明日の株式相場に向けて=FRBの描くビジョンと戦略

市況
2022年5月18日 17時00分

きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比251円高の2万6911円と4日続伸。前日の欧州株市場は文字通りの全面高で、米国株市場でもこの流れを引き継ぎ、消費関連株やハイテク株などを中心に幅広く買いが広がった。ナスダック総合株価指数の上昇率が相対的に大きく、東京市場でもこれが投資マインドを強気に傾け、日経平均は上値追いを継続。一時は400円近い上昇で、2万7000円台に乗せる場面もあった。

注目された4月の米小売売上高は、変動幅の大きい自動車を除いたコアで前月比0.6%増となり、予測中央値の0.4%増を上回った。本来、この数値が予想を超えるということは、物価上昇が反映されているという見地に立てば好ましくない部分もあるが、現在の米国では消費が落ち込むことを警戒するムードが強まっていたため、コンセンサスを上回ったことは株式市場に素直に好感された。もっとも、「ショートスクイーズによるリバウンドは第1幕の終了が近い」(中堅証券ストラテジスト)という声もあり、週末にかけて揺り戻しがないとも限らない。以前にも触れたが、今週末20日に予定される米国のオプションSQ算出に絡みS&P500指数の4000を巡る売り方と買い方の攻防が話題となっている。前日もパウエル発言に神経質に反応して、全体指数が失速する場面もあっただけに、ちょっとしたネガティブ材料につまずく危うさを今の米株市場は孕(はら)んでいる。

まさに、右にも左にも氷山の塊があるような状態で、パウエルFRB議長は困難な舵取りを余儀なくされていることは確かだ。ある市場関係者によると「今のFRBの前には4つのストーリーが用意されている、という話が米国で話題となっている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。それは、「FRBがうまくインフレをコントロールして経済をソフトランディングさせられる可能性が10%、インフレ抑制に成功しても経済も失速させてしまう可能性が10%。そして、インフレが高止まりした状態ながら経済も失速させないという可能性が一番高くて50%。ただし、残り30%の確率でインフレ高進を止められずに、経済も失速してしまうケースに陥る」(同)というものだ。つまり、30%の確率でスタグフレーションに突入する可能性を示唆していることになる。しかし、ここで注目したいのは一番高い確率として挙げられている“FRBがインフレをある程度容認して経済のオーバーキルを回避する”というシナリオである。

例えば中国のゼロコロナ政策は世界的にも「やり過ぎである」との見方が強く、海外からはもはや習近平政権のメンツ以外の何ものでもないというレッテルすら貼られている。中国をサプライチェーンの要衝としている他国にとっては「いい迷惑」ということだ。新型コロナを甘く見てはいけないが、臆病になり過ぎて経済をフリーズさせてしまうデメリットの方がよほど大きいという暗黙の認識が世界にはある。それと同様に、インフレは難敵であるが、力任せの金融引き締めによって深いリセッションを招いてしまえば元も子もない。

超タカ派に宗旨替えしたFRBの胸の内は、今は株価下落を甘受してもインフレ抑制を優先しようというものではない。豹変後のパウエル発言が示唆するものはもっと遥かに先鋭的である。株価を下げることによる逆資産効果を、インフレ抑制の強力な手段にしようというのがFRB、そしてパウエル氏の本意である。

したがって、投資家が今考えるべきテーマは、株価反転の材料は何かではなく、FRBの意思(これは早晩ECBも追随するので世界の中央銀行の意思にも近い)として、どこまで株価が下がればいいと考えているか、に焦点を当てなければならない。おそらく、インフレを完全収束させるために経済を殺してしまうことだけは避けたいはずで、どこかで妥協点を見つけることになる。ともすれば氷山に激突してしまうかもしれないが、それでもFRBはしばらくは同じ方向に舵を切り続ける。投資家の立ち位置からは、FRBが舵を戻すタイミングを株価と時間軸の2つの視点でウォッチしていくことが重要となる。

あすのスケジュールでは、4月の貿易統計が朝方取引開始前に財務省から、3月の機械受注(4~6月期の見通し含む)が内閣府からそれぞれ発表される。海外では5月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の米中古住宅販売権数、4月の米景気先行指数のほか、南アフリカ中銀が政策金利を発表する。また、海外主要企業の決算ではアプライド・マテリアルズ<AMAT>の2~4期決算に注目が集まる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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