【村瀬智一が斬る!深層マーケット】東エレクの明確な反転確認まで、内需系にシフトか

市況
2022年6月18日 8時00分

「東エレクの明確な反転確認まで、内需系にシフトか」

●各国中銀の利上げ相次ぎ、景気後退懸念から日経平均は5月安値に接近

東京市場は足元で急速に需給状況が悪化した。日経平均株価は6月9日に2万8389円までリバウンドを演じ、3月25日につけた戻り高値2万8338円を上回ったが、翌日からは連日でマドを空けて下落。週末には2万5720円まで売られた。

5月の米消費者物価指数(CPI)については事前に相当織り込まれていたものの、結局はCPIの結果を受けてインフレ警戒が強まったほか、欧州中央銀行(ECB)が9日に開催した定例理事会で7月に量的緩和を終了すると決め、0.25%の利上げに踏み切る方針を示したことも重荷となった。さらに、16日にはスイス国立銀行(中央銀行)による予想外の利上げ発表が追い打ちをかける格好となり、17日の日経平均株価は5月12日の直近安値(2万5688円)に迫る下落となった。

各国・地域の中央銀行が相次ぎ利上げを決定するなか、注目された日銀の金融政策決定会合では、大規模緩和を継続する方針が決まった。一部で日銀が政策変更に動くとの観測が浮上していたこともあり、緩和継続を受けて日経平均株価は2万6000円を回復する場面も見られた。為替市場では1ドル=132円台から134円台半ばへと巻き戻しの動きが見られたが、日経平均株価の戻りは限定的であり、5月安値との2点底形成の確認には見極めが必要なところであろう。また、織り込みが進んでいるとはいえ、7月にECBが利上げに踏み切る見通しであり、欧米中銀の金融引き締めが世界景気を冷やすとの見方が高まりやすい状況にある。

米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げがインフレ抑制につながるとの期待や、イベント通過によるアク抜け感はわずか1日で収束した。外部環境の不透明感が高まるなかでは、物色の方向性としては内需系にシフトしやすいだろう。今期業績の上方修正が確実視されている東京エレクトロン <8035> [東証P]は3月8日以来となる年初来安値を更新し、昨年10月下旬以来およそ7カ月半ぶりに5万円の大台を割り込んだ。この辺りの銘柄が明確な底打ちから反転を見せてくるまでは、ハイテク株は物色の対象から避けられそうだ。

●今後活躍が期待される「注目5銘柄」

◆新日本科学 <2395> [東証P]

前臨床試験受託で国内首位。6月1日には医薬品の非臨床試験受託を展開するイナリサーチ <2176> [東証S]に対し、完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表。海外企業との競争が激化するなか、買収によってCRO(医薬品開発業務受託)事業の更なる強化を図る。株価は5月9日につけた1200円を直近安値にリバウンド基調を強めており、6月15日には2106円まで買われて年初来高値を更新。短期的には過熱感が警戒されるものの、2013年7月以来となる2000円大台を回復し、13年4月の戻り高値水準である2540円をターゲットとしたトレンド形成が期待される。

◆フルヤ金属 <7826> [東証S]

薄膜部門のHD向けルテニウムターゲット材や半導体製造装置向け温度センサー、リサイクルや化学プラント向け触媒、有機EL向け化合物はいずれも好調に推移している。5月11日に業績予想を上方修正したがコンセンサスに届かず、翌12日にマドを空けて急落し7570円まで売られた。しかし、ここから2月安値の7800円と二点底を形成する格好で反発に転じた。目先は75日移動平均線突破でいったんは達成感も意識されるが、25日線水準からの切り返しに期待したい。また、長期的には切り上がる24カ月線を支持線とした上昇トレンドを形成するなか、年初以降の調整で24カ月線レベルまで下げており、中長期でもリバウンド狙いのスタンス。

◆コナミホールディングス <9766> [東証P]

家庭・携帯用 ゲームが主力。5月半ばに、サウジアラビアの政府系ファンド(SWF)が任天堂 <7974> [東証P]の株式を5%超取得したと伝わり、ゲーム関連株への関心が高まる場面が見られた。5月下旬以降は9000円近辺での推移が続き、6月7日には9040円まで上昇。ただし、9000円水準での上値の重さが嫌気される格好から足元で軟化し、支持線として意識される75日線水準まで調整してきた。 メタバースeスポーツNFTなどデジタルコンテンツ市場の成長期待は根強く、押し目狙いのスタンスで注目したい。

◆NTT<9432>[東証P]

国内通信事業最大手。持ち株会社制で地域電話独占。6月16日付の日本経済新聞が「NTTドコモが仮想空間『メタバース』事業にかじを切る。3次元(3D)のデジタル空間内で法人顧客が設計や開発などができる産業用サービスを数年内に始める」と報じている。報道によると、NTTが開発する次世代通信基盤「IOWN」を活用。10月までに新会社を立ち上げ、ドコモのエンジニアなどを集め150人規模で開発を加速するという。株価は5月27日につけた4055円を高値に調整が続くが、支持線として意識される75日線に接近してきており、押し目狙いのスタンスで。

◆コマツ <6301> [東証P]

6月15日に鉱山採掘用の通信機器を扱うオーストラリアのマインサイトテクノロジーズ社を買収すると発表。買収金額は非公表で、23年3月期業績への影響は軽微としている。光ファイバーを使ったマインサイトの通信機器を用いると、地上から坑内と高速で通信が行えるほか位置情報の検出なども可能とされており、自動化・遠隔操作化を進める同社の戦略の加速に資することが期待される。株価は6月9日につけた3570円をピークに足元調整を見せているが、25日線と75日線とのレンジ水準では押し目を狙いたい。

2022年6月17日 記

株探ニュース

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