明日の株式相場に向けて=タカ派変貌のFRBに揺れる市場
きょう(7日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比461円安の2万6888円と続落。前日に続く大幅な下げとなり2営業日合計でほぼ900円下落したことになる。前日は欧米株がほぼ全面安となったが、きょうのアジア株も総じて安く、にわかに世界同時株安の色が濃くなった。
4月はFOMCが開催されないが、3月に行われたFOMCの残像が全体相場に大きく影響を与える形となった。その残像というのはいうまでもなく、3月15~16日に開催されたFOMCの議事要旨で、きょうの日本時間未明(午前3時)に開示された。ここでのFRBメンバーの議論はタカ派一色といってもよく、逆に言えば昨年まで筋金入りのハト派だったパウエル議長やブレイナード理事が、よくぞここまで豹変できたなというくらい見事に“金融引き締め推進の流れ”が出来上がっている。議事要旨は事前にある程度織り込まれていた面もあり、NYダウの下げは144ドル安と比較的浅い下げにとどまったが、米10年債利回りの上昇が顕著となったことで半導体関連などハイテクセクターへの風当たりがきつくなった。ナスダック総合株価指数は300ポイントを超える下落をみせた。
5月に続き6月も連続で0.5%の政策金利引き上げが行われる可能性が高まった。これについてはマーケットで織り込みが進んでいたとしても、5月から毎月950億ドルのペースで量的引き締め(QT)が行われるということについてはイメージできていなかったと思われる。生保系エコノミストによれば「QTは5000億ドルで政策金利0.25%程度の引き上げ効果に相当する」としている。そこだけで考えれば5カ月強かけて、プラスアルファとして0.25%分の利上げがプラスされる勘定なので、それほど大騒ぎすることはないような気もするが、急ピッチの政策金利引き上げと同時進行ということに驚きがある。
「FRBが慌てているという印象をわざとマーケットに与えているような、確信犯的な要素も多分に感じさせる」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。これは超ハト派を返上し、一気に超タカ派へ振り切ったキャラ変をみせたブレイナード氏の発言にも反映されていた。FRBが米国株の動向に配慮しないというよりは、米国株を下げることでインフレ抑制効果を期待するというスタンスに変わった。東京市場でもこれを受けてリスク回避ムードが広がっている。日本株は相対的優位にあったとしても、投資マインドから株価の中期的な先高期待が剥落しかねない。
そうしたなか、ゴールデンウイークを挟んで3月期決算企業の決算発表が本格化するが、マーケットの視線が集中するのは前期の実績ではなく、22年度(23年3月期)の業績予想の方である。アナリストによる22年度のリビジョンインデックスは悪化が続き、その内訳を見る限りにおいても既に強気を弱気が凌駕するような状況となっている。もちろん企業の業績悪がイコール株安につながらないことは、20年3月下旬から約1年近くにわたる上昇相場で証明されている。ただし、この年は政策マネーが掛け値なしに注ぎ込まれ、超金融緩和措置と合わせて株高を誘発した背景がある。金融相場の典型であった。今回はインフレの抑制が政府や中央銀行の目指す政策の第一義となっている。このインフレの抑制は株価とはトレードオフの関係にある。
個別銘柄も、当面は主力株の押し目をじっくり拾っておくという地合いではなさそうだ。おのずとハイボラティリティの中小型材料株に目が向きやすくなる。全体の潮の流れが沖に向かっている以上、収益変化や豊富な材料性があっても、株高持続性に疑問符がつくのは仕方のないところだが、そこはタイミングを見計らって深追いをしないことを心掛ける。
メタバース関連では急騰後にひと押し入れ800円台後半から900円のゾーンでもみ合っているフィールズ<2767>や低位株のディー・エル・イー<3686>などをマークしておきたい。また、同じく株価低位に位置するイベント関連株でeスポーツへの参入に意欲をみせているテー・オー・ダブリュー<4767>も目先の押し目買い妙味がありそうだ。
あすのスケジュールでは、2月の国際収支が朝方取引開始前に開示されるほか、午後には2月の特定サービス産業動態統計、3月の消費動向調査、3月の景気ウォッチャー調査などが発表される。海外では2月の米卸売在庫の発表が予定される。なお、国内企業の決算発表では安川電機<6506>の決算にマーケットの関心が高い。(銀)
最終更新日:2022年04月07日 17時01分