窪田朋一郎氏【ウクライナ情勢で乱高下、年度末相場を占う】(2) <相場観特集>
―ロシアの軍事侵攻で思惑錯綜、マーケットは立ち直れるか―
週明け28日の東京株式市場では、日経平均株価が前週末終値を挟んで右往左往する展開となった。ウクライナ情勢を巡る思惑が錯綜するなか方向感が定まらない。前週末の米国株市場ではNYダウが800ドルを超える今年最大の上げ幅をみせたが、先行き不透明感は依然として強い。3月期末に向けての相場展望を第一線で活躍する市場関係者2人に聞いた。
●「ウクライナ問題は依然不透明」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
東京株式市場は前週末に日経平均が500円を超える上昇を示し、きょうも買い優勢に傾く場面があったが、これまで売り込まれた分の買い戻しによる自律反発であり、全般底入れと判断するのは早計と思われる。前週末の米国株市場でNYダウが800ドル以上の急騰をみせたが、これは戦争でFRBの利上げが行いづらくなったとの見方や、ウクライナとロシアの間で停戦に合意するとの思惑が買い戻しを加速させた。ただ現状を冷静にみる限り、すんなりと停戦に向かうとは考えにくい。
国際決済ネットワークのSWIFTからロシアを排除する方向で欧米や日本が合意したことが伝わっている。しかし、これは諸刃の剣であり、ロシアとの間でビジネス案件を抱える企業にとっては収益面で大きなデメリットを被る可能性がある。また、ロシア関連の債権を抱える欧州の金融機関にとっても融資が焦げ付く懸念が出ており、このウクライナ問題は、軍事侵攻したロシアに対し経済制裁を強めれば相応に西側諸国にもダメージが返ってくるため、非常に難しい部分もある。
また3月開催のFOMCで、これまでのFRBのタカ派姿勢が若干緩むであろうとの見方も株価反発の背景にあった。現時点のコンセンサスは3月利上げ決定も利上げ幅は0.5%ではなく0.25%にとどまり、5月は利上げを行わないという見方がメインシナリオになったようだ。しかし、ウクライナ問題が容易に解決しなかった場合にエネルギーや農産物の価格上昇は続き、インフレは加速する。株式市場でも逆風が強まることになる。
更に、今回のロシア制裁は全世界で足並みが揃っているわけではない。中国とインドは制裁に参加しないことを表明している。これはウクライナ問題を抱えながら、米中摩擦が一段と激化する可能性を示唆する。短期的には、ニュースヘッドラインに反応する形で上下にボラティリティの高い値動きが想定されるが、中長期スパンで考えると株価は下値リスクの方が大きいとみる。日経平均は3月に向けて突発的に2万7000円を上回る局面も想定されるが、一方、深押しがあれば2万4500円前後まで下値を試すケースも考えられる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース