3月IPOがスタート、不振卒業に向け「雪解け相場」は来るか <株探トップ特集>

特集
2022年3月1日 19時30分

―東証1・2部目立ち11社上場と少なめ、東証マザーズ市場の反発に期待―

3月IPOが始まる。1日の日経平均株価は上昇したものの、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、全体相場は軟調状態にある。IPOを含む中小型市場も昨年末の大量上場やインフレ懸念の台頭で上値の重い状態だ。本来なら、相場の不透明感が強まるなかでは、外部環境の影響が小さいIPOに注目が集まる局面だ。しかし、市場には、リスクオフ姿勢による昨年末からの不調局面が、なお続くことを予想する声は少なくない。ただ、IPO企業の多くは地政学リスクと無縁であることを評価し、徐々に「雪解け」に向かうことを期待する見方もある。

●3月はIT系少なく上場企業数も低水準に

3月IPOでは11社の登場が予定されている。その内訳は東証1部が2社、東証2部が3社、東証マザーズが6社だ。業態的には、急成長が期待されるIT系などが少なく、業績の裏付けのある堅実な銘柄が多い印象だ。このうち、みずほ証券の主幹事案件が6社と目立つ。例年、年度末の3月は年末の12月と並ぶIPOの繁忙期で20社前後に膨らむ年も少なくなかった。しかし、今年は昨年に比べ2社少なく、2014年以来、8年ぶりの低水準に落ち込む見通しだ。

●仮条件レンジ引き下げ目立つ、マザーズが底打ち反発なら追い風に

昨年末から東証マザーズ指数が下落するなか、IPOの不振が目立つことも上場企業数の減少につながっているようだ。昨年12月には32社の大量IPOがあったが、異例の上場ラッシュのなか、初値が公開価格を下回る銘柄も相次いだ。

また、今年2月は7社のIPOのうち2社の初値は公開価格を下回った。BeeX <4270> [東証M]のように株価が上昇基調を強めている銘柄もあるものの、セカンダリー(流通市場)で公開価格を下回って推移している銘柄は少なくない。「リスクオフ姿勢が強まる相場では、どうしてもハイリスク・ハイリターンのIPO銘柄は手が出しにくくなってしまう」(アナリスト)という。そんななか、3月IPOの上場予定銘柄でも、仮条件のレンジを想定発行価格から引き下げる動きが目立つ。

ただ、全体相場は依然として不透明感が強いものの、足もとでは東証マザーズ指数が底打ちから反発を探る動きにある。ウクライナ危機による地政学リスクの影響が少ない点も評価されている様子であり、中小型株が反発基調となれば、IPOが活気を取り戻す展開も期待されている。

●東証1部直接上場のビーウィズと住信SBI銀に関心

3月IPOでは東証1部に上場する2社への市場の注目度が高い。2日にはビーウィズ <9216> 、24日には住信SBIネット銀行 <7163> が登場する。

ビーウィズは、デジタル技術を活用したコンタクトセンターやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスの提供などを展開。パソナグループ <2168> が保有株を売却する。仮条件は1400~1700円と想定発行価格(1920円)からレンジを引き下げ、公開価格は1400円と下限で決まった。資金吸収額は80億円強の水準だ。

住信SBI銀は、インターネット専業銀行として初の上場を果たす。三井住友トラスト・ホールディングス <8309> 傘下の三井住友信託銀行とSBIホールディングス <8473> が大株主。想定発行価格から弾いた資金吸収額は1320億円台、時価総額は2999億円と大型IPOとなる。

直近の東証1部への直接上場企業では、昨年10月のPHCホールディングス <6523> と同12月のネットプロテクションズホールディングス <7383> の初値が公開価格割れとなり2連敗している。このなか3月上場の2社の動向が注目されている。

●レパトアは売出株数などを削減

3月3日にはイメージ・マジック <7793> [東証M]がマザーズに上場する。同社はオンデマンドプリントサービスを展開する。「業態的には目新しさはない」(アナリスト)ものの、22年4月期業績は大幅増益見通し。資金吸収額は9億円台、時価総額は30億円台と規模は大きくない。11日に東証2部へ上場するセレコーポレーション <5078> [東証2]はアパート経営の提案、設計、施工管理を行う賃貸住宅事業などを展開。やはり業態は「やや地味」(同)だが、仮条件から弾いた資金吸収額は10億円前後。17日に東証2部に上場する守谷輸送機工業 <6226> [東証2]は荷物用エレベーターなどの製造・販売を行っている。資金吸収額は40億円前後。

18日に東証マザーズに上場するRepertoire Genesis <9217> [東証M]は、免疫多様性解析を基盤とした新規診断法・治療法の開発支援を手掛ける。3月IPOでは唯一のバイオベンチャーだが、仮条件を想定発行価格から引き下げるとともに売出株数なども、当初予定から減少させ、想定される資金吸収額は10億円台に低下している。

●TORICOやメンタルHT、ギックスなど期待も

3月IPOの後半戦では、規模の小さい銘柄も少なくない。23日のTORICO <7138> [東証M]は、「漫画全巻ドットコム」の運営などマンガ事業を展開。想定発行価格からの資金吸収額は3億円前後。28日のメンタルヘルステクノロジーズ <9218> [東証M]は、メンタルヘルスソリューション事業を展開。資金吸収額は9億円前後。30日のギックス <9219> [東証M]は、データインフォームド事業を展開するIT関連企業。収益水準はまだ低いが、今後の成長が期待されている。資金吸収額は12億円前後。同じく30日にはAnyMind Group <5027> [東証M]が登場する。ブランド企業向けマーケティング支援などを手掛け、資金吸収額は100億円前後と大きい。31日は土木工事・建築工事事業を手掛けるノバックが上場する。資金吸収額は30億円前後の見込み。これら企業は、東証2部のノバックを除きマザーズに上場する。

■3月IPO銘柄一覧

コード・

上場日  上場市場   企業名             主幹事

3月2日  9216・東1  ビーウィズ           みずほ

3日  7793・東マ  イメージ・マジック       みずほ

11日  5078・東2  セレコーポレーション      みずほ

17日  6226・東2  守谷輸送機工業         SMBC日興

18日  9217・東マ  Repertoire

Genesis        みずほ

23日  7138・東マ  TORICO          SMBC日興

24日  7163・東1  住信SBIネット銀行      野村

28日  9218・東マ  メンタルヘルステクノロジーズ  みずほ

30日  9219・東マ  ギックス            野村

30日  5027・東マ  AnyMind Group   みずほ

31日  5079・東2  ノバック            東海東京

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