整備し、「むだ」を制御することで電力使用量の抑制やCO2の削減など省エネ支援を行う取り組みだ。そして「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」は、エネルギーの使用状況をモニタリングし、自動制御でエネルギーの運用効率を最大化するためのシステムのことを指す。
生成AIや クラウドサービスの普及によって、データセンターの電力需要はこの数年で膨大になると予想されている。需要ピークの抑制、再生可能エネルギーの有効活用、複数拠点間の負荷分散を最適化するエネマネは、データセンターの競争力を左右する機能として、重要性がいっそう高まっていくと考えられる。エネマネ関連株は、データセンター関連株の一角としても存在感を強めそうだ。
●富士電機は劇的な省エネ実現
5月27日に富士電機 <6504> [東証P]と三井情報(東京都港区)が、データセンターのエネマネ領域における機器・制御・運用を横断した包括的な協業を開始したと発表。富士電機が新たに開発し販売をスタートした「エジェクタ冷却機」などの電気・熱エネルギー技術と、三井情報の空調制御・シミュレーション技術、プライベートAI基盤を組み合わせた冷却効率最適化サービスを提供し、環境配慮型データセンターの実現を目指す。また、昨年12月にはNTT <9432> [東証P]傘下のNTTデータが、データセンターのエネマネを最適化する新技術の開発を開始すると発表するなど、急速にエネマネの事業領域が拡大している。
富士電機はエネマネ事業を積極的に推進しており、熱電利用の見える化・分かる化・最適化による省エネの実現を目指し、省エネ機器・設備の導入から、クラウド活用までのトータルエンジニアリングを提供してきた。前述の新型エジェクタ冷却機は、データセンターのサーバーを冷却する際の消費電力を最大85%削減し、劇的な省エネを実現したという。同社の27年3月期連結業績は営業利益段階で前期比4.3%増の1425億円を計画しており、6期連続の最高益更新を目指す。蓄電システム案件やデータセンター向け需要の拡大などが業績に寄与する。
●ダイヘン、独自の制御アルゴで攻勢へ
ダイヘン <6622> [東証P]は小型変圧器、アーク溶接機でトップクラスだが、エネマネ部門も国内の工場受変電設備の更新投資、再生可能エネの導入進展に伴う電力需給調整市場の拡大や蓄電池システムの需要増加を背景に業績が好調だ。27年3月期連結業績は、引き続き半導体関連などの需要拡大が見込まれ、営業利益は前期比33.1%増の250億円と連続での最高益更新を予想する。同社は、独自の制御アルゴリズム「Synergy Link(シナジーリンク)」を用い、高コストな中央監視制御装置(拠点管理サーバーなど)を使用せずに、エネルギーを最適な状態にする技術を保持している。太陽光発電システム、蓄電池システム、EV充電機器などさまざまなEMSに適用可能で、機器の追加やシステム拡張も簡単・低コストに実現できるという。株価はここ浮揚力を強めていたが、全体波乱相場の影響もあり一服場面にある。ただ、テーマ性に乗るだけに、5月12日につけた最高値の1万9790円更新からの上値追いに期待がかかる。
●年初来高値にらむアズビル
制御・自動化機器で高シェアを誇るアズビル <6845> [東証P]は、EMS分野でも技術力を発揮し成長ロードを快走している。4月には、経済産業省が行ったエネルギー管理支援サービス事業者(エネマネ事業者)公募に申請し、13年連続で採択されたと発表。エネマネ事業者は、建物にEMSを施工・設置し、同システムから得られる情報を活用するエネルギー管理支援サービスを通じて、ビル、工場、事業場の省エネやピーク電力削減推進の役割を担っている。27年3月期の連結業績予想は、IFRSを任意適用したことから前期との比較はできないものの、営業利益は497億円(前期は473億400万円と最高益更新)を計画し好調をキープする見込みだ。株価は上値指向を強め、年初来高値圏でもみ合う。
●RYODENは最高値圏舞う
三菱電機系商社のRYODEN <8084> [東証P]は、EMS分野で伴走型の支援で顧客のニーズを捉えている。今月4日には、「令和7年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業」のうち「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」及び「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」の両事業において、日本カーボンマネジメント(東京都板橋区)とのコンソーシアムでエネマネ事業者に採択されたと発表。あわせて、統合監視制御システム「REMCES」が補助金対象として登録されたことで、指定設備の更新を含め、トータルでの提案が可能となった。27年3月期の連結営業利益は、前期比14.4%増の60億円を見込み堅調に推移。株価はここ上昇一服も、上場来高値圏で頑強展開をみせている。
●切り口多彩なマクニカHD
マクニカホールディングス <3132> [東証P]は独立系半導体商社の大手で、成長分野に強みを持つ技術商社として知られている。近年は、ペロブスカイト太陽電池やフィジカルAI、自動運転といった投資家の関心が高い領域でも事業展開を進めており、株式市場での注目度が高い。切り口多彩な同社だが、エネマネ分野にも注力している。今月17日には、傘下のマクニカが、「令和7年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業におけるエネマネ事業者に採択」されたと発表。同社は、エネマネ事業者として補助金を活用する企業に、EMSを用いたエネルギー管理支援サービスを提供。データに基づく省エネ施策の実行を支援していくという。27年3月期連結営業利益は、前期比24.0%増の520億円を計画。株価は、今月23日に3520円まで買われ、同月5日につけた上場来高値に肉薄した後は上昇一服。現在は3200円近辺で推移しており、新値街道復帰への期待が膨らむ。
●大崎電は10期ぶり最高益更新へ
電力量計大手の大崎電気工業 <6644> [東証P]は、EMSを成長事業の一つとして捉えており、AI・蓄電池を活用したEMSの市場投入・拡販で攻勢をかけている。今年2月には、京セラ <6971> [東証P]ならびに台湾プラスチックグループ2社とEMSにおける開発体制構築に関する合意書を締結したと発表。台湾プラG2社と共同で、AIを活用することでEMSと蓄電池システムを一元的に制御し、電気料金と再生可能エネ利用率の最適化を図るサービス「SmaRe:C (スマレック)」を開発。京セラは、スマレックに同社製の太陽光発電を供給する。5月12日に発表した27年3月期連結営業利益は、前期比24.1%増の81億円を計画し、10期ぶりとなる最高益更新を見込む。ただ、中期経営計画で掲げる同利益90億円を下回ることが嫌気され株価は大きく下落したものの、ここにきては調整一巡感からじわり浮揚力も働いており注目は怠れない。
●ニーズ捉えるビプロジー
BIPROGY <8056> [東証P]は大日本印刷 <7912> [東証P]系の情報システム大手だが、電力の効率利用や分散電源の制御などを目的としたエネルギー管理サービスにも注力している。ビルエネマネシステム(BEMS)、マンションエネマネシステム(MEMS)、ホームエネマネシステム(HEMS)をはじめ、顧客の用途に応じたエネルギー管理をクラウドサービスで提供するなど幅広い分野でニーズを捉えている。今月1日には、電力需要予測・最適化技術の高度化に向けた蓄電池保有型アグリゲーション事業を開始したと発表。これに伴い、系統用蓄電池(蓄電所)を保有・運用する子会社を設立したことも見逃せない。27年3月期の連結営業利益は、前期比13.6%増の484億円を計画している。
●「進化」を目指すやまびこ
変わったところで、やまびこ <6250> [東証P]にも目を配っておきたい。同社は、「屋外作業機器の総合メーカー」だが、発電機メーカーとして培ってきた強固な技術を基盤に、エネルギーソリューション企業への進化を目指す。昨年12月には、太陽光発電・蓄電池・エンジン発電機を、独自開発の「K-EMS(ケムズ)」で統合した次世代電源供給システム「マルチハイブリッドシステム」が、岩手県滝沢市の指定避難施設で導入されたと発表するなど、この分野での展開にも期待がかかる。26年12月期連結営業利益は、前期比6.5%増の210億円を見込み4期連続の最高益更新を目指している。
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