明日の株式相場に向けて=ヘッジFのドテン買い終了と円安加速
週明け28日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比205円安の2万7943円と10日ぶりに反落。鮮烈な戻り相場が一服し、きょうは利益確定の売りが上値を押さえる格好となった。
もっとも前週末まで日経平均株価は9営業日で3000円近い上昇を演じ、25日移動平均線はおろか、中長期波動の分水嶺である75日移動平均線も一気にブレークした。年初から一貫して下値模索の動きを続けてきた日経平均だったが、3月中旬を境に流れは一気に変わり、リバウンドの勢いは大方の市場関係者の思惑をはるかに上回ったといえる。
株式需給面では空売りの買い戻しが原動力となったが、「実需で買い向かった筋は思った以上に少ない」(中堅証券ストラテジスト)という。海外ヘッジファンドによる225先物へのショートカバーとドテン買いが日経平均を押し上げた形。個人投資家にすれば手の届かない上空で売り買いが交錯する空中戦の様相であり、日経平均の派手な値動きほどは恩恵を享受できていないようだ。ここからは、ヘッジファンドの買い戻しとドテン買いが一巡した後の相場に移行する。その過程で個別に何が残っていくかを見極める作業となる。
前出のストラテジストは「下値でうまく仕込めた個人投資家もナンピンでの参戦がほとんどで、均(なら)してみれば、損失をなんとか解消してヤレヤレ売りのレベルであったはず」(同)と指摘する。相場は時に合理から外れて「理外の理」で動くが、時間が経つと合理にサヤ寄せする。この場合の合理とは、企業や経済のファンダメンタルズを意味するが、この部分に明るさが見えないのが難点である。そうしたなか、需給先行で水準を切り上げた反動が出やすいのは、配当権利落ち後の相場ということになる。今週はその意味では重要な週で、ここで耐えが利くかどうかが、年後半の相場を占ううえでも試金石となり得る。
ウクライナ情勢は依然として不透明感が強いが、相場的にはロシアとウクライナの間ですぐに停戦に向けた動きが期待できなくても、株価への織り込みが進んでいる。厳密には織り込めるほど、まだウクライナ軍事侵攻によるデメリットは見えていないのだが、心理的な距離感が定まってきたことで相場への影響は大分緩和されている。また、新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念も、国内では既に相場の波乱要因とはなりにくくなっている。新型コロナについては、悪材料として今は中国の生産工場停止によるサプライチェーン問題にすり替わっている。
今の相場において外部環境で拠りどころとなっているのは、急速な円安の進行だ。足もと123円台後半まで円安が進行したが、これは2015年12月以来6年3カ月ぶりの水準。当時は13年から始まったアベノミクス相場が佳境入りを迎えていた時期で、強力な株高支援材料となっていたが、現在はちょっと様子が違う。ここでの円安は、資源・エネルギーなどコモディティ価格の高騰と共鳴して輸入コスト上昇を引き起こすため、つい最近まで悪玉論が幅を利かせていた。全体相場の戻りと円安のタイミングが一致したため、輸出産業に為替差益をもたらすという、従来通りの公式に当てはまった解釈に変わったが、果たしてここまで急激な円安が警戒視されないわけはない。
きょう日銀は新発10年物国債を対象に0.25%の利回りで無制限に買い取る「指値オペ」を29日に実施すると発表、これが円安を加速させる格好となった。米長期金利が急上昇するなか、国内は日銀が番人となって金利を抑え込む姿勢を前面に押し出しており、これが今後の為替市場だけではなく、株式市場にも少なからず影響を与えることになる。円安メリットの方に焦点を合わせた場合、ハイテクセクターより為替感応度の高い自動車株のほか、運賃ドル建て決済の海運株にもプラス材料。また、個別では売り上げの97%を海外で稼ぐ竹内製作所<6432>に追い風が強まる。欧米でミニショベルなどの実績が高いが、円は対ユーロでも急速な円安が進んでいる。
あすのスケジュールでは、2月の失業率・有効求人倍率、日銀金融政策決定会合の主な意見(3月17~18日開催分)などのほか40年物国債の入札も行われる。海外では2月の豪小売売上高、1月の米S&Pコアロジック・ケースシラー住宅価格指数、3月の米消費者信頼感指数など。(銀)